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……タイッ!?_紛れ話_11

デートの続き

「ふう、なんか食べたって感じがしないな」
「うん」

 ランチタイムとはいえ、あの手の店はご遠慮したい。というか、余所行きの格好なんてないし。

「ねえ、映画行くの?」

 正直なところそんな気になれない。だって気取った食事のあとに怪獣映画だよ? ギャップだけでおなかいっぱいだよ。

「ん~どうしようか?」
「こういうとき決められないのが先生の情けないところです」
「面目ない」

 私は流れる景色を見ながら休日を無駄にしていると思っていた。
 でも、それはいつもどおりかもしれない。
 もし今日井口と一緒にいなかったとしても、別にどこかへ行く予定はない。
 彼ももう手放したんだし、恵におんぶされるつもりはない。それにこれ以上三角関係はいや。かといって公園に行く気にもなれない。

「いつもなにしてるんですか? 休みの日」
「休みの日は……、図書館かな。うん、図書館だね」
「ふーん、なんかつまんないね」
「そんなことないよ。本は人生の財産だ。それに、僕は三年生たちの授業もうけもってるしね。受験対策を練るにはそれなりの読書量が必要なんだ」
「そんなもんかしら」
「ああ、読まないとどんどん衰えていく。計算とかも一緒じゃないかな? 使わないでいると得意だったものでも忘れてしまう。そんなことないかい?」

 あるかも。

「毎年受験傾向が変わるから、僕ものんびりしてられないんだ」

 のんびりしてられないんだ。すごく意外。いつもはのんきな話してるくせに。

「来年は由香も受験だけど、理系の大学だろ? 残念だな。文系なら僕が勉強見てあげられたのにな」

 視線を赤信号から私に向ける井口。
 なんか下心があるようにしか聞こえないけど、やっぱり先生なんだな。

 そういうので未来のお嫁さん探すんでしょ?

「そうだな~、駅前に新しくできたアミューズメントパークっていうの? そこに行かないか?」
「え? でも」
「いいからいいから」

 努は私の返事も聞かずに車を走らせる。
 なんて勝手なんだろ。もしかしてさっき決められないことを責めた仕返し?
 だとしたら、まあまあかなって感じかな。


 休日とあって若いカップルばっかり。とても目のやり場に困るけど、私もそれに倣うべきかしら? 相手はこいつだけど。

「へー、こんな風なんだ」

 努はさっきから店内の様子をみてはしきりにため息のような感想を言う。
 でも、私も少々面食らっている。
 入り口からして冒険の世界って感じで剣や魔法、そういうファンタジーな世界観を出そうとしてるの。
 CMでみたことがあるキャラクターが中世のよろいを身にまとってヒロインを助けに行く。かと思えば、二足歩行のカラフルなリスが熊やウサギたちとおしゃべりしてる。
 ほんとゲームの世界に迷い込んだって感じだわ。

「ようこそ、ギガ・アミューズメントワールドへ! ただいまカップル限定企画、ジューンブライダルラブストーリーを展開しております! 幻想的で神秘な夢物語をぜひご体験ください!」

 野球のユニフォームみたいな縦じまの服に身を包んだ女性が声高らかに謳いあげるので、私はその場の雰囲気に逆らえず、パンフレットを受け取ってしまう。

「由香はこういうの興味あるの?」

 パンフレットを覗き込む井口から隠すようにする私。というか、顔が近いってば。そういう関係じゃないじゃない? 私たち。

「えと、なになに?」

 ジューンブライダルラブストーリーとあるそれはなんのことはない。ただの六月の花嫁ごっこだ。ただ、それを祝福するのがギガのキャラクターってだけ。しかもお祝いしてもらう相手をパーク内から探してこいっていうんだから笑っちゃう。

「へー、面白そうだね。やってみようか?」
「え?」

 あからさまに嫌な声を出したつもりだけど、彼はお構いなしに受付にいき「二人。このイベントに……」と乗り気満々。

 ふぅ、やっぱり疲れるわ。

**

 パーク内はイベントからか教会のような張りぼとか神父の格好をしたギガのキャラクターのポスターがところどころに見受けられる。
 白雪姫のようなドレスをきた店員さんが「ブライダルコースはこちら」と書かれているプラカードを持っているのを見ると、あなたは結婚しなくていいの? と逆に聞きたくなってしまう。

