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……タイッ!?_紛れ話_18

単純な私

「学校で……しちゃうんだ……」

 ブランコがキィと音を立てる。
 動揺してるの? してるよね。

「でも、ま、負けちゃだめだよ。私じゃ力になれないけど、でも、由香さんは悪くないもん。だから、絶対、そんな彼氏ふっちゃいなよ。うん、そのほうがいい! 絶対に!」

 前園さんは私の手をぎゅっとにぎり、まぶしいぐらいのまっすぐな視線で射抜いてくる。なんかうらやましいな。その純真さっていうか、立ち直れる勇気。

「うん。そうする! もう過去は振り返らない。そうしたらきっと」
「由香さん、気が利くし親切だし、絶対今よりいい彼氏ができるってば」

 ふふ、かわいいとか美人とかは言ってくれないのね。すごく真実味のある意見だわ。

「そうだ、携帯、メール交換しようよ」
「え?」
「だってもう私たち友達でしょ?」
「う、うん、そうなのかな?」

 小さな彼女は手をいっぱいに広げて私を元気付けようとしてくれる。

「そうだよ! 絶対そう。これからは美奈子ってよんでよ、私も由香っていうから」

 昔そんなことがあったかもしれない。多分私がまだ男の子を怖いって思ってたころかな。
 彼、嫌がる私の手を引いて二人のもとへと無理やり連れてってくれた。
 友達が一気に三人増えたのに私泣き出してしまったっけ。
 でも今は泣かない。なかなくていい。

「うん、わかったよ。まえ……美奈子」

 彼女の目が険しくなる前に言い直す。この子結構厳しいのね。でも、すごく嬉しいな。だって、もしかして高校に来て初めて素直に話し合える友達ができたんだもの。

「よろしくね。由香。もし素敵な出会いがあったら応援するわ」
「うん、いの一番にメールする」

 日差しは高いままだけど、なんとなくこのまま別れたほうがきれいな気がする。
 というか、ここで今日が終わればいい。
 とにかく大変な一日だったし。

**

 美奈子はいい子だと思う。というか、根が明るい。だからさわやかな気持ちでいられる。
 彼女と付き合っていれば私も変われるだろうか? だとしたらいいな。
 どうせ無理だろうけど。

「ただいま」

 家についても誰もいない。さすがは共働きの両親。すっかり娘はひねくれましたよ~だ。

「あれ?」

 廊下の突き当たりにある二世代以上前の電話。
 留守電機能はあるものの子機もなく、暑かろうが寒かろうが常にとどまらなければならない不便なもの。かといって携帯電話を常時使うにはお金がかかりすぎる。だからいまだに現役なのだ。
 その電話君が薄暗い廊下で明滅を繰り返している。
 誰かの留守録だろうけど、用があるなら携帯でよくない?

「ただいま留守にしております。要件があるかたは発信音のあとにメッセージを入れてください」

「あ、あの、井口です。由香さんなにかありましたか? お弁当、なんか大変なことになってましたけど……」

 大変。私の心も大変ぐちゃぐちゃになってますよーだ。

「その、ハンバーグ、おいしかったよ」

 え?

「はは、落ちてるものを食べるなんて意地汚いよな。でも、由香さんがせっかく作ってくれたんだ。もったいなくてその、つい……」

 ウソ、バカじゃない? アレぐらいいつでも作ってあげるわよ。合いびき肉この前のセールでたくさん買ってきたし。

「また電話します。それでは……」

「はは、ははは……」

 メッセージをもう一度再生。
 彼のおどけたような声をもう一度聞いてみる。

 ――落ちてるものを食べるなんて……。
 ――でも、由香さんがせっかく作ってくれたんだ。

 もう一度、もう一度。

 そしてやめる。
 録音も全消去して。

「意地汚い子」

 そうだ、こんどはグラッセもつけよう。にんじんたくさんあったし。

続き

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