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修学旅行の夜に_8

 石段は全部で百八段。一段上がるごとに煩悩を浄化していくというのだが、下がるごとに増えるとしたらプラスマイナスゼロなのではと勘ぐる加奈子。
 都会暮らしの彼女らはエスカレーターに慣れており、また段差の激しいそれに息を切らしていた。

「はぁはぁ……待ってよ。何この階段……バカじゃないの……」

 最近部活を引退したばかりの加奈子は、煩悩の浄化もそこそこに蹲る。

「仕方ねーな……」

 それを見かねた健一は彼女の荷物を預かると、ひょいひょいと上っていく。

「あ、待ってよ……」

 その隣では智也が孝美の荷物を背負い、しかも手を引いている姿がある。
 恋人同士とはかくもコウあるべきと悩む加奈子は、煩悩の浄化どころか羨望の気持ちを強めていく。

「どうぞ……」
「へ?」

 またも手を差し伸べられるが、それは健一ではなく、涼のもの。

「ありがと、でも平気だから」

 せっかくの好意を断るのは気が引けるが、自分はあくまでも健一の彼女であると思い出す。

「加奈子ちゃん、健一のこと気にしてるの? いいじゃん、あいつからは見えないし……」
「でも……」
「ほら、つかまって……」
「あ……うん」

 強引な男友達と、そっけない彼氏。
 あくまでもその程度。

 煩悩があったとして、この石段を登りきるころには浄化されているはずだからと、加奈子は涼の手を握り返した……。

~~

「それ、一段飛ばし! ほら、加奈子ちゃんも!」

 もうすぐ煩悩ともお別れとなるころ、涼は勢いよく階段を駆け上がる。

「う、うん! よいしょっと!」

 手を引っ張られる格好の加奈子もそれに釣られて大ジャンプ。
 多少よろけるものの、涼がぐっと抱き寄せたおかげで転ばずにすむ。

「わ、わ、わ、あ、ありがと……」

 健一にもされたことの無い行為に、加奈子はポッと赤くなりながら涼と距離をとる。

「上りきったね」
「うん、ありがとう。涼君……」
「あ、健一いた! おーい、健一!」

 彼氏の見ているところではしっかりと距離をとってくれる。
 なら、涼に下心などないはずだ。
 恵美の勘も当てにならないと思いつつ、少しでもそれを信じようとした自分のうぬぼれが恥ずかしい加奈子だった。

続く

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