FC2ブログ

目次一覧はこちら

……タイッ!?_紛れ話_26

鞘に戻る

 どこをどう歩いているのかわからない。
 ただ一人日陰を求めて歩く私。
 夏休みの午後、きっと私ぐらいの子なら同い年の子を誘って自転車でデートでもしてるんじゃないかな。買い物だーとかいってさ。そんで木漏れ日の下でキスするとか……。
 ばかばかしい。そんなケータイショーセツみたいなことしてる奴がいたらふん捕まえて説教してやる。
 暑い、とにかく。
 坂道の上、陽炎が揺らめいてる。
 私、どこに向かってるんだろ。
 こんな日に日傘も持たないで。でも、なんでか足が動く。私の知らない目的を持ってるみたいでさ。
 坂道を登って降りて……。
 お店で涼めばいいのにさ、何か食べたほうがいいよ。夏ばてって怖いんだよ。これじゃもしかして倒れちゃうかもしれない。
 そしたらだれか助けてくれるかしら? 男の子だったらそのままセックスしちゃう?
 ふふ、それもいい。結局彼は私を抱いていただけだったし。満たしてくれるなら偽りでもいい。誰か、私を愛して……。

 愛されたい。

 そう思ってもいいでしょ……。

 心の中で叫びながらも、身体はどこかへと向かう。
 多分、理性だけが反対してるんだと思うんだ。今の私。

**

 変な匂い。白い壁。硬いベッド。タオルケット。
 病院? 違う。見たことある。
 ここ、学校だ。
 なんでいるんだろ? はは、簡単よ。
 私相当未練がましいもの。
 努を追ってきちゃったんだと思うの。多分ね。
 でも暑くて、食べてなくて、それに、疲れちゃって。

「お、目覚ましたか?」

 カーテンを開けて菅原先生が太陽のような笑顔で私に話しかける。

「えと、私どうしてここに?」
「ん? ああ、相沢の友達がつれてきてくれたっぽいぞ? なんでも校門のところで倒れてたってんでさ」
「友達?」

 美奈子? おかしいな。彼女はまだ合宿中。

「ユカリン、大丈夫?」

 先生の影からひょっこり顔を出すのはツインテールのバカっぽい子。
 ああ、そうだ。こんなトモダチもいたんだ。

「あのね、里奈、ユカリン探しての」
「どうして?」
「だって、ユカリンのままから電話あったし」
「ふーん、ママはなんて?」
「里奈のうちに遊びに来てないかって」
「そして?」
「一緒に宿題してるって言った」
「どうして?」
「だって……」

 私が執拗に問い詰めてるというのに里奈はなんだか楽しそうにもじもじする。

「聞いたよ? ユカリン、恋してるんでしょ?」
「え?」
「紅葉から聞いたんだ」
「ふーん、そっか……」

 彼女がどこまで知っているのかはしらない。けど、紅葉の余裕なのかしら? 私の浅はかな恋が実らないってさ。

「ね、もしかしてユカリン、その人と一緒だったとか?」

 桃色の雰囲気。恋の話を親しげにするのは彼女の余裕。
 なんかむかつく。
 当然だ。
 だって私の恋が終わったのは彼女が原因なんだもの。そして、彼女が私の恋を勝手にしっていたのも、それを勘ぐるのも、全て彼女の余裕なんだ。

「そうよ」
「そっか。よかったね」

 貴方にとってもね?

「でも、なんかダメっぽい」
「えぇ……!」

 がっかりそうな顔してる。
 多分本心からだと思う。
 だって、そのほうが貴方にも都合が良いんだし。

「それより、私どこにいたの? なんか暑さで朦朧として分からないのよ」

 そんなの本当はどうでもいい。保健室に来てるんだもの。足は当然彼を訪ねていたんだ。

「えっと、里奈、コータと一緒にユカリンのこと探してたの」

 幸太ちゃんと一緒に……か。

「恵には……言えなくて、でも、がんばって探してた。夜も、朝も、お昼も」
「そう、悪いことしたね」

 二人の時間を邪魔してさ。

「んーん、へーきだよ。それで、学校近くに行ったらたまたま見つけて、それでとにかく保健室に運んだの」
「そう、ありがと」

 できれば職員室に連れてってほしかったかも。
 そしたらアイツとのこと全部ぶちまけてやるんだ。
 教え子二人と淫らな関係にあったってさ。

「ねえユカリン、やっぱり怒ってる?」
「怒ってないよ」

 もう怒る理由もない。だって私も終わらせたかったんだし。

「里奈ね。やっぱりやだ」
「何が?」
「ユカリンとこのまま絶交なんて、さびしすぎるもん」
「幸太ちゃんがいるじゃない」
「コータはいるよ。でもユカリンもいてほしい。わがままかな?」

 人懐っこい顔で私を見る里奈。
 昔の私ならきっとそのまま流されて許していたかもしれない。けど、一人の男を取り合い、破れ、いままた愛をつかめないでいる私には難しすぎる。

「それは、無理よ。だって私、それにいつかはわかれが来るよ」
「でも、それまでは友達でいたい」
「虫が良すぎるよ。里奈」
「だって……、だって」

 涙交じりになる彼女。けど、それは私も同じ。
 惨めな気持ちになりたくないと思う一方でさびしいのも嫌い。
 もし彼女たちともう一度やり直しができるなら、友達に戻れるなら、私の恋心を犠牲にしてでも寂しさはまぎれる。だから、それでもいい。けど、それじゃやっぱり私がかわいそうだ。
 それだけが譲れない。誰かが一緒にいてくれたら、それでいいのに。

「お願い。ユカリン」

 こぼれた涙がシーツに伝う。
 彼女の涙はなんて絵になるのだろう。鼻水垂れ流して惨めになるだけの私とは全然違う。多分成分だって。

「里奈。私だって同じだよ。でも、今は時間を頂戴? 多分、そのうち、私の方がさびしくなって電話するから……」

 もうさびしいよ。もう泣きたいよ。里奈、そしたら受け止めてくれる? 幸太ちゃんは貴方に譲ったんだし、もう一人分、心に椅子を用意してくれない? ずうずうしい、しつこくて早とちりばっかりする奴だけど、でもお願い。

「里奈、待つね。絶対待ってる。ユカリンがまた一緒に笑ってくれるの」

 笑う……か。私の笑顔なんてそんなにいいものかしら。みんなバカのひとつ覚えみたい言うけど。でも、お互い我侭ばっかり。そして居場所をありがと。

「もう、大丈夫だよ。だから、今は」
「うん。わかった。けど無理しちゃだめだよ。今度無理したら絶対にわがまま言わせないよ」
「そんなことしないよ」
「ユカリンがどう思ってても、大切な友達なんだから」
「私も里奈と友達……に戻りたいもん」
「いじっぱりぃ! 友達になろうよ」
「いーや。絶対にお断り」
「ユカリンのイジワル……」

 彼女はさびしそうに笑ったあと、手を振ってカーテンに消えた。
 そう。それでいい。
 いつか貴方と、貴方の隣にいる人のところに逃げ場所を予約させてよ。多分使うことになると思うしさ。

続く

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/199-e3e8d54a

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析