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……タイッ!?_紛れ話_16

由香の忙しい一日

 期末テストが終わったら夏休み。
 中には補習や部活で学校と縁が切れないひともいるけど、それは私も一緒。だってお弁当届けないといけないじゃない。一日百円の立派なビジネスだし。
 でも、やっぱり暑い。
 急いで校内に隠れるけど、熱気っていうのは追いかけてくる。
 窓の外を見ると校庭で誰か走っているけど、こんな日に外で練習して大丈夫なの?
 あ、ほら、言わんこっちゃ無い。倒れちゃった。
 どうしよ。先生呼んできたほうがいいかな? 日射病って結構怖いし、手遅れになったら困るかも。先生ごめん。ちょっと行ってくるね。


「あなた、大丈夫?」
「平気っす」

 明らかに平気じゃないその子を抱き起こし、日陰へと引きずる。
 ていうか、この子図体でかくて重い。
 ……まあ、スタイルいいって言うべきかな。ユニフォームからもそういうのわかるし、顔だってかなりかわいい部類。
 なんかうらやましいな。こういう子ってあんまりそういう苦労ないのかな。

「大丈夫です。もう、大丈夫」
「そんな強がり言わないの! あなたは黙って引きずられてなさい!」

 前言撤回。たぶん結構苦労するかも。この性格じゃさ。

 とりあえず木の下に置き去りにして、保健の先生を呼んで来るべき? それとも水かな?
 その子を見ると犬みたいに口を開いてはぁはぁ言ってる。もしかして脱水症状かも? うん。水だ。

「ほら、これ飲んで」

 本当は努に差し入れるはずだったアイスティー入りの水筒を取り出す私。

「運動中は水分は禁物……」
「あのねえ、あなたは今運動してるんじゃないの。日射病で倒れてるの。わかる?」

 このごに及んでまだバカなことを言うか。
 半分切れ気味な私はそれでも病人相手であることを忘れず、彼女の上半身を抱き起こし、唇をぬらすように水分を取らせる。

「ん、んぅ」

 赤ん坊に授乳させるみたいにコップをあてがうと、さすがの強情娘も折れたのか飲んでくれる。
 一口、また一口。うん、これで少しは大丈夫かな。

「まっててね、今先生呼んでくるから」

 なんかまだひっかかるけど、この状態でどっか行くはずないよね? さ、早く保健の先生よんでこないと。


「あ、あなたえと、相沢さんよね? この辺で綾みなかった?」
「綾?」

 私と入れ違いになる格好でやってきたのは同じクラスの前園さん。

「えと、綾って誰?」
「あの、同じ陸上部の子なんだけど、もしかしたら一人で走ってるかもって……」

 ビンゴ。思いっきりさっきの子じゃない。

「えと、多分さっき見たよ。あのね、日射病で倒れてたから日陰に運んだの。今から保健の先生を呼びにいくとこなんだけど」
「ホント! あのさ、悪いんだけど今から保健室行くより二人でつれてきたほうがいいかもしれないし、お願い、一緒に来て」
「うん。当然じゃない」
「ありがとう! さすが委員長。恩に着るわ」

 確かに私はクラスの雑用とかこなしてたわ。
 けど、委員長じゃないのよ?

**

 急いで戻ってきたけどすでにもぬけの殻というか、跡形も無い。
 まさかトレーニングとかしてないよね?
 それとも自分で行ったとか? いやいやいや、それはない。あんな強情な子だもん。いや、強情だからこそ一人で行ったとか?

「もう、綾ったらどこに行ったのよ」
「さっきまでいたんだけど、どうしよ」
「私他のところ見てくる。まだ近くにいるかもしれないし」
「じゃあ私は保健室行ってくるね」
「うん。お願い」

 それだけ言うと前園さんは弾丸のように走っていった。
 さすが陸上部ね。でも、あなたまで倒れないでよ?

 とりあえず校舎に戻り、保健室へと急ぐ。
 患者不詳でも先生に言っておいたほうがいいよね。
 そしたら廊下の曲がり角で出会いがしらに誰かとぶつかる。驚いた拍子にしりもちついちゃったけど、さすがに私まで保健室通いは困るわ。

「ん? あ、菅原先生! 良かった。探してたんです」
「お? おう?」

 大柄な白衣の女性はわが校の養護教諭菅原裕子だった。

「先生、さっき陸上部の子が練習中に倒れちゃって、それで日陰に運んでいたんですが、いなくなってて……、あ、その子は一年の綾とかいう子で」

 わたりに船とはこのこととばかりに私は急いでまくし立てる。

「あ、綾ならさっきマネージャーとかいう奴が連れてきたぞ。だから大丈夫。それよりもあなたは手が空いてるのか?」
「え? まあ、はい」
「それじゃあ一緒に来い! プールで転倒事故があったんだ。猫の手もほしいから、さ、早く」
「え? え? え?」
「ほら、急げ」

 もう、今日はいったいなんなのよ。私はお弁当届けに来ただけなのに!

**

 プールの事故はバカな男子が濡れたプールサイドで追いかけっこしてて足を滑らせてってだけみたい。
 正面から倒れたせいで鼻血がすごかったし、おでこもこぶみたいなのができてた。
 しかもこいつら陸上部なんだってさ。まったく人騒がせな部員たちね。

「んー、見た目はそうでもないけどな、なんか吐き気とかあるか?」
「いえ、特には……」

 バカな男子の顔をしげしげと見つめる菅原先生。彼女の手がおでこにふれるとそいつは痛そうに顔をゆがめた。
 痛みがあるってことはまだ平気ってことじゃないかな?

「でもなあ、頭打ったわけだし、とりあえず医者行くか?」
「はぁ」
「よし、しょうがない。えと、君……」

 なんか菅原先生、私のことみてるけどなんだろ? これ以上の面倒ごとは困るんだけどな。だってお弁当、もう昼過ぎだよ。

「あ、はい? 私ですか?」
「すまないけど、職員室に行って先生たちに伝えてきてくれないか? 頭打った学生を病院に運んでくるって……、相模原総合病院にいくからって」
「あ、はい! わかりました」

 それなら大丈夫。お弁当渡すついでに伝言してきてあげますから。

**

「……で、菅原先生は今、相模原総合病院に行きました」

 せっかく職員室に来たっていうのに井口のバカは席をはずしてた。
 代わりにいたのが平山愛理。家庭科の先生だ。
 彼女は年に似合わず、というか、見た目はまだまだ女子大生な彼女なら似合うピンクのジャージに身を包み、編み物をしていた。
 とりあえず彼女でも伝えないわけにはいかないと、話しかけた。

「そう。ありがとう。今教頭先生いないけど、うん、大丈夫、安心して。それじゃ私が菅原先生の代わりに保健室に行くね」

 どっちかというとこの人の方が安心できない。
 というか、たしかこの人井口と同い年かそこらだけど、彼以上に威厳というか、そういうのが感じられない。
 それにこの人陸上部顧問じゃないの? こんなところでのんきに暑そうなセーター編まないでよ。なに? LOVE? そんな恥ずかしいもの着せられる相手はかわいそうね。
 うん、とにかく陸上部には近づかないほうがいいわね。

続き

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