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逃げ出しタイッ……。_14

逃げ出して……。

「いや、いやだぁ……」

 泣きじゃくる雅美は唯一の同性、白鳥に泣きつき、白衣に顔をうずめる。
「宮川さん、辛かったろうね」

 唯一の女性である白鳥は彼女の髪を撫で、後藤に視線を送る。

「宮川、すまない」

 かといって出てくる言葉はいまさらの謝罪。そもそも、実行犯でもない者の言葉など、何の慰めにもならない。

「……なんで、みんな、んぐ、知ってるの? どうして?」

 赤い目でちらりと後藤を見る雅美。そしてすぐに白鳥に抱きつく。

「それは、だな。先週の部活で、島崎の調子がおかしくて、試合前だってのに、サボるんで、ちょっと聞いてみたんだ。そしたら、まあ、ぽつぽつと話だして……」
「ごめん。俺、マネージャーに酷いことして、家に帰っても、罪悪感、感じちゃって、怖くて、でも、親に言えなくて、だから、眠れなくて、試合どころじゃなかった。全部、悪いのは、わかってるけど、けど、怖くて。後藤先生に、聞かれたとき、終わったと思って、だから、全部話して、俺だけ、楽になりたくなったんだ……」

 後藤に促されて達郎が告白する。
 先週の部活はどうだったろうか?
 特に記憶にない。
 達郎どころではなかったというのが、雅美の正直な気持ち。
 もちろん、彼にされたことを全て許せるかといえば、それも違うが、もし忘れられるのなら、そのまま封印してしまいたい記憶。

 しかし、白日のもとに晒された。
 どのようなルートで広まったのかはまだ不明だが、原因の一端は達郎の自白にある。

「酷い、自分ばっかり、苦しいのは、一番苦しいのは私なのに! あんたなんて最低よ。くずだわ! このくず男!」
「宮川さん」

 抑えられない気持ちは攻撃的になり、うなだれ、視線を空にさまよわせる少年へと向けられる。

「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」

 ひとつ年上の男は小学生のように泣きじゃくり、何度も頭を床に叩きつける。それに見かねた井上が彼を制するが、怒りにくれる雅美にしてみれば、そのまま……。

「どうなるの? 私。どうして、どうして先生たち、知ってるの?」
「それは田辺が、その映像を学校に持ってきて……」
「まさか、みんな知ってるの!?」

 クラスの隅っこで行われる上映会。
 自らのあられもない姿。
 精子をかけられ、それを嚥下するようす。
 ときに自ら腰を振り、男を絶頂に導く、浅ましく、娼婦のような自分。

「酷いです、もう、私、学校に行けないよ……」

 考えれば考えるほど、気持ちを追い詰められる。
 今身近に居る誰かにそれを知られなければ、大切な気持ちの先にいるあの人にそれを知られなければ……。

「おい、山形、お前もなにか言うべきことがあるだろ?」

 沈黙する数十秒、取り返しのつくことなど何一つなく、それでも張本人からの弁が無いと、後藤が昇にも水を向ける。

「ごめんなさい。その、俺ら、軽い気持ちで……」
「軽い気持ちって、あんた、犯罪なのよ? なんで、そんな、馬鹿な……」
「だって、マネージャーだって、まんざらじゃなかったじゃん」
「なに、言ってるのよ、私、もう、お前らのせいで、学校どころか、町歩くのも、はずかしくって……、う、うぅ、うわぁああああぁん」

 反省の色がどのような色なのかは不明だが、彼のそれは鏡のように自らに降りかかる責任を周囲に反射していくらしい。

「お前なあ、自分のしたことの責任の重さを考えてるのか?」
「すいません」

 動作として頭を下げ、肩がぶつかったときに反射的に出るような謝罪の言葉を発する昇。

「いやだ……、嫌だ嫌だ嫌だ! 私、学校辞める。もう、二度と、嫌だぁぁあああぁっ!」

 三秒と形を留めない土下座も途中に、雅美は白鳥を突き飛ばし、ドアへと走り出す。

「あ、おい、宮川!」

 走り去る彼女は生徒指導室を出ると同時にドアを閉める。背後で扉にぶつかる音がしようが気にせず、授業中の教室を横目に廊下を走り、階段を落下するように降り、それでも靴を履き替えることは忘れず、息が苦しくなるのも忘れて走った。

続く

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