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修学旅行の夜に_2

修学旅行の夜に2

 部屋に戻った加奈子は同じ部屋の子たちとパジャマパーティ。
 みな可愛らしいフリルのついたもの。
 自分はいつものグレーの上下でどこか惨めだったが、それよりも……。

「やっぱり枕投げでしょ」

 動くにはちょうど良い。

「やったな!」

 黄色いフリルの柳瀬孝美も負けじと枕を放る。

「きゃ、孝美も加奈子も乱暴! もう!」

 ピンクのフリルの島田恵美はさらさらの髪を庇いながら布団にもぐりこむ。

「お、お、逃げる気か! どこだ出て来い!」

「きゃ、いやーん、やめてよね~」

「うい奴じゃ……そちも好きじゃの~」

 悪代官と町娘にはや変わりする加奈子と恵美。
 パジャマのフリルを引っ張り、くるくると回すふりをする。

「うるさいぞ!」

 がらっと音を立ててふすまが開く。
 本物のお代官様が来たとばかりにみな平に表を下げるが……。

「なんつって……」

 やってきたのは健一と芝浦涼、藤原智也だ。

「あー健一! アンタねー!」

 いち早く気付いた加奈子はがばっと起き上がり、健一に掴みかかる。

「痛い痛い、悪かったよ……、てか、電車ん中でプリッツくれなかった仕返しだっつうの!」

 ぽかぽかと叩かれながらもどこか楽しそうな二人に、周囲はまた始まったと暑苦しそうにする。

「……あ」

 途中、何かに気付いた茅野優衣はもじもじとしだす。

「どうしたん? 優衣ちゃん」
「えっと、あのね。智也君たち、市ノ瀬君と同じ部屋だったよね?」
「ん? ああ」
「それじゃあさ、部屋、とっかえっこしない?」
「ええ!?」

 優衣の大胆な発言に男女問わず驚きの声を上げる。
 そして沈黙後、二秒……。

「えと、健一はやっぱ……なあ」

 智也は右ひじで健一を突く。

「やっぱってなによ……」

 だが応えるのは加奈子のほう。

「別に健一と一緒にいなくたって……」
「俺は加奈子と一緒にいたいな。だって、最後の思い出ジャン」
「あ……、そう……」

 健一の髪を引っ張っていた手から力が抜ける。代わりに彼のジャージにしがみつくようになる。

「そんじゃさ、内緒で……交換しようか?」

 涼の提案に頷くのは優衣と智也と健一、そしてもう一人引っ込み思案だった東野文江。

「文江ちゃんも?」
「うん」

 にらみ合う優衣と文江。

「はいはい、わかりましたよ。みんなスワッピングがしたいのね」

 ぱんぱんと手を叩きながら孝美が決をとる。

「孝美、それ意味が違う」
「そだっけ? まあいいよ。優衣と文江はもうヒートアップしてるっぽいし、あたしが見張りに行ったげる」
「え、孝美ちゃんも?」

 驚いたのは賛成したはずの智也。

「何? なんか文句あるわけ? つか、あたしがいないとこの二人が何しでかすかわからないでしょ?」

 おそらくはそういうことなのだろうけれど、当の本人はそれに気づかないらしく、フリルの二人にジャージを着せ、そそくさと廊下に出る。

「いい? 先生たちが来たら部屋間違えたっていうのよ? それと、朝になったら寝ててもたたき起こして部屋に戻すから、そのつもりでいなさいね!」

 きびきびした動作で追い立てる孝美に一同何も言えず、男女六人になった部屋にはしばし静寂が訪れる。

 がっくりと肩を落とす智也は恵美に「そこで寝たら?」と孝美の布団を指差す。
 智也は孝美が好き。気付いていないのはおそらく孝美のみ。
 そして、今彼女は男子が三人もいるところで一夜を明かすことになる。
 間違いなど起こらない。
 そういいきれないのが悲しいところ。
 むしろ、その事実が彼の心を苛む。

「ほら、元気だしなよ、智也君。孝美は優衣チャン達を見張りにいっただけだし、平気だよ……」
「だって、市ノ瀬結構かっこいいじゃん? 孝美さんだって女だろ? 格好いい男に言い寄られたら……あぁ……」
「いやいや、それはない」

 孝美はボーイッシュ。悪く言えば男勝り。一方の市ノ瀬弘樹は線の細いタイプ。水と油とすらいえる二人だが、だからこそといえばそうもなり、そうでもないといえばそうともとれる、複雑な状況。

「んでもさ、一之瀬以外にもいるんじゃないの?」

 にやにやしながら成り行きを見守っていた飯田真由が口を挟む。

「いや、あいつらはゲームやってるから平気。つか、一之瀬、俺の孝美さんに何かしたらただじゃおかん! うおっぷ!」

 一方的に燃え上がる智也の顔に枕が飛ぶ。

「おちつけバーカ。それなら奪い取りにいきゃいいじゃん」

 頭冷やせと言う涼に、肩を落とす智也。

「智也君のものでもないのに? っていうか、布団ないけど……あ、そっか、一之瀬君の布団に四人入るから平気だね」

 それをさらにたきつけるのが真由の嫌なところ。

「お、俺は、俺は孝美さんが好きだ! くそう! 市ノ瀬のやろう!」

 そう叫ぶと智也は部屋を出て行ってしまう。

 部屋に残るのは加奈子と健一、涼に真由、恵美の五人。
 
「なんか、行っちゃったね」
「あんたがたきつけるからじゃない」

 そうは言うも、どこか心にゆとりが生まれる。男女比の均衡が崩れたおかげで女子優位。
 加奈子は布団の上にひな座りしてふうとため息を漏らす。

「ね、二人はどこまで進んでるの?」
「!?」

 胸にどきっと来たのは彼と付き合い始めて初めてのこと。
 平静を装うも、隣の男子はでへへとしまりのない顔。

「どこまでって、清く正しくってところかな」
「こないだデートして手を握ったよ」
「うっさいばか! いわんでよろしい!」

 ばしばしと音が出る程度に強く彼を叩く。

「へー、いいなあ恵美も彼氏ほしいなあ……」
「俺はフリーだよ?」

 ぼそっとつぶやく恵美のとなりにさっと移動する涼。

 涼。
 顔もよく、話も楽しく、頭も良い。
 ただ、手癖が悪いというか、今日もデザートのアイスを隣の子から奪ったりと、ちゃっかりした男子。

「んーん、涼君はいいや」
「あはは、恵美ひどーい」

 けらけら笑う真由だが、彼女も涼に「慰めて」といわれたら「他を当たって」とつれない様子。

 ――なんでだろ。涼君格好いいのに。つか、こいつのバカ面よかずっといいわよ。

 にやつきながらデートの詳細を語りだす彼に天誅を落とすべきかと本気で悩む加奈子だった。

続く

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