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跪かせタイッ!?_01

気持ちのシミ

――ただいま、録音を一件お預かりしています――

『優、いまさらだけど、ほんとごめん。見損なうよな。でも、俺……、はは、言い訳しても始まらないか。その、たまには……明日も電話していいか? お前の声が聞きたいからさ』
 水色の携帯はスライド式。最初は便利だと思っていたが、厚さのせいでお気に入りのショートパンツには目立ってしまう。かといってバックに入れておくと、肝心なときに使えない。

 ――次は薄型にしてもらおう。

 締め切った部屋、桃色のカーテンから差し込む西日を受けながら、樋口優はベッドに寝そべる。
 電話の主に雨の激しい季節に買ってもらったアヒルのぬいぐるみを持ち上げ、「がーがー」と鳴き声をまねすることしばし。
 初夏のころまでは毎晩抱いて眠っていたせいで、白いはずの羽もうっすらと黄ばんでいる。

「僕はみにくいアヒルの子だぞ。がーがー」

 夏休みも終わり、少しずつ恋しくなるころだが、なぜか抱きしめる気になれない。
 かといって捨てることなど考えたことも無い。
 ではなぜ悩むのか?

 理由は彼の隠れた自慰のせい。

 ――もう、稔のヘンタイ!

 優はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめると、少し前までの楽しい日々に浸ろうと目を閉じた。

*―*

 繋がらない電話というのは困り者。留守電に切り替わるのがせめてもの救いだが、求めているのは言葉を伝えるのではなく、その声を聞きたいということ。

 ――俺ってバカだな。ほんと。バカだよな。

 夏なのに締め切った窓。青い、厚いカーテンを開けばおそらく見えるピンクのカーテンで締め切られた窓。その気になれば屋根伝いにでもいける距離をわざわざ電話を通すのはどうしてか?
 市川稔は一人、そのことで悩んでいた。

*―*

*―*

 時をさかのぼること、しばし。

 陸上のトレーニングで疲れていた彼らにのしかかる女子陸上部の雑用。
 手を上げるわけにもいかず、かといって断ればどんなうわさを立てられるのか? そんな理不尽な弱みに付け込まれ、日々時間外労働にいそしむ男子陸上部。
 そんなある日、田辺悟がある思い付きをした。
 それは暗い遊び。
 女子の使用したものを使って気持ちを諫めるということ。
 ようは自分を慰める行為。

 オナニーだった。

 相模原高校は最近まで女子高であったため、男女比率が一対四を誇っている。
 男子は数に圧される格好で虐げられ、たまにプレイボーイを気取るものもいるが、それは例外に過ぎない。
 大半の男子は教室の隅っこにあつまり、他愛の無いおしゃべりをしつつ、彼女らの機嫌を損なわぬようにしていた。
 羊を装い、波風を立てない。
 そんな学校生活。

 しかし、年頃の女子の放つフェロモンは男子には耐え難く、日々悶々とした気持ちを鬱屈させていく。
 それが耐えられなくなった男子の何人かは意中の人を無理にでも作り、三日で作り上げた気持ちを告白していた。
 その結果はさまざまだが、小さな小競り合い程度で済む。
 そんな青春生活。

「稔。部活行こう!」

 五月の連休が終わりを告げたあとのどこか活気の無い教室に、優の元気の良い声が響く。

「はいはい、恥ずかしいから大きな声出すなよ」
「何言ってるんだ! 元気だせ! 元気! 昔の人は言ったよ? 元気があれば何でもできるってさ!」

 往年のプロレスラーのようなことを言う優は、あごをしゃくれさせて水平に手刀をする。

「おいおい、それじゃいろいろごちゃまぜだよ。ほら、いくぞ」
「はーい」

 まるで猫の子のように彼女の襟首をつかむと、稔は教室を出て行った。
 その背後には羨望というべきものを含む、どこかほのぼのとした視線があるが、二人がそれに気づく必要もない。
 入学前からの幼馴染カップル。
 周囲はそう判断していたので……。

*―*

「さてと、今日は何すんだか……。おい優、俺先に着替えるから、出てってくれ……」

 部員と部室の数の都合上、男女共同である陸上部部室は着替えるのも一苦労。女子部員が三人でもいたら男子は全員追い出され、廊下で着替えをすることになる。
 それほど隠すほどのものも無いが、それでも衆人環視のもとで着替えを行うのは恥ずかしいものがある。

「お、おい!」
「ほえ?」

 背後でブラウスに手をかける幼馴染ととぼけた声に驚き、なぜか自分の胸元を抱きしめる格好になる稔。

「お前な、俺が先に着替えるからって、少し待っててくれよ。すぐに出て行くからさ」
「あ、もしかして照れてる?」
「当たり前だろ。そんな、いくらお前でも、女子なんだからさ、恥じらいぐらい持とうぜ? 頼むから」

 どこかずれた感覚の持ち主である彼女にそれを求めるのはこれで六年ぐらいになる。
 幼稚園のころなら母親が注意して、二人仲良く怒られた。小学校なら教師がしっかりと拳骨をくれ、中学ではすでに庇う格好にすらなっていた。

