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僕とあたしの海辺の事件慕_17

事件

 まだ腰砕けの公子を残し、真琴は一人階段を落ちるように駆け下りる。

「弥彦さーん、弥彦さーん! 返事をしてくださーい!」
 崖の上から手を振り、大声を上げること数回、

「……おお、助けてくれー、動けないんだー……」

 どうやら生きているらしく手を振り替えしてくれる。ただ足を怪我しているのか座ったままでいた。
 崖を降りようかと思うも傾斜六、七十度、高さは十メートル以上。波しぶきが定期的に上がっているが、尖った岩肌も目立ちかなりの勇気がいる。
 ひとまず迂回する真琴だが、よく考えてみれば怪我をしているらしい彼を一人で運べるはずも無い。しかも周りは海に囲まれており、抱えて泳ぐなど不可能。

 ――そうだ、貸しボートを使えば!

 真琴は一路、海の家へと走った。

▼▽――△▲

「あれ、真琴君じゃない?」

 波間に浮かぶビニール筏に掴まりながら理恵が砂浜を見つめて言う。

「真琴なんか、今どうでもいいです」

 誘われるまま足の届かない場所まで来てしまったことを後悔する澪は、内心それどころではなく、必死に爪先を立てる。

「なんか必死に探してるっぽいけど、もしかして澪ちゃんのことさがしてるのかもね」

 楽しそうに言う理恵は最愛の彼女を探す彼を笑っているのか、それとも目の前であがく澪を笑っているのか?

「そんなことよりも、もう浜に戻りましょうよ。あたし、足つっちゃいます……」

 浮かんだり泳いだりするという発想は無いらしい澪は、実のところカナヅチ。本来なら浮き輪必須の彼女だが、見栄を張ってレンタルしなかったのが間違いのもと。

「うふふ~、もう少し楽しみましょうよ……」

 それを見抜いていた理恵はサディスティックな笑いを浮かべながら、さらに沖のほう、遊泳禁止のブイが浮かぶほうへと筏を押し出す。

「ちょっと理恵さん?」

 眉間に皺を寄せて抗議の声を上げる澪。しかしそれすらも理恵の好奇心を煽る燃料にしかならず……。

「ささ、どんどんいきましょうね~」
「ひいいい~っ!」
 澪はさらに沖へと流されていった……。

◆◇――◇◆

 真は一番近くにあった海の家に飛び込み、従業員に訳を話すと、ビニールボート一艘と若い男性アルバイト店員の協力を得る。

「えっと、その怪我した人って……」

 小脇にボートを抱えながら店員が声をかける。

「はい、どういうわけか遊泳禁止の岩礁地帯にいて……それで」
「そうか、そうなんだ……」

 彼は何かを言いかけたようだが、今はそれに気を取られている場合ではないと、真琴は息が切れそうになるのを我慢しながら、例の岩場へと急いだ。

 岩場近くには公子が居り、おそらく彼女が呼んだのだろう和弥の姿もあった。

「真琴くーん、早く早く……」

 急かされる彼だが往復数百メートルは、いくら人命救助をかけていたとしても無視できる負荷ではなく、ボートを和弥に託すとそのままへたりこんでしまう。

「す、すみません、すぐ立ちますから……」
「いや、真琴君は休んでいてくれ……。君、すまないが手伝ってくれ」
「はい……」

 和弥はアルバイト店員を連れ立って弟の待つ岩礁地帯へと向う。

「僕も……」
「真琴君はここで待ってたほうがいいわ。危ないし、それに……」

 負荷に耐え切れず笑ったまんまの膝は、しばらくいう事をきいてくれそうに無かった……。

 岩場で呻いていた弥彦は膝や腕に切り傷があり、右足首を強く捻挫していた。
 ただ、あまりに痛がるために骨折かもしれないと、和弥はボートを担架代わりにすると、アルバイトに公子、真琴の四人がかりでペンションホネオリまで運び込んだ。
 ただし、ペンションのテラスをくぐるとき、そのネーミングセンスに苦笑いしていたが……。

***

 ペンションに戻ると窓辺でティータイムに興じていた久弥と美羽は目を丸くして驚いた。
 美羽は慌てながらも包帯とシップ、消毒液に胃薬まで持ってくると、長椅子に横たわる弥彦の手当てを始める。

「ありがとう、助かったよ。真琴君に……えっと……」

 応急処置を受ける弥彦を尻目に、和也は深々と頭を下げる。

「島津です。島津文彦ともうします」

 アルバイトの男性は照れくさそうな、どこか居心地の悪い笑顔を浮かべつつ、名乗る。

「島津さん。とにかくありがとう。今は立て込んでいるんで申し訳ないが、後でお礼をしたいから連絡先を……」
「あ、いえ、監視員として当然ですので、別にそんな気を遣っていただくことは……」

 何かに気をとられているのか、文宏は心ここにあらずという風に周囲をきょろきょろと見渡している。

「あ、あの、それじゃあお昼、ご馳走しましょうか?」
「あ、そうですね。ちょうどお昼休みでしたから、それなら遠慮なく。

 包帯を巻きながら美羽が言うと、態度をころっと変えて従う文宏。もっともショートヘアのまん丸おめめ、はにかむ笑顔に笑窪常備の彼女に微笑みかけられたら、それを断れる男も少ないのだろう。

続き

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