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僕とあたしの海辺の事件慕_04

イーブン

▼▽――△▲

「私、真琴君のこと好き」

 ほっとしたのも束の間、梓は突然真面目な顔になると、澪をまっすぐに見つめて宣言する。
 白い頬が紅潮しだし、舌唇をきゅっと噛む仕草がいじらしい。どことなくイタズラを告白する幼子の印象を受けたせいか、澪はしばし返す言葉が見つからなかった。
「ん、うん。そう」

 頷くだけの澪は、どう対応してよいのか頭の中がこんがらかってしまう。彼女が真琴を好きなことは既知であった。けれど、今更確認するほどのことでもなく、電話で事足りること。

「真琴に愛してもらったし」
「……うん」

 その事実も然り。

「気付いてた?」
「なんとなく、そうかなって……だって真琴、上手だ……」

 真琴は何も言わなかったけれど、肌を重ねた感覚でわかる。彼はどこかリラックスしており、対照的に自分はガチガチだった。

「なんだ、澪も……ふーん」
「それで? そのこと聞きたかったの?」

 教室の隅、男子の様子を伺いながら秘密の会話。性体験の告白は一度味わってみたい蜜の味。
 恥ずかしさと自信の両面が刺激され、鼻の息があらくなるのを感じる。とはいえ、互いの相手は例の童顔年下男子。しかも好意まで重ねあわせているだけに楽しさだけでもなかった。

「んーん、あのね、私、まだ真琴君のこと諦めてないの」
「そう。それで?」
「いい? きっとアンタから真琴君を奪うんだから」

 ――奪うって……、あ、でもあたし、まだ言われてないかも……。真琴ってば肝心なこと忘れてるよね……。馬鹿なんだからさ……。

「絶対に澪から、んーん、真琴君が振り向いてくれるならなんだってする。きっとね」

 恋するオトメは天井に向って手を握り締め、悲壮なる決意を固めている。対する澪はというと、オデコに手をあててわざとらしく「はー」とため息をつき……、

「誤解しないでほしいわね、梓ちゃん」
「な、なによ急に……」

 妄想のスポットライトの焦点がずれると同時に梓も現実に戻る。

「あたしもまっだ真琴と付き合ってるわけじゃないわ。アイツ、あたしに告ってないし。だから、あたしと梓はライバルね。イーブンってところ?」
「ふーん、そう……なら、全力で真琴君を振り向かせてみせるんだから!」
「でもま、勝負が見えてるけどね。御愁傷様、梓お嬢様」
「なによ、絶対逆転するんだから。せいぜいそのオッパイみたいに薄い根拠の上で胡坐でもかいてれば?」
「なんですって! 人が気にしてること~」

 キッと目を吊り上げる二人だが、勝負の行方は真琴のみが知ることとなるわけで……。

◆◇――◇◆

「というわけで暇なら一緒にペンションに来ない? なんていうの? 海に一人で行くとかイタイしさ、君でも一応男の子だし、格好はつくかなって思うんだけど」
「え、ううぇ? 僕? ペンション? なんで?」

 どこかに理屈をおいてきたのか理恵は単刀直入に誘ってくる。

「返事ははいでしょ? 他は必要ないの」

 煮え切らない真琴の態度に彼女は目付きを険しくしてにらみつける。その脅しに負けてしまった結果が甘く後ろめたい思い出であり、今またそれを繰り返そうとしているのが情けない。

「いきません。僕は澪と一緒に……」

 何処かへ行きたいのが本音だが、何故かここ最近澪は冷たく、誘いにも応じてくれない。

「一緒に? なにか予定があるの?」

 それを見透かされているのか、勝ち誇った様子で詰め寄る理恵。

「えっと、これから……考えます」
「楽しいと思うけどな。そうだ、澪ちゃんも一緒に来ればいいじゃない。もともと家族三人で行くつもりだったし、数はあってるわ」
「澪も一緒なら……あ、でも、その……」

 一瞬明るくなりかけた顔が棚にあった家族の写真を見て暗くなる。それに気付いた理恵も、少し声のトーンを落として柄にもなく慰めの言葉を探し出す。

「君がそういうのしづらいっていうの分かるよ? っていうか、今誘うのもちょっと頭わいてるかなって自分で思うし。でも、介護とかそういうの? する側まで潰れたら大変だし、その遠慮がかえって重荷になるコトもあると思うの」
「はい」
「もちろんこれは遊びたい側の憶測だよ。相手がどう思うかとかは人によって違うしね」
「ですよね。でも、やっぱりそういうの」
「ふう、なんで私の周りの子ってこういう考えすぎな子が多いのかな?」

 誘うことを諦めたのか、理恵は頭の後ろで手を組んでそのままソファよりかかる。悔しそうというよりは仕方なしという感じがあり、腐っている風ではなかった。

「真琴、帰るわよ。あら理恵さん、お久しぶりです」
「あら澪ちゃん。ごきげんよう。あそうだ、澪ちゃんはさ、泊まりで海に行きたくない? ウチのじいさんのペンションでさ、ちょっと部屋が余っててね……」

 それでもなお食い下がろうとする理恵にバイタリティを感じてしまう。
 けれど後には梓の姿もあり、喪に服しかねない雰囲気がある。

「そうなんですか? でもあたしは……」
「ふーん、楽しそうね。二人とも行ってきたら? 私は姉さんのこと一人にしておきたくないから行けないけど、その代わりにお土産お願いね?」
「え、いいの?」

 意外な許しに真琴は驚きの声を上げる。もっとも梓に断りを入れる必要もないのだが、一方でネックだった気兼ねが取り除かれるのを感じてしまう。

「梓……」
「いい? これはハンディよ。まともにやったら澪に勝目なんてないもの」
「もう、梓ったら……でも、遠慮はしないわ。あとでハンカチ噛んでキーキー悔しがる梓お嬢様を見たいしね」
「ふふん、上流階級の私はそんなはしたないことしませんわ」
「絶対泣かしてやるもん」
「お取り込みのところ悪いけど、澪ちゃんは来てくれるのね? よかったわね、真琴君。彼女さんと海辺でデート……」

 はっとする理恵は慌てて口を塞ぐが、取り消すには至らない。

「やめてくださいよ。あたしはこいつと付き合ってなんかいませんから!」

 けれど取り消す言葉は澪の口から……。

「澪!?」

 一方真琴は複雑怪奇な表情で口をあんぐりさせ、しばらく状況を飲み込めない。

「あら、私はてっきりみおちゃんと真琴君が付き合ってたのかと思ったけど、違うのね」
「はい。あくまでもあたし達はまだ幼馴染です。ただの」
「だって、真琴君。君がぼやぼやしてたからじゃない?」
「そうなの? そうだったんだ……」

 理恵のたのしそうな声にも、真琴は反論する気力がなかった……。

続き

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