「由香、何度でも言うが、僕と君は……」
「そんなの関係ない。っていうか、私も努もオンナとオトコだと思う。一対一の独立した人格同士だもん」
「それは僕ら二人の間ならそうだけど、でも、やっぱりそういうのは段取りというか、順序があると思うんだ」
「順序? なに? 映画見てごはん食べて結婚式ごっこして別のオンナによく出来ましたって誉めてもらうこと?」
「違うよ。どうしてそんなに僕を困らせるんだ」
「貴方が私を苦しめるからじゃない」
「僕がいつ?」
「昨日だって、幸せな気持ちにさせてくれたくせに、すぐに地獄におとしてくれたもん」
「僕が抱かなかったから?」
「自惚れないでよ。キスも満足に出来ない男が女を満足させられるわけないでしょ! 貴方が、私との思い出を他の人に……言うから……」
「それは、ゴメン。僕が軽率だった」
「赦せないもん」
「でも補いたい。君の心を傷つけた分だけ」
「なら、一緒に来てよ」
「由香……」
もう振り向かない。これで来ないなら私の恋はおしまい。
美奈子でも恵でも里奈だって、それこそホーケー野朗にアナルの処女を捧げても寂しさを紛らわせる。
あはは、涙も出ないよ。
なんか惨めとか哀れとかそういうの、全然追いつかないもん。
でも……、
スモークガラスの自動ドアが緩慢に開くとき、彼が頭を掻きながらやってきたのがせめてもの救いかしら?
**
「ここがラブホテルか。なんか思ったところと違うな……」
五畳一間に一組の布団が敷かれた程度の部屋は見事なまでに殺風景。窓なんてついてても開くわけにいかないし、テレビもない。
シャワーはというとユニットバスで、これなら努のアパートの方が上等だ。
「入ってきたってことは……そういう事だよね……シャワー浴びてきなさいよ。私汗臭いのやだし」
んーん、お仕事ご苦労様だもん。そのままでいいよ。
「由香、僕たちはまだ……」
「いいじゃない、キスもしたしフェラだってハグだって、それにお泊りだってさ、してるんだし」
「それでも僕は……」
「教師? ならそのズボンの下の大きいのはなによ? オチンチン大きくして何が教師? 性教育でもしてくれるの?」
愛してよ。お願いだよ。じゃないと私、もう、気持ちが死にそうだよ。
「僕の専門じゃない」
「そうよね、恋愛は紅葉さんに教わってるんだもの。やっぱり今日のこともメールするの? したら? 今変なオンナが切れてホテルにいます。抱くべきでしょうか? ってさ」
抱いてよ。いいでしょ? ここまできたんだもの。私貴方のこと好きだし、貴方だって愛してくれるでしょ? 期待してもいいでしょ?
「聞いてくれよ……」
「そればっかり! 貴方はどうして態度で示さないのよ!」
「うるさい口だな……」
彼はウザそうに目を細めて私におおかぶさり……ああ、また、抱きしめてもらえるの……。
「ん、んちゅう……ん、うむ……うふん……」
私は彼がその気になってくれるよう、すぐさま男の部分を探る。
さっきからずっとカチコチになってたそれはズボン越しにも充分熱くなってる。だからあんまり触ってあげないの。だって、すぐに出たらつまらないでしょ?
「由香、ダメだ……」
なのに彼、私の手を力任せに捻り上げるの。やめてよ、そんなにしたらいたいよ。ねえ、気持ちよくなろうよ、そのほうがいいよ。
「由香、聞いてくれ。ずっといえなかったけど、ずっと誤解してるみたいだけど、紅葉は僕の……」
「恋人は私なの!」
今度は私からキス。
前歯がちょっとぶつかってカチっていったけど、でも私、キスしたいの。
だって、だって、もう時間ないじゃない。彼女が彼の心に戻ってくるの、もうすぐだよ?
「ん、んぅ……はむ……んぅ……」
私だってキス下手かもしれないけど、でも、がんばるもん。努のために……? んーん、自分の為! 絶対、負けない、いい女になんかなれないけど、でも、それでも貴方に尽くして、気持ちよくさせてあげたい! そして、お願い! 私を……。
「ん、んぅ、はぁはぁ……、僕の恋人は君だけだ。僕が心から愛するのは君だけだよ。由香。だから聞いてくれよ。君は誤解してる。紅葉は大切な人だけど……」
彼は言葉を溜めたあと、私の唇を手で抑える。
やめてよ! そんな話聞きたくない!
