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……タイッ!?_61

存在意義

「優がいないんだ。今朝一緒に図書館で勉強したあとさ、浴衣に着替えてくるっていって、そのあと、電話も通じなくて……」

 早口でまくし立てる稔におされ気味の紀夫はただ頷くばかり。

「そんでおばさんに聞いたんだけど、やっぱりいないって、だから、まさか」
「落ち着けよ。そんな、何もないさ。別に……」

 はたしてそうだろうか?
 頭によぎるのは彼らの蛮行。五月の頃から一切改善される理由などなく、そのきっかけもない。

「悟……」
「え?」
「あいつ見なかったか?」
「いや、ヨーヨー屋には来なかったけど」

 高校生になって水ヨーヨーを買うのはカップルぐらい。もしくは罰ゲームだろうか? とにかく紀夫も彼を見ていないのが事実。
 ただの偶然といえばそうもなる。祭りの夜となれば門限もゆるくなるのだし、気の合う仲間と一緒に繁華街へ行くのもよくある話。
 だが優が稔に何も言わずに行方をくらますのは?
 彼らと付き合いのない紀夫でもわかる。

「わり、俺探してくるわ」
「あ、うん。えっと、綾さんや理恵さんに美奈子先輩、キャプテンたちも探してくれてるから、だから」
「? そうなのか? とにかく悪いな。何かわかったら電話くれよ」

 稔は急ぐあまり紀夫に携帯を告げずに走り出す。

「……もしかして? いや、まさか……」

 紀夫が彼を止められなかったのは脳裏で渦巻く困惑のせい。
 自分は何故女子陸上部のマネージャーになったのか?
 それは一人泣いてる女子を守りたかったから?

 ――そうじゃない。俺は、陸上部を……守るんだった。

 幸せな不幸に酔いしれる彼を奈落に突き落とす、そんな後悔が一つ……。

**――**

「先輩! 優さんが、稔君も、探して、いないからって、だから、連絡……」
「ちょっと、落ち着きなよ。何があったのよ?」
「だから、俺、いかないと、ウォーリー、探して、じゃないと、悟……」

 プールを畳んでいた紅葉のもとへと汗びっしょりの紀夫がやってくる。
 息を切らせる彼に紅葉は呑みかけのジュースを渡して一息つかせ、片言の日本語を要約していた。

「なんで? 優ちゃんがいないの? どうしたんだろ、いつも一緒のくせに……」

 情けないと思いつつもひとまず紅葉に相談して意見を求める紀夫。彼女も予想外の出来事に困惑気味の様子。

「もしかして悟達」
「悟達ねえ……、ん~やばいかもね。あの子たち、君と違って灰色の青春だしね」

 どちらかというと青臭い、黄ばんだ青春ではないかと突っ込みたくなる紀夫だが、今はそれどこれでもないと言葉を飲み込む。

「俺も探してきます。何かわかったら連絡ください」
「ん、待って、私も一緒にいくわ。君だけじゃ頼りないし」
「そうですか? まあ、お願いします」

 むっとしながらも紅葉に同伴してもらうことにする紀夫だった。

続く

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