歩道橋を渡って地下鉄へ。地味な茶色の定期入れは来週で中身ごとお払い箱。
プラットホームであくびする人に、携帯電話片手に必至に謝るサラリーマン。
普段より一時間ずらしてのオフピーク通学。
そのせいか、周りを見る余裕があった。
いつもの通学路も今日で見納め。
学校へ行くのはこれで最後。
母が代わりに行く、もしくはついていくときかなかったが、パート先でインフルエンザがはやっているらしく、急遽出勤要請がきた。
それならば日をずらしてと食い下がっていたが、雅美の早く終わらせたいという希望に頷いてくれた。
あの日から変わったこと。
それは、父の帰りが十分少々早くなったことと、夜、なぜかベッドに智美がもぐりこんでくること。
鬱陶しいからやめるように頼んでも、彼女はさびしいからと譲らなかった。
最初、気を遣われるのが嫌だった。
もう自分は大丈夫。
だから気にしないでほしい。
そう願っていたのだから、家族の暖かい行為も、どこかとげとげしく対応してしまう。
だから、母を拒んだ。
一番、無理、わがままを言いやすい母に、そのとげが向かっただけのこと。
**
昇降口には誰も居ない。
もう二時限目が始まっている時間であり、当然のこと。
退学届けはすでに提出している。
もう学校に籍はない。
私物は全て生徒指導室にある。
後藤には車で送ると言われたが、断った。
顔色を覗かれながらなんてまっぴらだ。
これ以上、人を腫れ物のように扱うな。
私は、もういいんだ!
そんな空元気を振り回し、生徒指導室に向かった。
**
荷物など、どれもいらない。すくなくともこれからの生活には必要がない。
制服も体操着も、ウインドブレーカーもいらない。
ここから家のゴミ箱に移すだけのこと。
それこそ、焼却炉に捨ててくれたほうがありがたい。
未練もないものだからと、ビニールのゴミ袋にまとめて入れる。
季節をひとつはやめたサンタクロースは相模原市の指定のゴミ袋を背負う。
「……ばっかみたい」
来る必要も無かったと思いながらも、本当は、ひとつ期待するぐらい許されるべき、と打算のあってのこと。
だからこそ、遠回りして昇降口に向かったわけだが……。
続く
そのせいか、周りを見る余裕があった。
いつもの通学路も今日で見納め。
学校へ行くのはこれで最後。
母が代わりに行く、もしくはついていくときかなかったが、パート先でインフルエンザがはやっているらしく、急遽出勤要請がきた。
それならば日をずらしてと食い下がっていたが、雅美の早く終わらせたいという希望に頷いてくれた。
あの日から変わったこと。
それは、父の帰りが十分少々早くなったことと、夜、なぜかベッドに智美がもぐりこんでくること。
鬱陶しいからやめるように頼んでも、彼女はさびしいからと譲らなかった。
最初、気を遣われるのが嫌だった。
もう自分は大丈夫。
だから気にしないでほしい。
そう願っていたのだから、家族の暖かい行為も、どこかとげとげしく対応してしまう。
だから、母を拒んだ。
一番、無理、わがままを言いやすい母に、そのとげが向かっただけのこと。
**
昇降口には誰も居ない。
もう二時限目が始まっている時間であり、当然のこと。
退学届けはすでに提出している。
もう学校に籍はない。
私物は全て生徒指導室にある。
後藤には車で送ると言われたが、断った。
顔色を覗かれながらなんてまっぴらだ。
これ以上、人を腫れ物のように扱うな。
私は、もういいんだ!
そんな空元気を振り回し、生徒指導室に向かった。
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荷物など、どれもいらない。すくなくともこれからの生活には必要がない。
制服も体操着も、ウインドブレーカーもいらない。
ここから家のゴミ箱に移すだけのこと。
それこそ、焼却炉に捨ててくれたほうがありがたい。
未練もないものだからと、ビニールのゴミ袋にまとめて入れる。
季節をひとつはやめたサンタクロースは相模原市の指定のゴミ袋を背負う。
「……ばっかみたい」
来る必要も無かったと思いながらも、本当は、ひとつ期待するぐらい許されるべき、と打算のあってのこと。
だからこそ、遠回りして昇降口に向かったわけだが……。
続く