私の気持ちはフガフガ言うだけで言葉にならない。
「彼女は僕の……」
ゆっくり動く努の唇は物語を全て泡に帰す崩壊のそれ。
「従姉妹なんだ。歳は離れてるけど、大切な従姉妹なんだよ」
「ふぃふぉご?」
言えてなかった。全然。
続く
「順序? なに? 映画見てごはん食べて結婚式ごっこして別のオンナによく出来ましたって誉めてもらうこと?」
「違うよ。どうしてそんなに僕を困らせるんだ」
「貴方が私を苦しめるからじゃない」
「僕がいつ?」
「昨日だって、幸せな気持ちにさせてくれたくせに、すぐに地獄におとしてくれたもん」
「僕が抱かなかったから?」
「自惚れないでよ。キスも満足に出来ない男が女を満足させられるわけないでしょ! 貴方が、私との思い出を他の人に……言うから……」
「それは、ゴメン。僕が軽率だった」
「赦せないもん」
「でも補いたい。君の心を傷つけた分だけ」
「なら、一緒に来てよ」
「由香……」
もう振り向かない。これで来ないなら私の恋はおしまい。
美奈子でも恵でも里奈だって、それこそホーケー野朗にアナルの処女を捧げても寂しさを紛らわせる。
あはは、涙も出ないよ。
なんか惨めとか哀れとかそういうの、全然追いつかないもん。
でも……、
スモークガラスの自動ドアが緩慢に開くとき、彼が頭を掻きながらやってきたのがせめてもの救いかしら?
**
「ここがラブホテルか。なんか思ったところと違うな……」
五畳一間に一組の布団が敷かれた程度の部屋は見事なまでに殺風景。窓なんてついてても開くわけにいかないし、テレビもない。
シャワーはというとユニットバスで、これなら努のアパートの方が上等だ。
「入ってきたってことは……そういう事だよね……シャワー浴びてきなさいよ。私汗臭いのやだし」
んーん、お仕事ご苦労様だもん。そのままでいいよ。
「由香、僕たちはまだ……」
「いいじゃない、キスもしたしフェラだってハグだって、それにお泊りだってさ、してるんだし」
「それでも僕は……」
「教師? ならそのズボンの下の大きいのはなによ? オチンチン大きくして何が教師? 性教育でもしてくれるの?」
愛してよ。お願いだよ。じゃないと私、もう、気持ちが死にそうだよ。
「僕の専門じゃない」
「そうよね、恋愛は紅葉さんに教わってるんだもの。やっぱり今日のこともメールするの? したら? 今変なオンナが切れてホテルにいます。抱くべきでしょうか? ってさ」
抱いてよ。いいでしょ? ここまできたんだもの。私貴方のこと好きだし、貴方だって愛してくれるでしょ? 期待してもいいでしょ?
「聞いてくれよ……」
「そればっかり! 貴方はどうして態度で示さないのよ!」
「うるさい口だな……」
彼はウザそうに目を細めて私におおかぶさり……ああ、また、抱きしめてもらえるの……。
「ん、んちゅう……ん、うむ……うふん……」
私は彼がその気になってくれるよう、すぐさま男の部分を探る。
さっきからずっとカチコチになってたそれはズボン越しにも充分熱くなってる。だからあんまり触ってあげないの。だって、すぐに出たらつまらないでしょ?
「由香、ダメだ……」
なのに彼、私の手を力任せに捻り上げるの。やめてよ、そんなにしたらいたいよ。ねえ、気持ちよくなろうよ、そのほうがいいよ。
「由香、聞いてくれ。ずっといえなかったけど、ずっと誤解してるみたいだけど、紅葉は僕の……」
「恋人は私なの!」
今度は私からキス。
前歯がちょっとぶつかってカチっていったけど、でも私、キスしたいの。
だって、だって、もう時間ないじゃない。彼女が彼の心に戻ってくるの、もうすぐだよ?
「ん、んぅ……はむ……んぅ……」
私だってキス下手かもしれないけど、でも、がんばるもん。努のために……? んーん、自分の為! 絶対、負けない、いい女になんかなれないけど、でも、それでも貴方に尽くして、気持ちよくさせてあげたい! そして、お願い! 私を……。
「ん、んぅ、はぁはぁ……、僕の恋人は君だけだ。僕が心から愛するのは君だけだよ。由香。だから聞いてくれよ。君は誤解してる。紅葉は大切な人だけど……」
彼は言葉を溜めたあと、私の唇を手で抑える。
やめてよ! そんな話聞きたくない!
私の気持ちはフガフガ言うだけで言葉にならない。
「彼女は僕の……」
ゆっくり動く努の唇は物語を全て泡に帰す崩壊のそれ。
「従姉妹なんだ。歳は離れてるけど、大切な従姉妹なんだよ」
「ふぃふぉご?」
言えてなかった。全然。
続く