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……タイッ!?_紛れ話_05

 ……すらできない

 どこにいても気が重くなる。
 もちろん、みんなの前ではいつもどおりの控えめでやさしい月のような存在を演じている。
 授業中だって放課後だってそんなに目立つこともしてないし、井口ともあんまり目を合わせないようにしてる。

 あ、アイツが勘違いしたら困るって意味で、私はぜんぜん平気よ。

 そんなことよりもさ。

「ねえ由香さん。最近何かあったの?」

 こいつだれよ。
 最近なんかなれなれしく私の周りをうろついているクラスメート。橘紅葉さんだっけ?
 別に仲良くないのにいきなり下の名前を呼ぶってどうなの?
 こういう失礼な人って苦手なのよね。

「別に何もないよ。どうして?」

 彼氏がアナルセックスに目覚め始めたぐらいだもの。どうってことないわよ。

「最近幸太君とうまくいってないのかなって思ってさ」

 ――!?

「ほら、彼、里奈さんとも仲いいみたいだしぃ」

 なにその馬鹿っぽいしゃべりかた。聞いてていらいらするんだけど。
 っていうか、なんでそんなことわかるの?
 見てたとか?

「別にそんなんじゃないよ。幸太ちゃんは幸太ちゃんだし、里奈もかわいいからね。男の子ってやっぱ見た目に弱いでしょ?」

 そう。見た目の問題。私じゃ逆立ちしても彼女には勝てない。表面上は絶対。
 たぶん男の人が百人いてもB専じゃないかぎり私は……。

 でも幸太ちゃんは私の内面が好きだったんじゃないの?

「彼、最近たくましくなってきたしね。なんていうかさ、女の子にたいしてクールっていうの? そういうとこ変わったよね」

 そりゃそうよ。だって毎日変わりばんこに女の子抱いてるんだし、慣れないはずないわ。

「やっぱり、由香さんも彼と?」

 人の机に頬杖ついて覗きこむように見つめてくる彼女。
 猫のような目と愛嬌のあるほほはえくぼができていてどこか憎めない。けれど人の心にざくざくと踏み込んで痛いところをかき回していくのはやめてもらいたい。
 私、すごくゆれやすいからさ。

「なんのことかな。私は別に幸太ちゃんとはただの幼馴染だよ」

 今日は彼女の番だし、うそじゃないわ。

「そっか。ならいいんだけどさ。やっぱり二股っていうか三角関係? 疲れちゃいそうだったからさ」
「心配してくれてるんだ。ありがと」

 立ち上がる彼女に笑顔を返せるか自信がない。
 ひとまず机の中の辞書でもひっぱり、ついでに舌をやわらかく噛む。
 うつむいても、それぐらいはいいよね。

**――**

 日曜日は中立な日。
 私も里奈も二人とも彼を求めてはいけないと約束した。
 でも、別にあわないとは約束してない。
 私はお気に入りのブーツと若草色のフレアスカート、チェックのブラウスっていう、休日でも地味な格好である場所へと向かっていた。

 最近は生理不順だったりと彼に相手してもらえなかったせいか、気持ちも体もどちらも不安定。
 それに余計な人たちが私の周りでうろちょろしてくれる。
 紅葉はなにかというと、里奈と幸太ちゃんがどうの、一緒にいた。部室で二人きりだった。陸上部に応援に来てくれただの、余計なことをぺらぺらと機関銃のようにまくし立てる。
 逆に井口は私が一人教室に残っているとまたしてもらいたいのかやってきてはとりとめのない話を繰り返す。
 受験はどうの、先生も昔は大変だったけど、それが青春だからだの。あんたの暗くて灰色の青春時代なんてしらないわよ。どうせ自分の息子と毎日遊んでたんでしょ? 変にあれが黒かったしさ。

 はは、なんで、こんなこと、考えるの?
 いいじゃない。今から彼に会いに行くんだし、つまらないことは忘れて楽しいことを創造しないとさ。
 今日はエッチなし。そのかわりおいしいものを作って二人で食べるの。
 それでいい。
 私だって料理で男を釣るぐらいできるしさ。

 彼の家が近づくにつれて胸が高鳴る。
 本当は今日は会わない日だもの。でも、これまでは普通に会ってたよね。だから大丈夫。いまさら怖気づくな。相手はただの幸太ちゃん。愛しいだけの彼氏じゃない。
 だから……、驚かせるつもりでアポ無し訪問しちゃえ!

 インターフォンはいつごろからかならなくなっていた。といっても日中は休日でも人がいない家だもの、なんの問題もないわ。
 けど、鍵くらいかけてれば? まるで誰かさんの家みたい……?

 こっそりとドアを開けてまず最初に飛び込んだのはそろえられていない赤の穴あきサンダル。
 最近のサンダルって男ものとも女ものともわからないのよね。あのたくさん穴の開いてるやつ。でも、幸太ちゃんのかしら? このサンダル。
 というか、幸太ちゃんの性格でこんなことあるかしら。だって、あの子かなり几帳面だし、お父さんも結構細かいこと気にする人。

 なんかやな予感がする。

 私はブーツを脱ぐ時間も惜しいと悪いと思いながらも土足で彼の家にお邪魔する。
 目指すは彼の部屋。階段を駆け上がって突き当たりを右に……。
 急ぐとケーキを焼くために用意した卵に牛乳がかちゃかちゃゆれる。
 でもかまうもんか! だって、悪いのは私じゃないもん!

 彼の部屋の前で立ち止まる私。
 内側から聞こえてくるのは二人の睦みあう声。
 あんだのいやだの、いいだのくぅんだの犬じゃないんだからいい加減にしろって感じの嬌声。
 きっと二人は私を差し置いて、愛を確かめ合っていたのね。
 ふふ、今日は日曜日じゃない。約束はどうしたの? 毎日彼を搾り取る気? 精子なくなっちゃうかもよ。インポになったらどうする気? それでもするの?
 なんかなあ。私も混ぜてもらおうかな。だって今日は私も里奈も幸太ちゃんを独り占めにしない日だしさ。
 でもさ、だってさ、けどさ、なんでさ……。

 幸太ちゃん、私のこと好きって言ったのに……。

 私は一人、声を上げて泣いた。
 ドアを蹴破り、裸の二人と対峙するわけでもなく、ただひたすら泣いた。
 本当は二人をどうにかしてやりたい。
 人を裏切って、だまして、除け者にして、それでもお互いを求め合う二人を。
 でもできない。

 もしかしたら、もう幸太ちゃんは里奈のものになってるのかな。

 そう思ったから?

 んーん、違う。

 むしろ早くこうなってしまえばって思ってたのかも。
 そうすれば、私の片思いで終われたじゃない?
 こんなに悲しむ必要も……、悲しんでるのかな。
 だってこれ、当然の結果じゃない。

 だってさ、私にどんな魅力があるっていうの!

続き

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