「相沢、進路希望書出したか?」
「え? 出してませんけど」
ホームルーム前に井口は私に突然そんなことを言った。
でも私の記憶が確かならそんなものは無い。
「提出されないと二者面談のとき困るから今日中にだしてくれないかな」
「はい」
なんだかんだ言っても来年は受験。当然のことながら面談も増える。でも私は胸中で首を傾げてしまう。
なんでだろ? 私きちんとだしたのに。
そんな感想ばっかり。
**
二時間目の休み時間、お弁当を届けるついでに用紙をもらいに行くことにした。
そしたら余計なのがついてきたの。
「ねえ由香さん」
「なに? 橘さん」
どうしてこの人は私をしたの名前で呼ぶのだろう。そんなにどころかまったく親しくないのに。
「最近先生と仲いいね」
「そうかしら? でも当然じゃない? だって推薦ほしいもの。印象は良くないと」
口からすらっと出たけど、これって本心かしら? 内申書にお弁当のことを書いてもらうわけにはいかないのにね。
「ふうん。印象ねえ」
面白そうに唇をゆがめる彼女。下品なことを言ってるのは私だけど、なんだかこの人、底意地っていうのかな、そういうのがすごく嫌だ。
「例えば日曜日にデートするのも?」
「そうかもね」
やっぱり知ってるんだ。でもここで動揺しちゃだめだ。
「そっか。由香さんは努のことをそういう風にみてるんだ」
「何が言いたいのかしら?」
「別に? ただ由香さんがどういう風に努のことを思ってるか知りたかったから」
なんであんたが知らないといけないのよ。どうせ他人でしょ? 関係ないじゃない! ていうか、さっきから努、努ってあんたのものでもないでしょうが!
「おーい、相沢―」
廊下の向こうでは努がのん気に手を振ってる。
「あ、はーい、すみません。それじゃ橘さん。私進路希望書き出さないといけないから行くね」
「そう? もう決まってると思うけどな」
何がいいたいの? なんかむかつく通り越して怖いわ。
**
「傷、痛むか?」
進路指導室で開口一番に出た井口の言葉はそれだった。
「大丈夫ですよ」
なんのことはない。さっきのはウソ。私と二人になれる口実だったのか。
嘘が得意になったんだね。結構進歩してない? 男としてさ。
「そうか、でも見せてくれないか? 心配でさ」
右手の親指は一日して腫れ上がっていた。それにちょっぴり痛む。
でもそれがいい。
別にマゾじゃないけど、いいものはいいの。
「痕にならないといいけど」
「努。そんなに気にしなくていいよ。だってほら、私これ、ガラスで切ったの残ってるし」
「でも君は女の子だし……」
「そうだけど、でもこれぐらい……あっ……ん」
またエッチなことしてくる。
やめてよね。今日体育あるのにさ。
ショーツにしみできたらどうするのよ。
ん、あ、昨日より……、上手。
だめ、指だけなのに、なんか頭、くらくらしちゃうよ。
童貞のくせに、どうして、指フェラ、上手なの……?
**
――勉へ
今日はサンドイッチね。
昨日の焼き豚おいしく仕上がったから。
あと、ちょっと手痛いしね。
手抜きでごめん。
P.S.
もう指なめちゃだめだよ。
恵に笑われたし。
――由香さんへ
サンドイッチ、おいしかったです。
昨日のポテトサラダは残念だったけど、今度は自分ひとりで作ってみるよ。
P.S.
どうして指をなめてはいけないんですか? あと、どうして笑われるんです?
僕はそういうのぜんぜんわからないから、教えてくれたらいいな。
こいつばっかじゃない? 教えられるわけないじゃない!
続き
でも私の記憶が確かならそんなものは無い。
「提出されないと二者面談のとき困るから今日中にだしてくれないかな」
「はい」
なんだかんだ言っても来年は受験。当然のことながら面談も増える。でも私は胸中で首を傾げてしまう。
なんでだろ? 私きちんとだしたのに。
そんな感想ばっかり。
**
二時間目の休み時間、お弁当を届けるついでに用紙をもらいに行くことにした。
そしたら余計なのがついてきたの。
「ねえ由香さん」
「なに? 橘さん」
どうしてこの人は私をしたの名前で呼ぶのだろう。そんなにどころかまったく親しくないのに。
「最近先生と仲いいね」
「そうかしら? でも当然じゃない? だって推薦ほしいもの。印象は良くないと」
口からすらっと出たけど、これって本心かしら? 内申書にお弁当のことを書いてもらうわけにはいかないのにね。
「ふうん。印象ねえ」
面白そうに唇をゆがめる彼女。下品なことを言ってるのは私だけど、なんだかこの人、底意地っていうのかな、そういうのがすごく嫌だ。
「例えば日曜日にデートするのも?」
「そうかもね」
やっぱり知ってるんだ。でもここで動揺しちゃだめだ。
「そっか。由香さんは努のことをそういう風にみてるんだ」
「何が言いたいのかしら?」
「別に? ただ由香さんがどういう風に努のことを思ってるか知りたかったから」
なんであんたが知らないといけないのよ。どうせ他人でしょ? 関係ないじゃない! ていうか、さっきから努、努ってあんたのものでもないでしょうが!
「おーい、相沢―」
廊下の向こうでは努がのん気に手を振ってる。
「あ、はーい、すみません。それじゃ橘さん。私進路希望書き出さないといけないから行くね」
「そう? もう決まってると思うけどな」
何がいいたいの? なんかむかつく通り越して怖いわ。
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「傷、痛むか?」
進路指導室で開口一番に出た井口の言葉はそれだった。
「大丈夫ですよ」
なんのことはない。さっきのはウソ。私と二人になれる口実だったのか。
嘘が得意になったんだね。結構進歩してない? 男としてさ。
「そうか、でも見せてくれないか? 心配でさ」
右手の親指は一日して腫れ上がっていた。それにちょっぴり痛む。
でもそれがいい。
別にマゾじゃないけど、いいものはいいの。
「痕にならないといいけど」
「努。そんなに気にしなくていいよ。だってほら、私これ、ガラスで切ったの残ってるし」
「でも君は女の子だし……」
「そうだけど、でもこれぐらい……あっ……ん」
またエッチなことしてくる。
やめてよね。今日体育あるのにさ。
ショーツにしみできたらどうするのよ。
ん、あ、昨日より……、上手。
だめ、指だけなのに、なんか頭、くらくらしちゃうよ。
童貞のくせに、どうして、指フェラ、上手なの……?
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――勉へ
今日はサンドイッチね。
昨日の焼き豚おいしく仕上がったから。
あと、ちょっと手痛いしね。
手抜きでごめん。
P.S.
もう指なめちゃだめだよ。
恵に笑われたし。
――由香さんへ
サンドイッチ、おいしかったです。
昨日のポテトサラダは残念だったけど、今度は自分ひとりで作ってみるよ。
P.S.
どうして指をなめてはいけないんですか? あと、どうして笑われるんです?
僕はそういうのぜんぜんわからないから、教えてくれたらいいな。
こいつばっかじゃない? 教えられるわけないじゃない!
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