「えと、ここでカードを……」

 テーブルにあるカードリーダーに一枚通している井口を見るとなんだかなあと思う。
 受付でもらったパンフレットにはテーマパーク内にあるチェックポイントでカードを読ませることで、最終イベントが変わるとある。
 何のことはない。最後にお姫様のようなティアラをかぶってハイチーズなだけよ。そのとき、フレーム内にどれだけお祝いしてくれるキャラがいるかってこと。
 というか、やっぱり井口と撮るのかしら? なんか気が重いかも。

「さ、行こうか」

 はいはい、二人の結婚を祝ってくれる物好きな人を探しに行きましょうね。

**

 テーマパークを回ること数十分。
 チャイナドレスに身を包んだ女の人、青いハリネズミに黄色いリス。鉢巻巻いた四角い人にクイズ? なのかな、そんな人たちを無理やり式場に呼ぶことができたみたい。
 あと5、6人いるみたいだけど、ここまで来たら全部呼びつけたい。
 私って収集癖があるのかな? それともたださびしいとか?
 ……はは、何いってるのよ。せっかく来たんだから遊ぼうってだけでしょうが。

「ほらほら、努、なにしてるの? おいてくよ」
「ちょっと、まって」

 明らかな文系の努はパーク内部の往復にばて気味。それは私も同じだけど、やっぱり体育があると違うかもね。それとも若さかしら。

「んもう、しょうがないわね。そこで休んでて。何か飲み物買ってくるから」

 自分から誘っておいて頼りないんだから。そんなんじゃ恋人なんてできないよ?

**

 カフェコーナーにはいろいろなお店がある。
 カウンターの列には子供連れやカップルがひしめきあっている。さすがに一人でってのは私ぐらいでなんだかなあ。でもま、井口といてもなんかあれだし、我慢する。
 三十種類以上あるアイスショップに南国フルーツのミックスジュースを売るお店。実演販売のクレープ屋にお好み焼き、たこ焼き……おでん。なんだか式場というより宴会場かも。
 壁際には自販機もあるけどテーマパーク内だけあってちょい割高。これならもう少し出してお店で何か買ったほうがいい。
 とりあえず私はチョコシェイクでアイツはカフェオレでいいかな?
 あとでしっかり請求しないといけないな。だってデートはオトコが払うものでしょ? 年上なんだしさ。

**

 両手にコップをもっているとどうしても歩きにくい。急ぐほどじゃないけど、トッピングでつけてもらったミントのアイスが落ちてしまいそうで困る。
 見栄え重視のせいかコップのへりに乗っけてくれたんだけど、これじゃ食べるときも大変かも。おまけにストローしかないし、つついて食べろってことかしら?
 あ、あ、大丈夫? 大丈夫。なんとか保ってる。

 お、井口が見えてきた。おーい、こっちだ。気づけ! 私を迎えに……来い?
 誰かいる。
 黒いゴシックロリータっていうの? なんかフリフリで変な飾りがたくさんついてるけど、店員さん? じゃない。知ってる子だ。ていうか、橘さん?

 店内にはゲームミュージックが流れているし、そうじゃなくても行きかう人たちの談笑がある。この距離ではどんなにがんばっても彼らの話し声なんか聞こえない。
 橘さんは井口の隣に座ると親しそうに笑って彼をつついていた。
 もしかして井口って結構もてるとか? いやいや、それならなんで私を映画に誘うのよ。橘さんでいいじゃない。あの格好はないけど。

 でも、なんで? いくらデートじゃないっていっても私と一緒に来てるんだよ? 他の子と楽しそうに話をするなんてないよ。しかも、今にもキスしそうな距離まで顔近づけて。
 なんでこのタイミングでいるの? 私に見せ付けるの? 酷いよ。別に期待してなくてもさ……。

 心が揺れたせいかな。アイス、おちちゃった。

続き

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