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修学旅行の夜に_7

 健一のおかげで何とかバスに間に合う一行。
 孝美と智也は隣同士に座り、「あ、アレなんだろ」「ん? どれどれ?」と何かあるたびに指差し、何かを囁きあっていた。

「……ねぇねぇ、孝美ちゃん、どうしたんだろうね?」

 一人の席に座っていた加奈子の背後から、恵美が楽しそうに内緒話を持ちかける。

「どうしたって、何が?」
「んもう、加奈子ちゃんも気付いてるでしょ? なんかあの二人、昨日からすっごく仲良くなってない?」

 それは加奈子も十分気付いている。
 昨日の夜の時点では智也を呼び捨てにしていた孝美が、今は甘えた声で「智也君」。これでなにも無いと感じるほうがおかしい。
 が、はやし立てられることの苦労をしる加奈子は、敢えて知らないふりをする。
 そして、それ以上に気になるのは、彼らの後ろにいる涼と健一。
 二人もやはり窓の外に興味津々なようだが、視線を感じるのがわかる。
 おそらく涼。
 見つめ返したとき、彼の口元がふっと笑ったことに確信した。

 ――昨日のアレ、涼君なの……?

 彼氏がいる身でありながら別の男に大切な場所を触らせ、さらには求め、感じてしまった。
 今朝目覚めなければ気付くことも無く、きっと健一と彼氏彼女の関係でいられたはず……。

 ――んーん、大丈夫だってば。アレは涼君じゃない。絶対健一だもん。そうだよ。絶対……。

 バスケ部の健一も指先は長い。そして乾いているほう。だから勘違いをしたのだ。そもそも涼がそんなことをするはずが……?

『次は、康安寺、終点の康安寺です……、お降りの際はお忘れもののないよう願います……』

 がくんと大きく揺れたあと、バスはゆっくりと止まる。

「おっさきー」

 孝美を気遣う智也を尻目にハイテンションの健一はバスを降りる。

「もう、待ちなさいってば……」

 子供のようにはしゃぐ彼氏にふうとため息をつきながら、それに続く……が、

 コロコロコロ……。

 小銭が財布から落ちてしまい、椅子の隙間へと入ってしまう。

「あーん、もー、急いでるっていうのにぃ!」

 必死に手を伸ばすが、見える距離なのに届かない。そんなもどかしさを感じていたら、すっと棒状のものが伸びて、百円玉を引き寄せる。

「どう? 取れた?」
「う、うん、取れた。ありが……と」

 振り返ると、傘を手にした涼が微笑んでいる。

「それじゃ、早くいこっか……」

 お礼もそこそこにバスを降りる加奈子。
 それを出迎えるのは、ニヤニヤした恵美。彼女は加奈子に近づくと、耳元でこそこそと話し始める。

「ねぇねぇ、涼君て加奈子にやさしいね。もしかして気があるとか?」
「やめてよ。あたしは健一っていう彼氏いるし。てか、みんなの方が知ってるでしょ?」
「そりゃそうだけど、なんかね……」

 石段の前で智也に冗談を言いながら写真を撮る健一は、恋人同士というには妙によそよそしい。

 ――もしかしてプリッツのこと根に持ってるのかな?

 そんなわけも無いと、加奈子も石段を目指す……。

続く

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