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……タイッ!?_紛れ話_13

くろやぎさんたらたべたらくれた。

 お弁当を作るのはそんなに大変じゃない。いつも作っている分量を二倍にすればいいだけだし。お弁当箱だって予備があったし、いつもより五分だけかかったかしら?
 でも、問題はそれを届けること。だってさ……、
「お弁当二つあるんだね。それって幸太君の?」

 なんでか橘さんがついてくるんだもの。

「違うけど、ちょっと急いでるから、ごめんね」
「ふーん。じゃあ誰のだろ?」

 ちょっとだけ早足。でも彼女は確か陸上部。平然とついてくる。
 なんか困ったな。というか、すごく嫌な気持ちになる。だって、橘さんて昨日井口と一緒にいたじゃない? 聞きそびれたけど、なんで一緒にいたのよ。

「あ、井口先生だ!」

 廊下を見ると教材を持って歩いてくる井口。なんてタイミングが悪いの? というか、橘さんはお昼行かなくていいの? 食堂混んでるよ?

「ああ、橘、いいところであった。さっき平山先生が呼んでたぞ。陸上部のことでってさ」
「え、そうなの。ふーん。なんか邪魔がはいっちゃった。それじゃね、由香さん」
「う、うん。それじゃまた後でね」

 橘さんはつまらなそうにうなずくと、私に向かってごめんねと見当違いのことを告げてさっていく。とりあえず私も想笑いを浮かべて手を振り返す。
 もう戻ってこないでね。

「井口先生、はいこれ」

 できるだけ抑揚を抑えた事務的な声。

「うん。ありがとう」

 それは彼も同じ。

「お弁当箱はあとでまたもらいにいきます。それじゃ失礼します」
「え? あ、一緒に……」

 早歩きで行く私の後ろ髪を引く井口の声。でもそれは私のサービスには含まれてませんよーだ。
 さっさと食べておいしかったとでも思えばいいのよ。

 でもさ、

 なんだかアレをしてあげたときよりどきどきしてるよ。


**

 放課後、みんなが部活なり帰宅したのを見計らってから職員室に行く。
 井口先生を見つけて目で合図すると、彼はそそくさとお弁当箱を持ってやってくる。
 他の先生たちはちらりと見たあと我関せずというふうにテストか何かに目を落としていた。
 それでも私の胸は高鳴る。たかがお弁当とはいえ生徒と教師。こんな何もない学校じゃすぐにでもうわさになっちゃうわ。

「ん、ありがとう」
「いえいえ」

 井口はお弁当箱だけ渡すとそのまま自分の席に戻っちゃった。
 なんかやな感じね。せっかく作ったのに何の感想もなし?
 もう、明日から作ってあげないんだから!

 心の中で悪態をついたあと、とりあえず洗わないといけないので食堂にある流し場を目指すことにした。多分洗ってなんかないよね。さっきの対応みてるとさ?
 ん? あれ、洗ってある? あ、洗ってあるわ。感心感心。

 水滴の残るお弁当箱を開けて中を確認。今日は本当にピーマンをいれちゃったから結構匂いが残るのよね。匂いが残るのも困るし、一応あけておく?

 なんだろ、紙切れだ。

 丁寧に折りたたまれた紙は水を吸って少し湿ってる。私は破かないように開こうとしたけど、ちょっと一部破けてしまった。

 ――由香さんへ
 お弁当おいしかったです。まさか嫌いなピーマンがここまでおいしく食べられるとは思いませんでした。
 いつもコン――べんとうで済ませている僕がお弁当を食べ―――のが珍しいらしく、他の先生たちも見に来ました。
 とりあえず―姉妹が作ってきてくれたと――ましたけど、内心はひやひやものです。

 もし良かったら明日もお願いできますか?
 もっとあなたの、人の手が通ったものが食べたいので。
 井口努

 ………………。

 明日も作れっていうの?

 そんなの困る。












 リクエストがないと。

続き

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