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……タイッ!?_65

ツケ

「サトチン、大丈夫か? カズさんも……、ついでに、えっとそうだ、マネージャーだっけ? お前立てるか?」
「う、うぅ」

 体格の割りに温厚な真吾は倒れている友人を見て回る。
 和也は鼻血が止まったらしくティッシュで鼻の周りを拭き、紀夫も肩を貸してもらいながら立ち上がる。
 稔の渾身の一撃を食らった悟だけはまだ恍惚にあるらしく、たまにうめき声がきこえる程度。

「まったく、あんた人殴って骨折るってバカじゃないの?」

 興奮冷めて痛み出す右手は外灯の明かりに赤紫を見せた。

「そりゃないっすよ、先輩。俺だって必死だったんだし……、そうだ、優は? おい、優、怪我は? なんか酷いことされなかったか?」

 自分の骨折もかえりみずまだ呆けたままの優の隣に駆け寄る稔。

「だいじょぶ。ちょっと浴衣よごれちゃったけど、平気。それに、三人からはなにもされてない」
「そっか、よかった。俺さ、お前の姿見えないからすっごい心配してたんだぞ? どうして連絡くれないんだよ」

 痛む右手をかばい、左手で彼女の髪をなでようとする稔。

「やめて!」

 けれどそれは優本人に払いのけられる。

「優?」
「私、ひどいことされてたっぽい」
「え、誰に」
「……稔……に」

 うつむく彼女と目を見開く稔。
 しばし時が凍りつくも、それもまた当然の流れ。

**

「あ、あのさ、優ちゃん。そりゃあねえ、稔がしたことはキモイよ? でも年頃の子って結構そういうとこあるし、ほら、マネージャーもしたことあるでしょ?」
「しませんよ!」

 無茶なフリに即座に否定するも蹴られた背中に響くのか「いてて」とつぶやく紀夫。

「してないって……、マネージャーはしてないって言ってるけど」

 目の前で立ち尽くす幼馴染。お互い目を背け、それでも離れようとしない。

「でもさ、逆に考えなよ。稔は優ちゃんのだけでしてたんだよ? 優ちゃんが好きだから、ほら、他の奴にとられるのいやだからじゃない? どうせ変なことされるなら、むしろ俺がってさ」
「キモイことに変わりありません」
「そうだけど、これはまだ許せるキモさだってば」

 フォローしているのか泥沼に引き込もうとしているのか? そもそも懸案事項がことだけに、言葉の選択肢も少ない。

「許せないもん。だって、稔が、そんなこと、ちがうじゃん! 違うもん! そんなのだめなんだってばぁ!」

 最初はゆっくり、徐々に早く。最後は絶叫のスタッカート。
 そして季節はずれの大雨。
 誰も傘などなく、ただ沈んでいく祭りの夜の裏の出来事……。

**

「えっと努? うん、私。えと、来てるの? へー……、そりゃオアツイことで」

 携帯を取り出した紅葉は車呼ぶといって誰かに連絡をいれる。

「しょうがないでしょ。うん、だって、それにあんた教師でしょ? かわいい……ってことは絶対ないけど、教え子が怪我してんだからさ、もしなんかあったらアンタも説明責任とらされるんじゃないの? そしたら困るでしょ? 卒業後? すぐにするつもりなんでしょ? やっぱり点数稼いでおいたほうがいいと思うよ? ん? そう? そう! よかった。悪いわね。うん、未来の従姉妹殿にはよろしく言っておいて。そんじゃねー」

 上から目線で一方的に告げるとパタンと携帯を閉じ、紀夫の方へと振り返る。

「んと、マネージャーは大丈夫?」
「え? あ、はい。もう、別にどこも痛くないです」
「悟は……無理ね。それに稔も、そっちのでかいのは?」
「血は止まったみたいっす」

 体育会系な真吾は妙に礼儀正しく答え、まだうなったままの悟の頭を濡れたハンカチで冷やしている。
 和也は体育すわりをしながらときおり「くそ」と悪態をつくだけで特に問題も名下げに見える。

「一応みんな病院にいってきなよ。マネージャーは乗れないけど、明日ちゃんと行きなよ?」
「はい」

 頷くも心ここにあらず。
 下世話とわかっていながらも、稔たちの行方が気になってしまう紀夫は視線の端で二人を見る。

 稔も優も何も言わず、なのに離れず、互いに打開策となる言葉、もしくは落としどころを探っているようにも見える。
 傍からみれば恋人同士といえる二人の湿った亀裂は他人の介入など許さず、当の二人にもどうしてよいのかわからない咎となって肩に乗る。

「先輩、あの二人」
「無理無理。っていうか、アイツも悪いんだし、やっぱね」
「まあそうですけど、でもなんかかわいそうです」

 窮地を救ってもらった手前、稔には同情的になる紀夫。真吾からより詳しい話を聞いた今ではうつむく和也への警戒心も薄れていた。

「罪は罪。しっかりと罰を受けないといけないの。稔も、覚悟をしておくべきよ」

 そしてもうひとつ気になったのは、どうして紅葉がそれを知っているのか? それは彼女が稔と親しいことからある程度推測をつけるべきだろうと、紀夫は口をつぐんだ。

 そう、彼には背中の痛みをおしてでもすべきことがある。

 もう一人、今一人でいる彼女を探すこと……。

続く

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