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逃げだしタイッ……。

連鎖

 朝の教室は忙しい。朝連の疲れを少しでも取りたいと机に突っ伏す運動部に、課題目当てでクラスの秀才に近寄るお調子者。他にも昨日のドラマは、休みの予定はと会話を弾ませる級友達。


「おっはよー雅美!」
「あ、おはよう。早苗」

 そんな中やってくるのは今年からの友人、木下早苗。

「ねえねえ、来週の試合、雅美も行くんでしょ?」
「……うん。なんで?」
「だってさ、ほら、なんか雅美、隆一君と仲いいじゃん」
「そうかな?」
「そうだよ。だってほら、隆一君、なんか雅美にばっかり試合のこと振るんだもん。頭きちゃう」

 早苗は口やかましくはやし立てる。どちらかというと童顔な彼女はまだ中学生にしか見えない。胸もお尻も雅美より薄く小さく、髪型は少女ちっくな三つ網二つ。
 それでも恋には憧れがあるらしく、ちょうど良くかっこいい隆一のことを四月のころからはやし立てていた。

「ね、やっぱり雅美も隆一君狙ってる?」
「そんなこと、ないよ」

 一方の雅美は恋に奥手なほう。本当は隆一に気があるのだが、なぜか彼を前にして踏み出せず、素直になれなかった。

「じゃあさ、私のこと応援してよ。ね? ね? お願い」
「……うん。わかったよ」

 正直なところ断りたい。けれど、それ以上に心配ごとがある。

 それは昨日の出来事。

 手淫の手伝いとイマラチオ。それはあくまでも約束をしたから。
 けれど、本当にこれで終わりなのだろうか?
 どこかひっかかる気持ちがある。

 ――やだな、部活。

 今すぐにでも退部届けを提出したい。けれど、後藤にそれを伝えれば責任感の強い彼のことだ、理由を聞いてくるのだろう。
 ならば本当のことを話せばいい。
 そうすればきっとやめられる。けれど、人の口に門戸は立てられない。誰かが知れば、さらに別の誰かが知ることになる。

 だから言えない。

 相談すらできない。

 そして、仕返しが怖い。

「ね、どうしたの? 雅美。なんかぼうっとしちゃってさ」
「うん、最近部活で疲れることあって」
「ふーん。大変なんだね」

 訝りながらも早苗もそれなりにお疲れの模様。もうあと五分もすれば始まるホームルームに備え、席に戻ってお休みタイム。
 朝は休むのにも忙しいのだ。

*-*

「雅美ちゃん、飲み物頂戴よ」
「ヒィッ」

 背後からの昇の声に身体を強張らせてしまう雅美。それでも他の部員に気づかれぬよう、勤めて冷静になり、クーラーボックスから二リットルのペットボトルを出す。

「どうぞ、先輩」

 恐る恐る紙コップを差し出すも震えは隠せず、波打つ水面が外へと跳ねだす。

「お、サンキュウ」

 当の昇は意に返すこともなく、それを受け取るとごくごくと飲みこむ。
 腰に手をあて一気飲み。ほかの部員に野次をとばしたり談笑している昇は、昨日とは別人のような態度。もしかしたら昨日のことは夢だったのかもしれないと思い始める雅美。

 しかし、

「雅美ちゃん、今度また休みたいときもいいなよ」

 すれ違いざま、不穏なことを言う彼に雅美はしばし、瞬きを忘れた。

**

 部活が終わるのは大体五時半。そのあとは着替えだなんだといって大体六時に終わる。
 その日も似たようなものだった。

 だから雅美はその時間帯まで道場へと行っていた。

 理由は当然……。

 ――もう居ないよね? うん、大丈夫。

 もう二度と足を踏み入れたくないのだが、変化に気づかれることが一番危険だと、雅美は冷静を装っていた。

 ――あーあ、散らかして。片付ける身にもなってよね。ほんと。

 手近にあった箒を手に、簡単に部室を掃く。もっともちりとりが見当たらないので、ごみを壁際に寄せただけにしかならない。

 ――さあさ、帰ろ帰ろ。

 自然を装うもおのずと動作が速くなる。
 よく見ればロッカーの小脇に青色のプラスチックのちりとりがある。けれど無視。
 ジャージの上着を脱いでハンガーに干そうとするが、どうしてかうまくいかない。何度も肩がはずれ、情けない前傾姿勢をするジャージ。

 ――なにしてるのよ、あほらし。さ、て、と、早く、しないと……。

 焦る気持ちがズボンの結び目を解かせてくれない。何度も失敗し、逆に硬結びにしてしまい、余計に焦る。

「もう、こんなときに、あたしは忙しいの!」

 思わず声に出すも、スケジュールは白紙。そして……、

「マネージャー、忙しいんだ」

 聞きなれない声に振り返ると、窓がガラガラと開き、短髪頭の男子が顔を見せる。

 ――誰だっけ? 知らない。っていうか、転校生?

