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修学旅行の夜に_9

 石段を登りきったところに入館案内所がある。
 康安寺はお寺というよりは小さな博物館で、受付で拝観料を払ったらお寺の中を自由に見て回ることができ、希望すればお坊さんからお寺と周辺の歴史について講釈を受けたり、抹茶と菓子をご馳走してもらえるとのこと。
 さらに、館内マップをよくみると迂回路があり、少し距離は長くなるが、石段の急勾配というほどでもないらしい。

「帰りはあっち通って帰ろうね……」
「賛成……」

 ぜぇぜぇと息を荒げる恵美は、誰からも荷物をもってもらえず、かなり不満の様子。
 孝美と智也は相変わらずぴったりくっつき、そのまま順路に従って先にいってしまう。涼も健一もすでに先に行ってしまったらしく、恵美はしばらく動きたくないと言い出す。
 仕方なく順路に従い歩く加奈子だが、あまり歴史が好きではない彼女にはそれほど楽しい場所でもなかった。
 ただ、途中にある中庭や茶室を見ると、時代劇の中に迷い込んだような気持ちになり、新鮮さはあった。

「あれ、加奈子ちゃん?」
「ん? あ、涼君、先行ったんじゃないの?」
「ああ、そうなんだけど、トイレに行ってたら道に迷っちゃって……」

 迷路というほどでもないが、造りがどこも似ているせいで確かに迷いやすい。
 加奈子自身、順路の矢印が無ければ進んでいるのか戻っているのかわからなくなるほどだった。

「まあいいや。健一、探しにいこうよ」

 そしてまた手……。

「うん、いこっか」

 それを握るのも三度目となると、変な葛藤も生まれない。
 涼は自分のことにちょっと気に掛けてくれる程度で、健一との共通の友達。それだけの関係だから……。

~~

 一通りお寺を見回ったら、例の迂回路をゆっくり降りて次の目的地へ。
 今度は余裕を持ってバスに乗り込み、しばらくの間休憩をする。

「ね、やっぱり智也君と孝美、付き合い始めたのかな?」

 例によって例のごとく二人一緒の席に座る智也と孝美。
 パンフレットを見ながらにこやかに談笑しているようすからは、それ以外に考えられない。

 ――いいな。健一ももう少し気を利かせてくれたらいいのにさ。

 肝心の彼氏は一番前の席で窓にべったりくっつきながら外を見ている。
 代わりに……、

「ねえ、次いくところって加奈子ちゃんのリクエストだよね? どんなところなの?」

 涼はパンフレットを取り出し、次の目的地の写真を眺める。

「んーと、海浜公園だっけ? 加奈子ちゃんの行きたいところ」
「うん。あそこで貝殻のネックレス買ってくるようにおねえちゃんから頼まれてるの。なんだか自分が買い損ねたからってさ」
「ふーん、加奈子ちゃんお姉さんいたんだ。やっぱり美人?」
「え? どうかな。わかんないや」
「そう? 俺は美人だと思うな」
「ふふふ、どうだろうね」
「だって加奈子ちゃんのお姉さんでしょ?」
「え……、あ、でも、あんま似てないから……」

 きっと冗談だろう。どうせ他の女子にも同じことを言っているはず。
 隣でぶすっとしている友人を除いてだが……。

続く

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