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……タイッ!?_紛れ話_10

待ち合わせ?

 グレーのショートパンツに黒の七部袖。その上に白のTシャツ着れば十分でしょ。
 どうせ来るのは女の子と付き合ったこともない童貞井口だし。
 それでもまあニット帽はお気に入りのベージュのやつ。お小遣いためて買ったんだ。
 化粧もした。安物のファンデーションでむせたし、ママの口紅も拝借した。でもそれはあくまでも街を歩くうえでの必須行為。みすぼらしい格好で歩くわけにいかないし。

 でも、普段からあんまり化粧してないせいか、眉のラインが少し変。どうしても里奈みたいにうまくできない。
 こういうところから少しずつ差をつけられてきたんだろうな。

「お待たせ!」

 甲高いクラクションを鳴らして周囲の視線を一身に浴びるのは井口のバカ。
 でも、乗ってる車はよくCMで見るやつのライトイエロー。
 へー、教師って安月給だと思ってたけど、意外といい車持ってるんだ。

「もう、先生ったら恥ずかしいです!」

 私は好奇の視線を背に受けながらそそくさと助手席へと乗り込む。
 車内には少しタバコの匂いがする。
 この人学校では吸ってないけど、一人の時は吸うんだ。なんか意外。そういう身体に悪いこととか絶対しないタイプのおぼっちゃまだと思ってたけどな。
 でも、匂いが身体に染み付いても困るし……。
 私はかまわずにエアコンを自分の方へと向ける。

「あ、気になったかい? タバコ」
「ええ、私は吸わないので」
「そりゃあね」
「吸っていいですよ」
「いや、僕も吸わないんだ」

 ならなんでくさいのかしら。誰か乗せてるとか? まあ、教頭先生か誰かでしょうけど。

「ふふ」
「なに?」
「だって先生がこんな安っぽい手で女の子誘うなんて」
「なんのこと?」
「映画のチケット。買ったんでしょ?」
「いや、本当にもらったんだ」
「うそうそ」
「ホントだよ。そもそもこんな映画、誰の趣味だって言うのさ?」

 チケットを向けられたので一枚受け取る。イラストでは大きな怪獣とカラフルな自衛隊がおかしなヘルメットと光線銃を持っていた。
 特撮よね、これ。
 たしかにないかも。いくらこいつがバカで童貞でも女の子と一緒に見に行く映画ぐらいわかるでしょ。
 甘く切ないラブロマンス。身分の違い。時間、境遇、さもなくばお金。幾多の困難を乗り越えてたどり着くハッピーエンドなり悲恋。
 毎月のように全米が泣いてるんだからそれぐらいチョイスできるわよね。
 なのによりによって怪獣映画だもの。
 あれかな。動員数水増しするためのやつ。

「相沢は映画とかみるほう?」
「え? あ、いえ、あんまりみません」
「そっか」
「はい」
「……」
「……」

 何か話してよ。こんな場所じゃ息が詰まるわ。

「そうだ、先に何か食べようか? 先生がおごるから」
「なにがおごるですか。普通こういうときは男がもつべきじゃないですか?」
「え? そうなの? はは、僕はデートとかしたことないからわからないや」
「もう、そんなんだから……デート?」

 私たち、いつからデートなんて? 今日は確か映画みてそれだけでしょ? っていうか、食事って何よ。どうせファミレスだろうけど、でも、なんか違うことになってない?

「あれ、違うの? 僕はデートだと思ったんだけど」

 赤信号で止まる私たち。彼はハンドル片手に左腕をシートにもたれさせる。
 縦じまのワイシャツは多分クリーニングしたばっかりだと思う。カフスのところとかしっかり線が入ってるし、襟とかもしっかりしてる。てか、第二ボタンまで外すとか格好つけすぎじゃない? なに気取ってるのかしら。
 でも、よくみるとスラックスも結構いいところのよね。そういえば普段からそういうのはいてたっけ? やっぱり女子高だけあってそういうのきにしてたのかな。
 それとも、単にいいとこのを選んでいれば安心ていう安易な考えかしら?

 ただ、ま、でも、さ、これはブランドが本人を引き立てるっていうことでOK?

