澪が案内されたのは梓の部屋。
普通の子供部屋と比べれば確かに広いが大体六畳程度で、やや大きめのベッドとタンス、収納がある分だけ狭く感じる。特に何に使うのかわからない幼子大の大きさのクマのヌイグルミが部屋の中央に鎮座しているせいで妙な気持ちになる。
それでもレースのカーテンには花柄が散りばめられていたり、空調設備が完備だったりと羨ましい面が多い。
「えっと、あたしに用事ってなに?」
「なにその服。色っぽいつもりかしら?」
「へ?」
「肌を露出させて真琴君を誘惑するの? 無理無理、澪のつるぺた体型じゃ着られる服が可哀想って感じよ?」
一瞬梓が何を言っているのかわからなかったが、理解が追いつくと同時にフレーズも自然と選択できる。
「なによ、これでもAからCになったんだからね? アンタと違って成長してます!」
膨らみの目立ち始めた胸を強調する澪に、一枚の写真が突きつけられる。
そこに写っていたのはサラサラの黒髪の女子。美人の部類に入るがお世辞にもスタイルが良いといえない。
「これがどうしたのよ?」
「姉さんの写真」
「だから、どうしたのよ?」
「あたしと同い年のころよ?」
勝ち誇ったように言う梓にようやく合点が行く。つまり彼女は自分もあと三年もしないうちにああなるといいたいのだろう。
もしかしたら彼女はその写真を反論のために所持しているのかもしれない。
「なによ、椿さんは梓みたいにきつい目してないもん。二人は個性的な姉妹だと思うわ~」
「くー、言ってくれるわね!」
「そっちこそ!」
「もう……澪は澪なんだから……」
「梓こそ……」
二人とも怒っていない。ただ少し笑っていただけだった。
◆◇――◇◆
「でね、私のおじいさんがペンション経営してるんだけど、そこを処分するとか言い出してさ」
真琴は運ばれてきたアイスティーを飲みながら「へー」と頷く。
「別になくてもいんだけど、でもそこを子供達に相続させるーって言い出してさ、ウチの父さん公務員でそういうの向いてないのよ」
理恵は格好良い女性。スラリと長い足と締まりの良いお尻、手に余る程度で媚びた風のない胸からはキャリアウーマンというイメージがある。
ただ、性格はどちらかというと奔放で、好奇心が強く自ら危険に赴くタイプ。もっともそのおかげで助けられたこともあり、貴重な体験をさせてくれたのだ。
「楓を誘いにきたんだけど、アイツほら、……シスコンだし……」
あえてシスコンを小声にするところみると、楓のことはまだ梓には秘密なのかもしれない。心労になりかねない真実を無理に教えたところで、メリットは何もないのだし。
「楓さんもいたんですか」
「ええ、椿さんのことが心配らしくって、暇さえあれば毎日でも顔だすんじゃない? 半分は繋がってるわけだし、それもわかるけどね……」
頬杖をついて寂しそうに「はぁ」とため息をつく。
「そういうところがアイツのいいとこなんだけど、やっぱり嫉妬しちゃうわ」
「意外です」
「そう? まあ君は楓のこと知らないしね。アイツは正義感が強いっていうかさ、どっちかって言うと同情しすぎなのかな?」
「いえ、理恵さんが嫉妬するなんて、そういう感じがしなかったから」
「あらあら、言うわね。んでも、やっぱり彼氏っていうの? そういうのが妹とはいえ他の女に御執心だったら当然だわ。君も澪ちゃんのことほっといたりしたら大変よ?」
「あ、まぁ、そうですか……」
――澪と僕は大丈夫。っていうか、結ばれたし、絶対に……!
続き
「えっと、あたしに用事ってなに?」
「なにその服。色っぽいつもりかしら?」
「へ?」
「肌を露出させて真琴君を誘惑するの? 無理無理、澪のつるぺた体型じゃ着られる服が可哀想って感じよ?」
一瞬梓が何を言っているのかわからなかったが、理解が追いつくと同時にフレーズも自然と選択できる。
「なによ、これでもAからCになったんだからね? アンタと違って成長してます!」
膨らみの目立ち始めた胸を強調する澪に、一枚の写真が突きつけられる。
そこに写っていたのはサラサラの黒髪の女子。美人の部類に入るがお世辞にもスタイルが良いといえない。
「これがどうしたのよ?」
「姉さんの写真」
「だから、どうしたのよ?」
「あたしと同い年のころよ?」
勝ち誇ったように言う梓にようやく合点が行く。つまり彼女は自分もあと三年もしないうちにああなるといいたいのだろう。
もしかしたら彼女はその写真を反論のために所持しているのかもしれない。
「なによ、椿さんは梓みたいにきつい目してないもん。二人は個性的な姉妹だと思うわ~」
「くー、言ってくれるわね!」
「そっちこそ!」
「もう……澪は澪なんだから……」
「梓こそ……」
二人とも怒っていない。ただ少し笑っていただけだった。
◆◇――◇◆
「でね、私のおじいさんがペンション経営してるんだけど、そこを処分するとか言い出してさ」
真琴は運ばれてきたアイスティーを飲みながら「へー」と頷く。
「別になくてもいんだけど、でもそこを子供達に相続させるーって言い出してさ、ウチの父さん公務員でそういうの向いてないのよ」
理恵は格好良い女性。スラリと長い足と締まりの良いお尻、手に余る程度で媚びた風のない胸からはキャリアウーマンというイメージがある。
ただ、性格はどちらかというと奔放で、好奇心が強く自ら危険に赴くタイプ。もっともそのおかげで助けられたこともあり、貴重な体験をさせてくれたのだ。
「楓を誘いにきたんだけど、アイツほら、……シスコンだし……」
あえてシスコンを小声にするところみると、楓のことはまだ梓には秘密なのかもしれない。心労になりかねない真実を無理に教えたところで、メリットは何もないのだし。
「楓さんもいたんですか」
「ええ、椿さんのことが心配らしくって、暇さえあれば毎日でも顔だすんじゃない? 半分は繋がってるわけだし、それもわかるけどね……」
頬杖をついて寂しそうに「はぁ」とため息をつく。
「そういうところがアイツのいいとこなんだけど、やっぱり嫉妬しちゃうわ」
「意外です」
「そう? まあ君は楓のこと知らないしね。アイツは正義感が強いっていうかさ、どっちかって言うと同情しすぎなのかな?」
「いえ、理恵さんが嫉妬するなんて、そういう感じがしなかったから」
「あらあら、言うわね。んでも、やっぱり彼氏っていうの? そういうのが妹とはいえ他の女に御執心だったら当然だわ。君も澪ちゃんのことほっといたりしたら大変よ?」
「あ、まぁ、そうですか……」
――澪と僕は大丈夫。っていうか、結ばれたし、絶対に……!
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