「いいよ、そんなに重くないし」
「いいって、持たせろよ」
乱暴な言葉と乱暴な態度。
けれど、怖くない。
「ね、授業は?」
「停学」
「不良だ」
「しょうがねえだろ、俺だって馬鹿やったんだから……」
「うん」
隆一は荷物を持つと、そのまま勝手に校舎を出る。
「もしかして、照れてる?」
新しい見送り人に雅美は忙しいと思いつつ、上履きを手に持ってそれを追いかける。
「違うっつうの。たださ」
「だから、なによ」
「後悔するよって、メールが来て」
先ほど似たような言葉を聞いたが、送り元はおそらく共通の知り合い。
「日曜さ、早苗のことふったんだって?」
「ふった? 俺が?」
「うん。隆一君って酷いね」
「俺はそんなこと。だって、雅美ちゃんが……」
「私が?」
「好きだから……って、さっき聞いたんだろ? 早苗の奴、おしゃべりっぽいし」
「うん」
「なんだよ、雅美ちゃんだってやな感じじゃん」
「そだね」
「ああ。けど、やっぱり、雅美ちゃんのことが好きで」
「ふーん」
男子にとっては大切な告白なのだが、すでに耳にしていた女子にはそれほどの感動もないらしい。
「ふーんって、それだけ?」
「うん」
それとも、すでにあきらめの境地に立つためか?
「なんでだよ。俺は、雅美ちゃんのこと!」
「……やっ」
荒々しい声にびくりとする雅美は屈みながら頭を抑える。
それが何を示しているのか、隆一にも理解できた。
「あ、ごめん。怖がらせるつもりじゃないんだ。ただ、本気で、好きだったから、つい、気持ちを否定されたみたいで」
焦る気持ちと、いたわる気持ちのせめぎあい。そのどちらも強く、隆一はどうすべきかわからず、彼女が立ち上がるのを見守る。
「だって私、隆一君と付きあえないよ」
「なんで?」
ショートパンツのほこりを払う彼女は彼を見ない。
「だって、聞いたでしょ? 私のこと」
「そんなの、俺には関係ない。君が、辛い目に遭ったら、好きって言ってもいけないのか?」
雅美を好きだという気持ちが若干強いらしく、抑えられず、そしてそれを恥じる隆一。
「だって、隆一君は……」
「なに?」
けれど、彼女が顔を上げたとき、目をそらさず、その瞳を見つめることで、誠意を示す。
「隆一君」
「雅美ちゃん」
中腰の姿勢にならずとも彼と見詰め合うときは自然と上目遣いになる。
クラスで冗談を言い合うときは端を下げて、試合のときは細く視線を読ませない。
今は、彼は、瞬きを抑えて、自分を射抜く。
彼の手が肩に触れ、抱き寄せてくる。
抗う理由もない。このまま抱きしめられてしまえば、いわゆるハッピーエンド……、
「私のこと、満足させられる?」
など望めない。
「は?」
「ね、いい?」
ブレザーを引っ張り、自分に寄りかからせる。虚を疲れた隆一は彼女にもたれかかるが、雅美の手が向かう先は……。
「お、おい」
彼の気持ちは今、彼女に向いている。けれど、それが恋愛の範囲に留まれず、愛欲へと踏み出し、その下半身が反応を示す。
「あ、硬くなってる。結構小さいね。あの人たちよりも小さい」
「な……」
雅美はキスができそうなくらいに顔を寄せ、目をきょろきょろと動かし始める彼に微笑みかける。
「これさ、いじったりして遊んでるの? それとも、女子マネージャーにしてもらうの?」
「俺は……、そんなこと……」
唐突な彼女の変貌に戸惑う隆一は続く言葉を選べず、小さいと評価された自身に触れる手を拒むように後ずさる。
「童貞?」
校門を出たばかりの道に人気はない。
その気にならずとも女子一人押し返すことなど造作もない。
けれど、できないのは、彼の中にある、彼女ともう少し近い距離にいたい、あわよくば、強く抱きしめたいという希望があってのこと。
「ああ」
「だっさ」
「好きな人と、したいんだ」
雅美を見つめる瞳に曇りはない。そして、その言葉を送られた雅美は一瞬嬉しそうに顔をゆがめ、そしてまた怪しげな微笑に戻る。
「私はできなかった」
「守ってやれなくて、ごめん」
全ての悪夢は密室で行われ、それは彼女の知られたくないという檻の中に忌避されていたこと。
「ね、好きな人としたいってことはさ、私としたいってこと? 隆一君は私が好きで、好きな人と初エッチしたくって、それなら、やっぱ私じゃん」
「そうだけど、そんな投げやりにいうなよ、俺は本気で雅美ちゃんを……」
「ね、してあげようか?」
言葉は聞き流すべき、遮るべき。聞いてはいけない。今からすることの枷になるから。
「雅美?」
十分なサイズになったそれをズボンの上からこすりだす雅美。最初はその形を確かめ、徐々に力強く握り、たまにゆるく、亀頭の辺りをさするように……。
「条件ね、三分、私の責め苦に耐えられたら、ご褒美あげる」
続く
けれど、怖くない。
「ね、授業は?」
「停学」
「不良だ」
「しょうがねえだろ、俺だって馬鹿やったんだから……」
「うん」
隆一は荷物を持つと、そのまま勝手に校舎を出る。
「もしかして、照れてる?」
新しい見送り人に雅美は忙しいと思いつつ、上履きを手に持ってそれを追いかける。
「違うっつうの。たださ」
「だから、なによ」
「後悔するよって、メールが来て」
先ほど似たような言葉を聞いたが、送り元はおそらく共通の知り合い。
「日曜さ、早苗のことふったんだって?」
「ふった? 俺が?」
「うん。隆一君って酷いね」
「俺はそんなこと。だって、雅美ちゃんが……」
「私が?」
「好きだから……って、さっき聞いたんだろ? 早苗の奴、おしゃべりっぽいし」
「うん」
「なんだよ、雅美ちゃんだってやな感じじゃん」
「そだね」
「ああ。けど、やっぱり、雅美ちゃんのことが好きで」
「ふーん」
男子にとっては大切な告白なのだが、すでに耳にしていた女子にはそれほどの感動もないらしい。
「ふーんって、それだけ?」
「うん」
それとも、すでにあきらめの境地に立つためか?