**――**

 連れてこられたの場所は繁華街より少し離れたところ。
 昼間だっていうのになんか薄暗い店内は気取ったジャズが流れている。
 井口がこんな店を知ってるの? まさか。もっとこう、ファミレスでいいじゃない。

「予約してた井口です」

 ええ!?

「井口様ですね。かしこまりました。こちらへどうぞ」

 なんかすごい整った服に身を包んだ店員さんは恭しく井口にお辞儀をすると、私たちをテーブルへと導く。
 なんかここ、Tシャツ姿で入っていいのかしらって感じの雰囲気がしだしてるんだけど、私へいきかしら?

「驚いた?」
「え、はい。すごく」

 多分間抜けな顔してたと思う。だって私、椅子を引かれるだけでぺこぺこお辞儀してたし、のどが渇いてるのにお冷一口飲めてないし。

「っていうか先生! 予約ってなんですか、聞いてないですよ。最初に言ってくれたら私だってもっとちゃんとした格好してきたのに」
「その格好もかわいいよ。由香の普段の格好がみれてすごく新鮮だ」
「先生、ふざけないでください!」
「ふざけてなんかないよ。それより由香こそ先生なんて呼ばないでくれないか? いろいろと都合が……、そのね」

 たしかに生徒と先生っていうのはまずいかもね。

「じゃ、じゃあなんていえばいんですか?」
「井口、じゃあ他人行儀だし、努でいいよ」

 なにが努よ。それじゃまるで恋人同士じゃない!

 最初に運ばれてきたのは子牛のテリーヌとかいうもの。
 簡単に言えば牛肉をテリーヌにしたものなんだって。
 でも、ソースから香りたつ甘くてどこか酸味の強いにおいは食欲をそそる。

「うわあ、おいしそう」
「うん。驚いた」

 驚いた? ってことはこいつ、別に慣れてるってわけじゃないのよね? んもう、なんでそんなところの予約なんか取るのよ。

「ねえ、努、ここ高かったんじゃない?」

 テリーヌさんを一口食べながら一言。

「ああ、かなり」
「かなりって、ほんと大丈夫?」
「カード払いだから」
「カードって、先生……努ってば大丈夫? いっつもコンビニのお弁当ばっかなのに」
「お金ってのは一度に使わないとだめだって言われてさ」
「誰にですか」

 続くスープは半透明でまったく油ぎってない。上にバジルとかいうなぞの緑が浮かんでるけど、なんか一筋縄にいかない香り。

「でも、おいしい……よね?」
「う……ん」

 初めて味わう感じだった。スープも前菜も。多分ここれから出てくる料理も。

「ねえ、努」
「なに?」

 スープを飲んでるのに喉が渇く。そのせいか上擦った声がでてしまって格好悪い。

「その服、なに? 今日のために用意したとか?」

 だから井口に突っ込みいれて自己弁護をはかるんだ。

「いや、見覚えないかな? 入学式とかそういうときに着てたんだけど」
「一張羅?」
「まあね」
「私に会うのがそんなに緊張する?」

 そんなわけないよね。いつも教室で顔見せてるし。

「んー、どっちかというとこのレストランかな」
「かもね」

 そこは嘘でもYesでしょ。でも同感だわ。

「いまさらだけど、やめておけばよかったかな?」
「ちょっと敷居高いかも」

 むしろファーストフードの方がありがたかったかも。

「だよね」
「うん」
「ふふ」

 もう、なんで貴方はそんなに簡単に笑うのよ。
 なんかこっちまで緊張感がなくなっちゃう。

「あはは」

 なんか噴出すの、おさえられないや。

「あ」

 ?

「何?」
「笑ってくれた」
「な!」

 目を細めていやらしい顔で私を見る彼。なんか悔しい! けど、ま、いっか。

「初めてかな。そういう素直な顔で笑ってくれたの」
「べつに、それぐらい、教室でだって、たまに、見せてます」

 冷静でいたい。だって私の方が……、

「そう?」
「はい」

 恋愛は上手でしょ?

「そうかな」
「そうです」

 いくら選ばれなかったとはいえさ。

「じゃあそうしておく」

 なのに圧されてるかも……。

「じゃあじゃなくてもそうなんです」

 困ったな。このあと、私何を食べたか覚えてないの……。

続き

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