 数日というほども経っていないものの、一学年だけで数百人と居る山陽高校では転校生の一人、よっぽどのことがない限り覚えているはずもない。

「え、えと、田辺君だっけ? あのさ、あたし今から着替えるから、そこ閉めてくれない?」

 Tシャツならきっとブラが透けているだろう。確か今日は黄色いブラだったから、かすかに見えるはず。

「ああ、悪い悪い。気がつかなかった」

 そういうと悟は窓を閉め、その後走り去る音が聞こえた。

 ――ふう、驚いた。

 妙な緊張のせいで詰まっていた息を大きく吐き出す。
 少し落ち着いたのだろうか、結び目も解けするするとジャージが落ち、そのままスパッツのみになる。

 ――なんか変な汗かいちゃったみたい。

 いつもならスカートとスパッツを併用している。どうせ帰り道なのだし、おしゃれと相談する必要も無いのだと言い聞かせて。

 けれど、今日は着ていたくなかった。

 スカートを履いてからにすればよいものを、なぜか強行な気持ちが先走り、スパッツを脱ぎ捨て、ブラとおそろいの黄色いショーツ姿を見せる。

 ――あたし、何してるんだろ?

 冷静を装う自分といらだつ自分。そのどちらに従えばよいのか、そのどちらかが主導権を握ってくれたらどんなに楽なのかと思いつつ、ロッカーからスカートを取り出す。

「おーっす」

 その途端、急に部室のドアが開き、現れるは先ほどの覗きをしていた部員、悟だ。

「な、田辺君、今着替えてるって言ったじゃない。なんで入ってくるのよ!」

 驚き、戸惑い、怒り、羞恥の混じる雅美とは打って変わって悟は楽しそうに笑っている。

「へえ、マネージャー、かわいい下着なんだ」

 シャツを引っ張り、下着を隠す。けれどその分だけ別の角度がお留守になり、お尻のほうの柔らかそうな部分が見られてしまう。

「や、ちょっと見ないでよ。出てって、後藤先生に言うわよ!」

 教師というよりも格闘家というほうが近い彼の名前を出せばと思うも、転校生の彼にどこまでそれが効くのだろうか? そして、彼もまた余裕綽々の顔だが……、

「俺の方こそ後藤先生に言うよ?」
「……な、なにを言うのよ」

 予想外の反論に言葉が続かない雅美。

「神聖な部室で先輩のチンコをおいしそうにしゃぶってた。しかもザーメン飲んでたし」
「な! そんなことしてない! するわけないじゃん!」

 一瞬で身体が熱くなる。歪曲されてはいるものの、ある程度は事実を含み、かつ、思い出したくない事柄。しかし、それよりも気になったのは、どうして悟がそれを知っているのかということ。
 昇には口止めをしなかった。もっとも、したところで意味もない。
 だが、証拠はどうだろうか?

「そんなことしてないもん。証拠でもあるの? 私がそんなヘンタイみたいなことした証拠……」

 あの日、昇が何かカメラや録音機器をいじった様子は無い。

「証拠ねえ。証拠かあ」
「ないじゃん。ならそんな変なこといわないでよね。頭くる」

 もったいぶる悟にそれみたことかと口早にまくし立て、その隙にスカートを履こうとする。

「おっとだめだ」

 しかし、阻まれる。

「離してよ」

 さすがに運動部の男子だけあって、つかまれた右手は少し痛い。

「黙れっ!!」

「ひぃ、ごめんなさい」

 悟の怒声にへたりこむ雅美。その動作で、この場の力関係が決まったようなもの。
 満足そうに彼女を見下ろすその視線に、雅美がまだ気づいていないのは不幸なこと……。

続く

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