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跪かせタイッ!?_09

午後の予定は?

 銀幕に映し出されるのは切ない恋の物語。ではなく、町を焼く怪獣にあたふたする恋人たち。確かに困難がある恋愛なのだが、乗り越える次元が違う。それこそ男が戦闘機のパイロットになったところで、お星様になりかねない。それでは悲劇というより喜劇。
 手持ち無沙汰な感をポップコーンを食べることで解消し、たまにコーラを飲む。
 隣では女子高生二人が小中学生に混じってあたふたしており、ある意味うらやましい。

 ――どこを間違えたんだろ。

 優の提案は「自分を紅葉だと思ってデートの予習をしよう」。
 それをバカ正直に紅葉に伝えたところ「練習なんて必要ないよ。私も一緒に行ってあげるから」。
 いったい今日の目的は何なのか?
 おそらくは映画。さもなくば映画。多分映画。なのだろうか?

「わ、え、え、あんなところで……」
「へぇ、なんか新しい手法ね、今までは……」

 スクリーンではようやく物語りも佳境といったところ。背後では食い入る小学生が椅子の背もたれを掴んで揺らしてくる。
 もうあと三十分というのならトイレに隠れているのもいいはず。
 それができないのは、暗闇にまぎれて重なりあう手。

 今日はデートの練習なのだし、それぐらいは平気?

*-*

 映画を見終わったらちょうどお昼。けれど興奮冷めやらぬ二人はまだ余韻に浸っているのか、クレジットが終わったあとも席を立とうとしない。

「おい、行くぞ?」
「んー、ちょっと待ってよ」
「まったく。こんなののどこがいいんだ……いえ、別になんでも、ないです」

 言いかけて言葉を飲み込んだのは、振り返ったと同時に目があった大学生らしき数人のせい。彼らは険しい目つきで稔をにらんでいたので、さすがにこれ以上の愚弄はできなかった。

「ささ、行こうぜ。な、お願いだから、優」
「ええ、だってぇ」
「んー、優ちゃん、私からもお願い。ほら、次のお客さん来る前にね」
「はーい」

 意外にも紅葉は出ることに同意してくれたので、優も素直に頷いてくれた。ただし、帰りの受付ではしかりとパンフレットを購入させられたわけだが。

*-*

「さてお昼はどこで食べましょうか? 先輩は何が食べたいです?」
「んーと、私は軽いものがいいな」
「じゃあハンバーガーでいいですね。よし決まりい!」

 先ほどからずっと上機嫌の優に、稔はどこか渋い顔。

「どうしたの? 稔」
「だって、なんか、せっかくのデートが、台無しなのかなって」
「あら、私のせいだっていうの?」
「いえ、どっちかというと優が……」
「んー、そうね。なんか無理にはしゃいでるって感じもするし」

 目を細めてファーストフード店の列に並ぶ優を見る紅葉。

「んでも、両手に花なんてこと、そうそう無いわよ?」

 ととげのあるほうが一言。本命のであるまだつぼみの彼女は行ったきりで戻ってこないわけで、どうにも扱いづらい。

「まあいいじゃない。私、夕方からバイトあるし、そしたら二人きりだよ? そうねえ、その前にちょっぴり寄り道させてあげるわよ。恋人同士のイベントって奴にさ」
「はぁ、お気遣いにいたみいります」

 どうせまた怪獣の類だろうと、安易な期待もしない稔であった。

*-*

 紅葉につれられて来たのは駅近くのアミューズメントパーク。
 ゲームメーカーが運営する店内は新商品や懐かしいアーケードゲームがあったりと、マニアにはたまらない設備。その一方で飲食店がテナントとして入っており、対象の幅は広くしてあるようだ。

「ね、あれやろ、あ、あっちもいいかも、えっと、どれにしよ」

 嗜好の幼い優はカラフルな店内に興味津々らしく、手当たりしだいにパンフレットを覗いている。

「優ちゃん、楽しそうね」
「ええ、とっても」

 稔の描く恋愛像はどのようなものか?
 自他共に認める普通よりややイケメンの彼。中学の卒業式にはクラスの子から想いを告げられたこともあった。
 結果は今のとおりだが、校門前で待っていた優が帰り道、しばらく手をつないでくれなかったのが印象深かった。
 子供だと思っていた彼女もそれなりに周りを見ているのが嬉しくあったが、強引に出られない自分が情けなかった。
 高校生になったらきっと。
 そんな青臭い理想を抱くも、入学して二ヶ月、彼女は元の彼女に戻り、どこか緊張感がきれていた。
 きっと、これからもこのままだろう。
 五月の連休が終わったころから桃色に染まれない自らの青春に安心とため息をついていた。

「ね、稔。あれやってみよ? えと、ギガ・アミューズメントミステリーっての!」

 結局彼女が選んだのは店内スタンプラリー。狭い店内でオリエンテーリングをしてなにが楽しいのかと疑問に感じる稔。けれど、今さっき受け付けを通ったカップルは男が強引に彼女らしき女の手を引いていたが、自分もそれを見習えたらと思ってしまう。

「ふふ、なにがっくりしてるの? 稔」
「だって先輩」
「君も少しは大人になりなよ」
「だって優は」
「優ちゃん、ああみえてしっかり者だって」
「そうっすか?」
「まあいいわ、っていうか、私も相当のワルだしね」
「え?」

 ふふふと意味深な笑いを浮かべたあと、紅葉はそそくさとゲートをくぐり、優と一緒に地図を見ていた。

 ――なんだってんだか……。

 一人腑に落ちない稔はまたからかわれているのだろうと深く考えるのをやめ、二人の後を追った。

続く

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