FC2ブログ

目次一覧はこちら

修学旅行の夜に_18

「そ~っとな、そ~っとだぞ?」

 絨毯が敷かれた廊下で抜き足差し足もナンセンス。それでも雰囲気作りにと皆健一を真似する。

「ねぇ、鍵あいてるの?」
「ああ、抜かりない。教頭がタバコ吸いに行った後、探し物のふりして鍵開けっ放しにしてきたから……」
「へ~、やるねぇ」
「しぃ~!」

 今にも口笛を吹きそうな様子で言う涼に智也が釘を刺す。

「はいはい、邪魔はしませんよ~だ」

 即席カップルは「綺麗な」思い出も欲しいらしく、健一の提案にも即座に賛同していた。当然のことながら、足並みを乱しかねない涼には厳しい視線を送っている。

「ね、加奈子ちゃんも興味あったの?」
「え……、私は……、だって健一とそういう関係だし……、ね? 健一」

 振り向く涼にしどろもどろになりながら言葉をつむぐ加奈子は、たまらず健一に助け舟を求める。

「ああ……」

 しかし、健一は周囲に気を配ることに忙しく、それどころではないらしい。

「もう……」

 隠密行動中だからといえばそうなるが、それでも胸に訪れる寂しさがある。

「ほら、加奈子ちゃん、急いで……」

 けれど、彼は肯定してくれた。

「大丈夫だよ。ほら、前向いて」

 差し出された涼の手を払い、加奈子は彼を追い抜いた……。

~~

 屋上に出て最初の一言は……、

「うあ、すっげー……」

 遠くに見渡す海と燦然と輝く無数の星々。
 海岸沿いの道路の街灯が夜を照らし、周囲の輪郭を薄暗いシルエットに見せる。
 都会というほどでもない地域に暮らす彼らでも、見ることのない景色に皆しばし瞬きを忘れる。

 ――へー……、こんな星空があるんだ……。

 学校と部活の往復から学校と塾の往復に変わっただけの学校生活。
 周りの友人も似たもの同士の横並び。
 隣同士笑い合っていただけで、上を見ることも下を見ることもなかった。
 気付けば友達以上に意識していた男子がいたのに、せっかくの修学旅行だというのに彼はどんどんと先に行ってしまう。

 ――健一、どこよ? っていうか恵美は? 智也君、孝美!

 星空は輝き華やいでいるが、こっそり忍び込んでいるせいで明かりも点けられず、数メートル先も見渡せない。

 先ほどまでは鬱陶しいぐらいに付きまとっていたはずの涼の姿も見えず、加奈子は闇の中に一人立ち竦んでしまう。

続く

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/292-c24bd30d

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析