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小説_1

修学旅行の夜に(仮)1

 新幹線の改札を通る濃紺の制服の集団。
 ブレザーの右胸には明峰学園の校章があり、みなリュック、もしくは大きめのバックを持っていた。
 今日から三日間、学校生活最後の思い出作り、修学旅行が行われるからだ。

 行く先こそ日本海の田舎だが、その分宿泊施設と料理は約束したと学年主任が胸を張っていた。

 新幹線で五時間揺られる間、生徒たちは自由に時間をつぶしていた。
~~

 稲城加奈子はプリッツを噛み締めながら、窓の外を見ていた。
 その隣には最近付き合い始めた彼氏、田上健一がいる。
 高校一年から彼とは同じクラスの隣の席。選択科目も一緒で赤点も一緒。
 加奈子自身は吹奏楽部だが、応援に行った先にはやはり彼がいる。

 そのうちに、というか、回りはすでに付き合っていたと思っていたらしく、健一からも「俺たちも付き合って二年くらいかな」と言ってきた。

 学食でそれを聞いたとき、素うどんを吹いてしまった。
 驚く彼に、驚いたのはむしろ自分で、私たちは付き合っていないでしょ? と聞きなおした。
 そしたら健一に言われたのだ。

『なら、付き合おう』

 と。

 それに加奈子がどうこたえたかというと、

『うん、わかった』

 と。

 晴れて恋人同士になった二人に、周囲はいまさらとばかりに祝福もなし。
 加奈子はそれが不満だった。

「なあ、俺にも一本ちょうだい」
「やーだ」

 彼から伸びた手をパチンとはたき、プリッツを強引に口に運ぶ。
 ぽりぽりぽりぽり……。
 みるみるうちに短くなるプリッツに、彼はさびそうに「ああ」とつぶやくだけ。

 なんとなく実感がわかない。
 近すぎるというほどでもないが、一応、お互いが何を考えているのかはわかる。
 そういう意味での相性は悪くない。この前の初デートは十分に楽しかった。

 けれど足りない。
 どきどきする気持ちが。

 彼はイケているのか?
 背は高い。バスケ部のエースで、フルスタメンでも平気なぐらい体力もある。
 勉強は? 赤点もあるけど、入試に必須な科目は全て四以上。
 人柄は? 格好は悪くない程度。ただ、試合中は黄色い歓声が飛び交うぐらいの実力者。クラスでも誰とでも気さくに語り合う感じで、それがたまに彼女をいらだたせる。

 いわゆるイケメンに属する。

 ただし、飛びぬけてはいない。

 そして、ちょっぴり鈍い程度。

~~

 初日は移動と周辺の観光地をバスで見て回る程度。
 買い物をする時間はないが、干物を買うつもりもなく、みな珍しそうに冷やかすだけ。

 そして自社仏閣をめぐり、ありがたいお経を聞いたらバスに戻って安眠タイム。
 今日はゆっくり休み、明日の自由行動が本番……だが、寝る前ぐらいは羽目をはずして遊びたい。
 そのための休憩なのだ。

~~

 老舗というほどでもなく、新しくもない旅館「白鷺」。
 部屋ひとつひとつは八畳程度だが、ここに五、六人寝るのは意外と窮屈。
 お風呂はというと、近所の温泉施設よりも設備が乏しい。

 大半の生徒ががっかりしかけたとき、夕食の準備ができたとのこと。
 宿のグレードを見て皆それほど期待はしていなかったが、目の前に並べられた海の幸、山の幸には目を丸くした。
 マグロの和製ユッケに油の滴る若鶏の皮とモモ肉の焼き鳥。ハマグリがぱっくりと口を開くお吸い物は湯気たち、品のよい香りで食欲を誘う。
 ご飯は白一色かとおもいきや、黄金色の栗がちりばめられた栗ご飯。
 デザートは三十分後に出ると告げられ、さらに期待は高まった。

 ありがたい教頭の訓示もそこそこに学年主任のいただきます。
 みな一斉に箸をつつき、たしかに学年主任の言葉にウソはなかったと思い知る。

~~

 デザートは地元で推しているらしい和製アイス。
 黒ゴマ、きな粉、紫芋とそれほど食欲がそそるものでもないが、味わい濃厚なそれにみな頷きながら平らげる。
 意地の汚いものは隣の子の皿から掠め取っていたが、主任の拳骨がそれを制していた。

続く

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