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僕とあたしの海辺の事件慕_13

調査開始

◆◇――◇◆

 真琴は一人、西の灯台を目指して歩いていた。
 今頃澪は頭痛の治まった理恵とともに海辺ではしゃいでいるのだろう。彼も一緒に行けば良いのに、何故か絵のことが気になってしまう。
 ――灯台を調べれば何かわかるのかな? 絵のモチーフにされている灯台を調べれば……。

 しかし、描かれたのは数十年も前のこと。何かしら手がかりがあったとしても、今に残っているかは不明。東の灯台と同じく、収穫は少ないのかもしれない。
 海を見れば楽しそうな家族連れに若者達。昼の灯台に向う人など居らず、急勾配なさか道からは遊泳禁止の浮と黄色のロープが見えるぐらい。

 ――あーあ、何してるんだろ、僕。

 完全なる部外者な真琴はたとえ謎を解いたところでメリットは無い。もし理恵がペンションを経営することとなったとしても、押しの強い彼女のことだから休みの度に手伝いに来い、遊びに来いと言うかもしれない。その時はきっとこれまた弱腰な長身の青年がこき使われているわけで……。

 ――でも……。

 引っかかるのは久弥の言った「彼女の~」という部分。

 ――もしかしたら隠されているものってラブレターとかじゃないかな?

 真琴は今回のもの探しに何かを重ね見ていたりもしていたのだった……。

***

 東の灯台は老朽化が激しく、補修もされていない。所々ペンキが剥がれ、手すりも朽ち果てた切断面に赤錆が目立つ。

「入っていいのかな?」

 立ち入り禁止の看板は無いが、ロープが張られていることから予想は出来る。けれど人の出入りはあるらしく、入り口付近には足跡がたくさんあった。
 吹きさらしの丘は松が一本あるだけで潮風が頬を撫でる。崖の下からは波が押し寄せ、しぶきの音がざさー、ざさーと繰り返されている。

「別に外は……、無いよね?」

「なにが無いの?」

「え? うわあ!」

 背後から突然の声。振り返るといつのまにか公子が居り、少し離れたところで亮治がタバコを吸っていた。
「あ、いや、その、公子さんこそ、どうして?」
 白い調理服姿ではなく空色のノースリーブサマーセーター姿の公子は、黒いフリルのついたスカートを風になびかせていた。

「亮治さんをさがしていたのよ。ペンションで働かせてもらえないかなって思ってさ」
「ああ、コックとしてですか。公子さんの料理は美味しいですからね」

 夕食のときのことを思い出し、適当に相槌を打つ。

「でも、なんだか赤字っぽくて人を増やすこと出来ないっぽいのよね」

 もしパンフレットを鵜呑みにすれば年中人の出入りのあるリゾート地であり、それもありなのかもしれない。けれど、昨日ちらりと見た帳簿には赤い数字が並んでおり、事業拡大は難しいと予想できる。

「それより真琴君は何をしていたの?」

 頭一個背の高い彼女は前屈みになって顔を見てくる。

「えっと、絵のことを調べようとおもって……」
「ふうん。絵ねえ……。私はパス。頭使うの苦手だしね」

 舌を出して笑う彼女はどこか子供じみている気がする。

「父さん、今も仕事仕事ってしてるけど、母さんが亡くなってからはやっぱり寂しいみたい。だから昔のこととか急に穿り返してね……」
「はい。でも、素敵じゃないですか。昔の女性のラブレターを探すなんて」
「女性? ラブレター?」

 目を丸くして聞き返す公子は、意外性と好奇心に満ちた眼差しを向ける。

「あ、いや、そのラブレターかどうかは分かりませんが、でも多分そうなんじゃないかな。だって久弥さん、女性のために絵を描いたんでしょ?」
「ああ、そういえば女性のためとか言ってたわね。でも、なんで父さんが持ってるのかしら? 普通誰かのために描いたのならプレゼントするんじゃない?」
「それは多分……」

 いいにくそうに視線を下げる真琴。後手で後頭部を描くこと数回、公子もようやく気付いたらしく「ふふ」と笑う。

「振られたのね、父さん」
「多分」

 しばし笑いあう二人。もしこの場に久弥がいたらどうなるのだろうか?

「でも、君が謎解きをしてくれるとなると父さんも張り合いがあるかもね。それで? 今度はどこを探すつもりだったの?」

 本題に戻り、真琴は東の灯台を指差す。遠目には気付かなかったが、外装もかなり剥げており、白とコンクリートの青みがかった灰色がまだらをなしている。

「えっと、あの絵にあった灯台をちょっと見ておきたくって、それで……」
「のぼってみるの?」
「ええ、でも……」
「まあいいんじゃない? 誰も見てないし……」

 いつの間にか亮治の姿は無く、代わりに丘で羽を休めるウミネコが数羽。それらも真琴の視線を感じたのか飛び去ってしまった。

「それじゃ、少しだけ……」

 黄色と黒のロープを跨ぎ、二人は階段を登ることにした。

続き

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