「なんでだよ。俺は、雅美ちゃんのこと!」
「……やっ」
荒々しい声にびくりとする雅美は屈みながら頭を抑える。
それが何を示しているのか、隆一にも理解できた。
「あ、ごめん。怖がらせるつもりじゃないんだ。ただ、本気で、好きだったから、つい、気持ちを否定されたみたいで」
焦る気持ちと、いたわる気持ちのせめぎあい。そのどちらも強く、隆一はどうすべきかわからず、彼女が立ち上がるのを見守る。
「だって私、隆一君と付きあえないよ」
「なんで?」
ショートパンツのほこりを払う彼女は彼を見ない。
「だって、聞いたでしょ? 私のこと」
「そんなの、俺には関係ない。君が、辛い目に遭ったら、好きって言ってもいけないのか?」
雅美を好きだという気持ちが若干強いらしく、抑えられず、そしてそれを恥じる隆一。
「だって、隆一君は……」
「なに?」
けれど、彼女が顔を上げたとき、目をそらさず、その瞳を見つめることで、誠意を示す。
「隆一君」
「雅美ちゃん」
中腰の姿勢にならずとも彼と見詰め合うときは自然と上目遣いになる。
クラスで冗談を言い合うときは端を下げて、試合のときは細く視線を読ませない。
今は、彼は、瞬きを抑えて、自分を射抜く。
彼の手が肩に触れ、抱き寄せてくる。
抗う理由もない。このまま抱きしめられてしまえば、いわゆるハッピーエンド……、
「私のこと、満足させられる?」
など望めない。
「は?」
「ね、いい?」
ブレザーを引っ張り、自分に寄りかからせる。虚を疲れた隆一は彼女にもたれかかるが、雅美の手が向かう先は……。
「お、おい」
彼の気持ちは今、彼女に向いている。けれど、それが恋愛の範囲に留まれず、愛欲へと踏み出し、その下半身が反応を示す。
「あ、硬くなってる。結構小さいね。あの人たちよりも小さい」
「な……」
雅美はキスができそうなくらいに顔を寄せ、目をきょろきょろと動かし始める彼に微笑みかける。
「これさ、いじったりして遊んでるの? それとも、女子マネージャーにしてもらうの?」
「俺は……、そんなこと……」
唐突な彼女の変貌に戸惑う隆一は続く言葉を選べず、小さいと評価された自身に触れる手を拒むように後ずさる。
「童貞?」
校門を出たばかりの道に人気はない。
その気にならずとも女子一人押し返すことなど造作もない。
けれど、できないのは、彼の中にある、彼女ともう少し近い距離にいたい、あわよくば、強く抱きしめたいという希望があってのこと。
「ああ」
「だっさ」
「好きな人と、したいんだ」
雅美を見つめる瞳に曇りはない。そして、その言葉を送られた雅美は一瞬嬉しそうに顔をゆがめ、そしてまた怪しげな微笑に戻る。
「私はできなかった」
「守ってやれなくて、ごめん」
全ての悪夢は密室で行われ、それは彼女の知られたくないという檻の中に忌避されていたこと。
「ね、好きな人としたいってことはさ、私としたいってこと? 隆一君は私が好きで、好きな人と初エッチしたくって、それなら、やっぱ私じゃん」
「そうだけど、そんな投げやりにいうなよ、俺は本気で雅美ちゃんを……」
「ね、してあげようか?」
言葉は聞き流すべき、遮るべき。聞いてはいけない。今からすることの枷になるから。
「雅美?」
十分なサイズになったそれをズボンの上からこすりだす雅美。最初はその形を確かめ、徐々に力強く握り、たまにゆるく、亀頭の辺りをさするように……。
「条件ね、三分、私の責め苦に耐えられたら、ご褒美あげる」
続く