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逃げ出しタイッ……。_12

胸騒ぎ

 いつもより早い朝、朝食は食べる気持ちになれなかったので抜いた。
 それでも淹れたてのコーヒーの香りには逆らえず、カフェオレだけは飲む。
 前髪のチェックもそこそこに家を出る。


 何故だろうか?

 妙に心躍るものがあったから。

 けれど、どこに?

 そんな疑問も入る余地がなく、雅美は通学路を急いでいた。

**

 教室に着けばいつもの顔ぶれの他愛のない会話があふれている。

 ……はずだった。

 雅美が階段を上がる途中、雷鳴のような女子の悲鳴と、あらぶる男子の声。

 ――何? なにかあったの?

 一段飛ばしで駆け上がり、騒ぎのもとへと向かう雅美。

 騒ぎのもとは一年E組。
 男子二人が組み合い……というよりは一人が一方的にもう一人を殴りつけている様子。

 ――ウソ、隆一君が!?

 しかも、暴力を振るっているのが、クラスメートの隆一。

 ――じゃあ、相手は?

 いがぐり頭の男子の顔は何度か殴られているせいか、ところどころ赤く腫れ上がっているが、見覚えがある。

 ――田辺。

「ちょっと、やめなよ……」
「おい、リュウ……」

 取り巻く生徒たちはあまりの出来事に動けずにいる。
 そもそも、なぜ二人が?
 見守る一同はみな同じ気持ちでいた。

「お前は、お前は!」

 真っ赤になっている隆一の額に赤い筋が見えた。押し返そうとする悟の手の爪が引掻いたらしく、血が流れでている。

「うっせえ、童貞やろうが! 俺にさわんじゃねー」

 組み伏せられる格好の悟は腕力では敵わずとみて、口撃で応戦する。

「黙れ!」

 右の拳が悟の顎を揺らし、「ぐぅ……」といううめき声を最後に沈黙する。

「お、おい、リュウ、もう、そのぐらいでいいだろ?」

 悟が抵抗しないところを見て、男子の一人が隆一の肩に触れる。

「うっせー、俺は! こいつだけは! ゆるせねーんだ!」

 そしてもう一撃。
 すでに意識もうつろな悟は何も言わず、ただ殴られるだけ。

「お、おい! やめろ、つかやべーって!」

 男子は言葉で諭すのをやめ、強引に羽交い絞めにする。けれど隆一はまだ殴り足りないのか、それを解こうと必死に身体を動かす。

「どうしたんだよ。お前らしくねーぞ? なあ、りゅう、何があったんだよ」
「こいつが! こいつが!」

 床に仰向けでうなる悟に敵意むき出しの隆一。
 普段の穏やかな様子も、試合中の真剣な様子もなく、ただの暴漢……。

「いや、隆一君が……、嫌だ……」

 想い人の鬼のような表情、残虐な所業を目にし、雅美はへたへたとその場に座り込む。

「ま、雅美……ちゃん」

 か細い声に気づいたらしく、隆一は彼女のほうを見る。
 一瞬目を丸くして、そして、悪鬼がおちたように呆けたあと、何か悔しそうにして男子を振り切る。

「あ、おい、りゅう!」

 不意を突かれた男子はしりもちをつくが、教室を走り去る隆一よりも鼻血を噴出す男子の方が優先事項と、「誰か白鳥呼んできて」と養護教諭の名を叫んだ。

続く

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