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僕とあたしの海辺の事件慕_14

熱気

 地上おおよそ十二メートルの高さの灯台を上る方法は螺旋階段のみ。しかも、一段一段が高く、狭くてのぼりづらいものだった。
 西の灯台が解放されていないのはそれが原因だろう。
 二人は息も絶え絶えになりながらようやく展望室へと入る。
 中はこれまた狭く、テーブル一つに椅子が四つ、おそらく制御の為の機械なのだろうモノが並んでおり、どれも動きそうに無かった。

「なんか、つまらない場所ね……」

 公子は散らかった部屋を見てため息をつくだけ。
 しかし、よくよく見れば違和感の多い部屋でもある。
 割れた窓から潮風が入りこみ、黴臭さや埃臭さはなく、かわりに錆びのような匂いがする。また最近人の出入りがあったのか、三つの椅子が不自然に並んでいたりと妙な感じがした。

「誰かいたのかな……?」

 椅子を念入りに調べるとごはん粒のついた包装紙が落ちている。その粒は干からびているものの、まだ新しく、おそらく昨日から今朝にかけてのものと予想する。

「え、もしかして誰か来たりしないよね?」
「分かりません」
「一応、鍵閉めとくね」

 用心するに越したことはないと、公子は早速鍵を掛ける。もし新たな不審者が来ても困るので真琴も反対はしなかった。
 窓の外には何もなく、ただ広い空が続いていた。
 下を見れば海が広がっているが、人はみなアリンコサイズに縮小されており、波を器用に乗りこなすサーファー達はアメンボに見える。

「ねえ……真琴君」
「はい?」

 トーンを落とした公子の声に「なんだろう?」と振り返る真琴。彼女は並んだ椅子に座り、わざとらしく足を組みかえる。

「澪ちゃんだっけ? 彼女なの?」
「え、あ、そんなのどうだっていいじゃないですか」

 急にふられた話題にどう答えてよいのかわからない。彼自体恋人になれたと思ったら手の平を返され、かと思えばキスに応じてくれる歪な距離。

「どうなの?」
「恋人じゃないです」

 認めたくないが、澪が「待ってほしい」というのならそれも仕方がない。恋愛は互いの意思疎通の本
に成り立つ行為なのだし。

「そうなんだ。でも昨日は……うふふ」
「うっ……」

 昨日のことは公子の耳にもしっかり届いていたらしく、彼女は真琴の表情を覗き込むように前のめりになる。

「君みたいな可愛い子が童貞じゃないなんて……おばさん、ショック」
「おばさんなんて、公子さんは全然若いですよ……」

 視線に耐えられなくなった真琴はそっぽを向く。しかし、狭い展望室では逃げ回るとも出来ず、またこの場を打開する方法も無かった。

「あら嬉しい。お上手ね、真琴君も……」

 ゆっくりと立ち上がる公子。対照的に背を向けて窓辺へ逃げる真琴。

「どうして逃げるの? なにもとって食べるなんてしないわよ?」
「なんとなく」
「ねえ、真琴君……、二人は付き合ってないのよね……」

 質問の意図が分からず、ただ雰囲気に圧されてゴクリと唾を飲み込むのがやっと。

「ええ、ですけど、ほら、探し物……しないと……」
「探しモノなんて見つかりっこないわよ。何十年も前のことだもん」
「そうかなあ、僕は……まだ……あると……」

 割れた窓からたまに吹きこむ風だけが空調設備のこの密室において、手を伸ばせば触れられる距離というのは暑苦しい。また、昨日今日あったばかりの人にパーソナルスペースに侵入されるのも快いことではない。
 けれど……、

「私も来年三十かあ……。なんかもっと遊びたかったなあ……」

 目の前の女性はムッとくる色気を醸し、手でパタパタと扇ぐとこれ見よがしに胸元を見せ付ける。

 ――ッ!?

 谷間にかすかに黒子が見えた。

「真琴君も昨日は海にお風呂場に……楽しそうね。私なんて職場でオヤジ達にお尻触られるくらいよ?」

 丸みを帯びたお尻は澪や理恵より一回り大きいが、それは肥満に順ずるものではなくあくまでも女性的な丸みの発露。もし触れられる位置にいたら、事故に見せかけて触りたくもなる。

「なんてね、おばさんがこんなこと言ったら気持ち悪いよね?」

 公子はそれだけ言うと身を翻し、割れていない窓辺に向かう。

「そんなこと……ないです……」

 お尻を印象付けるように突き出す彼女。ときおり「あー、みんな楽しそう」と左右を向いてはお尻をフリフリする。

「公子さんは……探さないんですか……」

 誘蛾灯に誘われる蛾のごとく、真琴はふらふらと歩み寄ってしまう。

「ん~、それよりも、もっと楽しいことしたいな……」

 流し目を送る彼女は椅子を手繰り寄せて座ると、背もたれが悲鳴を上げるぐらい寄りかかる。

「たとえば……?」
「若い子とアバンチュール? なんてね……」

 肩膝を抱き上げる彼女。股間からは黒いレースの下着が見えた。

「そんなの、いけません」
「いいじゃない? 誰に断る必要も無いんだしさ。だって、君も私もフリーじゃない」

 風がおさまっているのか、展望室にはムッとする熱気が籠もっていた。

続き

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