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……タイッ!?_紛れ話_17

由香の寂しい夕暮れ

 どうしよ、お弁当。せっかく今日は彼の好きなハンバーグだったのにさ。
 時間かけても平気だったし、チーズ、中にいれてたんだよ。それにソースだって手作りなのにな。
 今日しか食べさせてあげないよ? こんなおいしいのに……。
 二時を回った食堂では誰もいない。もともと夏休みということもあってテーブルとお茶ぐらいしかサービスの無いところだからしょうがないけど、一人でお弁当をつつくのもね。
 どこいったんだろ。今日は来てるっていったくせに。でもどこにいるかは聞いてないか。私も肝心なところが抜けてるわね。
 ん~? そっか、アイツ文芸部の顧問か。じゃあ部室に行けばいいじゃない。うん、行こう!

 部室棟はほとんどいったことがない。帰宅部には必要ないし、文系っていうだけで暗い感じがして嫌だった。
 けど、さすがは元女子高らしく、プレハブ小屋でも壁はきれいに補修されていたし、窓もスモークだけじゃなくカーテンがある。
 ただ洗濯してるかは疑問だけど。

「んーと、ここ? 違う。ここ、も違う」

 囲碁将棋、チェス。活花茶道。なんか高尚な部活動があるのね。それより文芸部は?

「あった!」

 一番端っこにぺらぺらな紙で文芸部とあるのを見つけた私はいつの間にか走り出していた。多分、ハンバーグのチーズが硬くなったら嫌だからだと思う。

 でも扉を前にして立ち止まってしまう。別に息を切らすほどじゃないのに。
 なんていって入る? 別に入部希望ってわけじゃないし、先生にお弁当届けに来ましたっていうのもちょい恥ずかしい。

 ん~、どうしよ。

「……ふーん、お弁当ねえ」
「……彼女、すごく料理じょうずでさ」
「……あらら、のろけられちゃった」

 誰? 一人は知った声だけど、もう一人は……。

「努に毎日作ってくるなんて由香さん、すっかり御執心ね」
「そうかい?」
「ね、キスぐらいした?」
「あ、いや、別に」
「なーあんだ、じゃあ私とのほうがすすんでるんだね」
「すすんでるって、紅葉の場合は……」

 紅葉!?
 また、あの子?

「キスはキスじゃない。でも努が取られちゃうのか。なんか意外だな~」
「そんな関係じゃないさ。というか、紅葉、お前あんまり変なことしないでくれよ。俺とお前の関係はあんまり人に知られたくないんだからさ」
「はいはい、わかりましたよーだ。ほら、そっちも脱いで、さっさと終わらせないと困るでしょ」


 関係? 努と紅葉の関係? キスしてんでしょ? なら次はなに? 脱いですることでしょ? 秘密にしないといけない関係ならやっぱり肉体関係よね? セックスしてるんだ。童貞のくせに……。

「脱げって……」
「それとも自分でする?」
「ん……、お願いします」
「そうそう、人間素直が一番! そんじゃはじめますよ~」

 またかも。
 手、しびれちゃった。

**

 どこを走ったか覚えてない。でも、どんなに混乱しても、どんなに取り乱しても昇降口に向かって靴を履き替えようとするのが滑稽だ。
 上履きのまま帰ればいいじゃない。別にもう十分みっともないのにさ。

「あ」
「え」

 同じクラスだから下駄箱も同じ列。けど、同じクラスだからって表情ぐらい違くていいと思う。
 前園さんは何が悲しいのかな? それだけは多分違うけど。

**

 一人でいれば変な先輩が慰めに来てくれる。
 そんな淡い期待を込めて向かった先は例の公園。
 でも、今日は二人いるし、先輩だって三年だもの。もう受験勉強が本格化してるよね?
 たださ、誰にも邪魔されないで慰めあえる場所って結構無いんだよね。だからここ、使わせてもらいますね。

「ねえ、どうして泣いてたの?」

 ブランコを漕ぎ出すと同時に聞いてみる。そうしないとお互い涙の痕の残る恥ずかしい顔を見せ合っちゃうし。

「別に、なんでもないよ」
「なんでもないなら泣かないよ」
「だって、なんか、すごく、変な気分なんだもの」
「変?」
「悲しいとか、がっかりっていうか、なんか変なんだけど裏切られたって感じがして」
「私も裏切られたって感じかな」

 それもあなたのところの部員にね。

「セックス、したことある?」
「え?」
「ごめん、やっぱいい。変なこと言ってごめん」

 セックスか。童貞だと思ってた井口も多分紅葉と……。

「あるよ。それぐらい」
「そうなんだ。じゃあ見たことは?」
「見たこと?」
「他人の。あ、ビデオとかじゃなくて」
「あるよ」
「そうなんだ。そういうの平気?」
「全然」

 ついこないだまで何度も覗き見したし、そのたんびに気持ちを暗くしてたよ。
 我ながら負の悪循環だったと思うわ。

「そう、そうだよね」
「どうして? もしかして……」
「うん、見ちゃった」

 見た? 誰と誰? もしかして井口と紅葉の?