 ブラウスからこぼれるブラは薄い緑色。

「稔のエッチ」

 優はそれを隠そうとせず、見せるようにしている。

「あのなあ、お前の幼児体型を見せられたって嬉しくないよ。つかさ、お前、ブラいらなくね?」
「んー、それは私も困ってるんだよね。なんか大きくなるコツって無い?」
「知るか! んでも、走るならそれぐらいがちょうどいいよ」
「もう、稔にはオトコのロマンってのが無いわね」
「なんでオンナの子な優さんがオトコのロマンを語ってくれるのでしょうか?」

 とにかく着替えないことにはしょうがないといそいそとジャージに着替える稔。このさい多少トランクスを見られたぐらいは目をつぶる。自分も彼女のブラを見たのだし。

「へー、結構稔の脚、鍛えられてるね。なんかセクシーだわさ」
「毎日一緒に走ってるんだから当たり前だろ?」

 褒められるのは妙な気分。しかし、スカートから見える優のふくらはぎは柔らかそうで特に筋肉もついていないように見える。そこらへんは男女の差なのだろうと頷きつつ、ジャージ片手に部室を出る。

「んじゃな、外で待ってるぞ」
「あ、ん、わかった」

 陸上部の練習といってもほとんど自主トレーニングに過ぎないことを大半の部員は知っている。顧問が家庭科の教師であることもそうだが、バイトや勉強があり、本気で打ち込めるほどではなく、放課後の軽い運動レベルに捉えている部員が多い。
 もちろん、インターハイを目指している部員も居るが、それらはごく少数でしかない。
 優と稔がどちらかといえば、半端組みだろう。二人は大学進学を希望しており、陸上部を選んだのは中学のころから続けていたことと、二人が一緒にいやすいからでしかない。

「あ、ねえ稔!」
「ん、なんだ?」
「これ、どうかな?」

 どうせくだらないと思いつつも、無視するとあとで駄々をこねられる。

「なにが? 入るぞ?」

 ドア一枚隔ててみることもできないと一応ノックをしてからドアを開ける。
 そして飛び込んでくるのは赤と白のストライプの三角形を股間に抱く女子が一人。上はしっかりとジャージを羽織っているところが妙に気持ちをそそる。

「ねえ、かわいいと思わない? このリボンとかさ」

 柔らかそうな太ももに痕をつける紐のような部分につくリボンはたしかにかわいらしい。が、十六の男子にとってはかなりきつい。

「すまん、俺、おなか痛いから先に走ってるよ!」
「おなかいたいなら保健室だよー」

 今にも股間がはちきれそうになるのを抑え、稔は部室のドアを丁寧に閉め、グラウンドへと駆け出した。

*―*

*―*

「お疲れ様。それじゃああとよろしくね」
「はい、わかりました」

 陸上部のキャプテン梨本久恵は部活日誌を書き終えると、そのまま帰り支度を始める。
 しかし、男子はすぐに帰ることができない。外に出しっぱなしの高飛びのマットやハードルを片付けないといけないから。

 女子は出し、男子はしまう。
 ある意味公平な仕事だが、人数からしてみれば納得のいく話でもない。それでもこれが通るのは、「女の子を遅くまで残したらかわいそうでしょ?」という顧問の一言のせい。

 もっとも……、それを了解するにはそれなりの対価があってのこと……。

**

 いつものようにスパッツを取り、眺め、彼女を思う稔。
 隣では他の部員が誰かを思い、自分を慰めている。

 ――なんでこんなことしてるんだろうな?

 理性ではそう思っていたとして、下半身はびんびんになっており、先っぽから透明な汁がたれて冷たい。

 ――優。悪い、今日だけ、今日だけな?

 いつもと同じように優に心で謝り、身体を誤らせる稔。
 今日は射精までにそう時間はかからないと予想をつける。放課後の部室で見た彼女のパンツ姿。アレはもしかして自分を誘っているのではないだろうか?
 だとしたら、それに応えようとしない自分は卑怯だろう。

 ――優、ごめんな。俺、絶対、お前のこと、きっと抱いて、幸せな気持ちにしてやるからさ。だから、な……。

 妄想の中ではCカップ以上ある優の胸。そして自分より少しだけ低い背丈。抱きしめたとき、少し爪先立ちになってもらえばキスができる理想なサイズ。

 ――優、好きだ! 愛してる。ずっと、一緒に、俺が、俺より、絶対に、だから、あ、あぁ、うっ!

 妄想の中の想い人は顔をゆがめ、彼を抱きしめ、受け入れてくれる。
 陰茎への刺激はゆっくりと、たまに早く、力加減は自由自在。緩やかに上り、そしてもうそろそろという時に思い切り扱く。

「うっ、あ、出るっ!!」

 甘い快感が下半身に訪れる。そして等間隔な反射。そそり立つ鎌首は力強く、先っぽから白い液を垂れ流している。

「稔、お前また優のか? つか、あんなののどこがいんだよ? やべ、ひょっとしてロリコン?」

 悟のからかいの声に冷静になる稔だが、射精後のやるせない気持ちを前に、怒りが沸き立つこともない。

 ――俺のバカ……。

 手にするのは彼女の残骸。せめて白いしみが黄ばまないよう、ふき取るしかないのだから。

続く

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