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僕とあたしの海辺の事件慕_01

プロローグ

夏の日の午後

▼▽――△▲

 開いた窓から風が吹き込むとブルーのカーテンが扇風機の風に揺れ、季節柄風鈴がリーンと澄んだ音を出す。
 けれど、部屋の主はだれた姿勢で机に突っ伏していた。

 ――暑い……、すごく暑い。なんでクーラーが無いのよ、この部屋は……。

 寝癖にしては整った外ハネの髪を掻き揚げ、香川澪は唸る。
 三つ上の従兄弟からもらった黒のキャミソールはフリルが少女趣味で好みではない。けれど通気性に優れており夏の日の心強い味方。けれど、七月の終りにして未だ今年最高気温を更新する勢いの昨今、風流だけで涼めるはずも無く、今日二つ目のカキ氷を食べるべきか悩んでしまう。

 こんな日は図書館かプールにでも行き、涼みたいところ。
 一人で行くのが切ないのなら、ちょっぴり生意気なアイツを誘えばいい。

 小柄で女の子のような頼りないアイツ。
 自分を守ってくれたアイツ。
 初めてを捧げてしまったアイツ。

 ――会えるはずないじゃない……。

 あの日のあともアイツは変わらなかった。いつものようにメールを送ってきては電話口では他愛のない話をするばかり。
 きっと友達以上のほぼ恋人のステージに上がったはずなのに、アイツは澪を意識する素振りをみせず、どこかクールでそれが癪だった。

 調子に乗って初めてを捧げてしまったことに後悔は無い……が、

 初めてを捧げた相手と結ばれたい。

 そんな幼い恋愛観を捨てきれずにいる自分と、それを体現してしまう自分が恥ずかしかった。

 ――なんで真琴ってばあたしのこと……。あたしはこんなに……、んーん、アイツの方があたしを想ってるもん。そうじゃなかったら悔しいし……。

 ピンクのベッドカバーに仰向けに倒れ、天井を見上げる。白い壁にはアイドルのポスター一枚無く、ヌイグルミもストラップ用のが二つある程度。
 十七の女子の部屋にしては簡素な洋装だが、これでも進歩したほう。

 ――真琴……。

 枕で頭を隠し、暗闇に身体を重ねた相手を思い出す。
 ひ弱で色白、パッチリおめめと程よい睫毛。鼻は高く整っているが、キスのときに邪魔だから好きではない。触れるとその柔らかさに嫉妬したくなる真っ赤な唇。アレに騙され、どれほど恥ずかしい台詞、態度を見せたものか……。

「ああアーーン、恥ずかしいよー! 死にたいよー! 誰か殺してよー!」

 快楽の中、真琴は自分のものであり、自分は真琴のものであると断言したことが突然フラッシュバックし、羞恥のなか転げまわる澪。
 しかし、鮮明に思い出されてしまった真琴は優しく微笑み、その手を彼女に伸ばしてくる……。

 ――もう、真琴のエッチ……。

 彼の右手が澪の肩を抱き寄せ、腕を撫で、胸元を嗜め、おなかをさする。

 ――うふふ、くすぐったいよ……。

 おへそ周りをさすられると腰が自然と退けてしまい、身体で「く」の字を成す。

 ――真琴ってばスケベだよ。あたしといるといっつもはあはあ言ってさ、発情期のサルみたい。

 下腹部をさらに滑り、水玉模様のショーツに忍び込む。

 ――ばかあ、どうして触りたがるの? そこオシッコするところだよ?

 包皮に守られた肉芽がすすっと擦られる事数回。

「ん、んくぅ、や、だめぇ……」

 肥大するクリトリスは充血し、包皮から顔を出そうと必死になる。

「あんあんあんっ! やっ、はぁ! だ、だめ、声、でちゃうううう!」

 腰が浮き、股間を天井に捧げるように突き上げる仕草はブリッジの出来損ない。当人は必死に高見を目指すが、存在しないアイツではその頂も低い。

「はぁはぁ……ん、んぅ」

 ショーツから片足を抜き、女になったばかりの花弁を開く。
 クチュリといやらしい水音に「むぅ」と眉を顰め、枕元にあるウェットティッシュで指先を拭く。

 そして……、

「真琴がいけないんだからね、アタシとエッチしちゃったから……」

 既知の快楽にたどり着こうと、指をアイツに見立て探索させる。まずは秘境の入り口、ヴァギナから……。

 ブー、ブー、ブー……。

 突然の振動音に探索どころか現実へ戻る澪。机の上で充電器に繋がっている携帯がきらびやかに着信を知らせてくれる。

 ――もう、誰よ……。

 携帯を取るとメールが届いていた。件名は「ただいま」。相手は真澄梓。
 澪が真琴と会いづらい理由の一つだった。

***

「おそーい、アタシを待たせるな!」

 通りの向こう側を急ぐ幼馴染を見つけた澪は両手を挙げて「怒っているんだぞ」とアピールする。
 待ち合わせの時刻は一時二十分。時計もやはり二十分。しかし、これでは男女のデートとして五分以上のマナー違反。

「ゴメン、澪」

 とはいえ、彼が電話を受けたのはつい五分前。マナーを守るのはどだい無理な話なのだ。

「もう、待たせたんだからジュースおごりね?」
「わかったよ」

 真琴は愚痴一つなく近くの自販機に買いに走ると、レモンスカッシュ片手に戻ってくる。
 結露した水滴がいかにも涼しげなそれを奪うと、澪は礼も言わずにふたを開ける。

「……ん、んぐんぐんぐ……はぁ……!」

 甘さと酸っぱさ、炭酸の喉越しをびしびしと感じながら一息つく澪。目の前の健気な彼氏未満はニコニコしながら何かを待っている。その様子はどこか主人の合図を待つ犬のよう。

「あれ? アンタの分は?」
「僕のもソレ」

 にっこり微笑む真琴だが、最近精悍さというかたくましさがあり、中性的な魅力が薄れていた。

「ケチね、そんなんじゃ女の子にきらわれちゃうわよ?」
「澪に嫌われなければいいもん」

 最近目立ちはじめた喉仏がぐんぐんと動く。

「ご馳走さま」

 それは男として当然の成長なのだが、一方で思い出が上書きされていくことと、自分のモノという意識が乏しくなり、寂しくもあった。

「アンタが買ってきたんじゃない」
「だって澪と間接キスだもん。だからご馳走様」
「ばーか」

 こんな関節キス程度で見つめあうことから逃げる自分が嫌だった。

続き

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