「それって……」
「同じ部員なんだけどさ」
「やっぱり……、紅葉さん?」
「んーん、違う子。っていうか、今日倒れてた子」

 なんかほっとしたけど、でもなんか変な気分。だって日射病で倒れた子が学校でセックスしてて、それを見た子がないてるんだもん。
 複雑すぎて笑えないわ。

「綾っていうんだけど、その子、すごい才能の持ち主なんだ」
「へえ」
「私中学から一緒なんだけど、全然追いつかないの。実力も背丈も」

 言われてみれば確かにこの子はちいちゃい。でもマラソンとかなら背が小さくても選手とかいるから、なんともかんとも。

「あの子の才能をわかってるのは私だけ。だからなんとしても上を目指せって言ってたんだけどな」
「トレーナーみたいだね」
「まね。でも、あの子ちょっと間違った解釈したっぽくてさ、トレーニングのメニューぐらい私が考えてあげるわよ。じゃないとあの子、今日みたいな日も倒れるまでやるし」
「ふうん」
「それに昔はもっと素直でいい子だったんだけど、今年相模原で再開したときはなんかよそよそしくてね、なんか避けられてるって感じがしちゃうのよ」
「そっか、どうしてだろうね」

 なんか彼女の愚痴が始まったわ。こっちだって言いたいことあるのにな。でも、いえないかな。だって生徒と教師だもの。

「それなのに、マネージャーと保健室でさ、なんか、エッチなことしてて、それで……」

 彼女の表情が険しくなり、耐えられなくなると同時に涙がこぼれ落ちる。
 一粒、彼女の手を汚し、そしてジャージにしみとなって消える。

「なんで? 私、っていうかみんな心配してるのに、どうしてオトコならいいのよ! そんなにエッチがいいの? いいのかな……、ねえ、どうなの?」
「好きな人……なら? かな」
「マネージャーのこと、綾は好きなのかな? マネージャーは綾のこと好きなのかな?」
「どうなんだろうね。でも、オトコの人ってひっかけられそうなら平気で言い寄るかもよ」
「そうかな? そうかもね。やっぱりそうだよね。……許せないよ、マネージャー」

 涙が止まると、今度は闘争心を燃やしだす彼女。なんだかんだ言って傷は深くなさそうだし、平気よね。

「ありがと。なんだか気持ちが楽になったよ。うん! よし! 大丈夫! さあ来い! エロやりチンマネージャー!」

 ブランコから立ち上がる彼女はあさっての方向に向かって宣戦布告をする。

「ねえ、あなたはなんで泣いてたの?」

 あらら、私の悩みも聞いてくれるの。
 でも、処女のあなたには荷が重いかもよ。
 たかがセックス覗き見した程度でないちゃうんじゃね。

「私はね……」
「うん」

 ブランコに座りなおす彼女はうんうんとうなずいて私の顔を覗き込んでくる。
 やっぱり人の悩みは楽しいのかしら?

「あのね、気になる人が二股してたの」
「へー、じゃあマネージャーと同じ? かも」

 そのマネージャー、ほんとろくでもない男ね。

「私ももう一人の子もそれは知ってて、だから、多分、それはもういいけど、でも新しい気になる人も、やっぱりそういうことしてる人でね……」
「なんか重い恋愛してるんだね。私そういうことしたことないから全然わかんないや」

 それなら多分これ以上聞かないほうがいいかもね。

「今日、さっきなんだけど、私がまごまごしてる間に本命かな、その子と部室でなんかしてたっぽい」
「ほんとなの?」
「だって、脱いでっていってたもん」
「そっか、でも、そうなんだ」

 彼女は視線をようやく私からそむけ、大きく息をつく。そりゃそうよね。まさかひとつの校舎で二組がセックスしてるなんて思わないもん。

続き

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