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僕とあたしの海辺の事件慕_32

※真相解明編ですので、ここから読まれると分かりません。

真相

 ロビーでは弥彦が文宏を前に息巻いていた。
 和弥がそれを宥めつつ、美羽はただおろおろしており、その他のギャラリーは皆どちらにつくこともせずに黙ってみているばかりだった。
「あら真琴く、さん。どこに行ってきたの?」
 沙希がタオル片手にやってきて濡れた髪を撫でるように拭き始める。
 澪も多少濡れてはいるものの、彼女の眼中には無いらしく、真琴にだけ付きっ切りだった。
「こんなときに帰ってくるなんて大変ね。今弥彦様が文宏さんと……あ、ちょっと真琴君?」
 声を潜める沙希を制し、真琴は弥彦と文宏の前に出る。
「弥彦さん、落ち着いてください。文宏さんも……」
 松葉杖片手の弥彦に椅子を勧め、文宏と距離を取らせる。
「真琴君。どいてくれ、私はどうしてもこいつが犯人だと……」
「いや、だから俺は犯人じゃないって……」
「ならなんでこのペンション周りをうろついていた?」
「それは、だから……」
「ほら見ろ! お前が犯人だからだろ!」
「弥彦さん、それだけじゃ犯人なんていえませんよ」
「しかしだな、私を運べるぐらいって言ったらこいつぐらいだろ?」
 メタボ体型な弥彦とそれを抱えて移動した犯人。それなりの体格が必要となるのだろうけれど、和弥は背が高く腕力も人並み。理恵は空手などの強さはあっても肉体的にはそれほどでも無いらしい。美羽や沙希、公子に久弥は論外で亮治ならギリギリといったところ。
 澪も真琴も当然無理なら残るのは文宏だけ。しかも彼はがっしりとしており、真琴ぐらいなら軽々と抱えられそうな体躯である。さらに言うと美羽目的とはいえペンション周りでうろついていたのも事実。かなりフリなのだろう。
「抱える必要はありませんよ。道具を使えば」
「道具? 一体何を使うって言うんだ? あんな岩場だったり海だったりするのに」
 子供のたわごととあまり気に留めない風の弥彦は、もう文宏に噛み付くような視線を送り始める。
「それは傘」
「傘?」
 真琴の続ける言葉に一同目を丸くする。
「傘でどうやって運ぶんだい? 大体弥彦を運べるほどの傘なんてあるわけ……」
 半笑いになりながら言う和弥だが、何かに気付いたのか言葉の勢いが弱くなる。
「ええ、普通の傘ではむりです。けど、ここは夏の海です。ビーチパラソルの、それも業務用の大きいサイズがいくつもありますからね」
「で、傘ならどうして運べるんだ?」
「弥彦さんが外に出たのは夜だったので波も高かった。昨日確認したとき、僕の胸元ぐらいまで沈んでしまいました」
 胸の高さよりやや下ぐらいを指す真琴。背の低い彼の胸の辺りだと亮治や和弥、文宏の下腹部辺りにくる。
「業務用のパラソルの骨に弥彦さんを乗せ、浮力を借りればいくら弥彦さんでも運ぶことはできます」
 真琴の発想はどこか稚拙。けれど可能ではある行為。ただ、一つ気になることがある。
「ふむ、しかし、どうして運ぶ必要があったんじゃ?」
「ええ、それは僕も考えました。実はあの岩場、遊泳禁止区域なんですよ」
「それがどうかしたの?」
「しかも漁場とも離れている。つまり、人気の無い場所。もし公子さんが気付かなかったら、きっと発見されることもなく……」
 意味深に言葉を飲み込むと弥彦はブルると身を震わせる。
「干からびていた?」
「いえ、犯人の本当の目的は多分弥彦さんの殺害ですよ」
「殺害? 俺、誰かに殺されるようなことしたっけ?」
「ええ、おそらくは……」
「おいおい、真琴君。それは突飛すぎないか?」
 腕を組んでいた和弥が話を遮るように前に出る。とはいえ彼もどこか腑に落ちないところがあるらしく、真琴の推理を止める様子はない。
「百歩譲って弥彦を殺そうとしたとして、どうして運ぶ前に殺さないんだ? それに、どうして生きているんだ?」
「それは多分、文宏さんのせいです」
「え? 俺? 俺何かしたっけ?」
 急に話を振られた文宏は日焼した肌と対照的な子供っぽい瞳を白黒させる。その隣では美羽が心配そうに手をこまねいているので、真琴は心配ないですとにっこり笑う。
「犯人は弥彦さんを突き落としたあと、止めを刺そうと崖を降りた。けれど、近くには真の不審者である文宏さんが居る。隠れつつ、死体を隠せる場所に移動したんですよ」
「なるほど、一理あるかもな」
 ある程度納得したらしく、和弥はふむと頷き一歩下がる。
「文宏さんが灯台近くで夜を明かしていたとき、犯人を見たんですよね?」
「ああ、そういうことなのかわかんねーけど、でも二人を見たのは事実……」
「多分、そのおかげで弥彦さんは殺されずに済んだんです」
「なんと……それじゃあこのガキ……じゃなかった、文宏さんは俺の命の恩人?」
 弥彦は手の平を返したように平謝りを繰り返し始めるが、文宏もどう対応してよいのかわからず、ただ「あ、いえ」とくりかえす。
「だけど、一体誰がそんなことを?」
「それは多分、弥彦さんや僕、えと澪もかな? 僕らが邪魔な人だと思います」
「君たちが邪魔? もしかして君たちも命を?」
「いえ、僕と澪はそこまで……。せいぜい驚かされたぐらいじゃないですか? 例えばあるハズの無い怪談話。お化けの声……とかね?」
「お化け……ねえ」
「お化け……か」
 理恵と久弥は互いに罪を擦り付けるように視線を交差させるが、真琴はそうじゃないと手を振る。
「久弥さん。このペンション、ホネオリって昔は接骨院かなんかでしたんでしょ?」
「ほっほっほ。まあそうじゃな」
「ええ! 嘘、ハンセン病は? 死体を捨てた海って……」
 久弥の老獪な笑いに澪が驚いたように声を上げる。そしてきっと亮治を睨むも、彼は「盛り上げる為」と困ったようにいい訳する。
「多分、澪を怖がらせて僕らを早く帰らせようとしたんじゃないのかな?」
「ほうほう。で、何故犯人は君らを?」
「それは多分、絵の秘密を探していたのが問題なんですよ」
「絵の秘密? しかし、それじゃとワシもじゃよ?」
「正しくは絵の秘密を探るとき、あるものを見てしまった。それは多分……」


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