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修学旅行の夜に_20

 帰りの新幹線では行きの興奮がウソのように鎮まりかえり、ほぼ全員が眠っていた。
 中にはお土産の包みを開けてつまみ食いをするものもいたりするが、それもじきにお休みタイムに突入する。
「うふふぅ……」

 加奈子はネックレスを嬉しそうに眺めていた。
 首にかけて鏡を見る。手にかけて鏡を見る。手に持ってしかと見る。
 先ほどからずっとそれを繰り返しており、対面に座る恵美は心底うざそうな表情をしていた。

「ねぇ、いつまで見せびらかせば気が済むの?」
「ん~とね、恵美に素敵な彼氏ができるまで」
「死ね」
「う~ん、幸せ過ぎて死んじゃうかもね」
「マジで死ね」

 女の友情のはかなさを思いながら席を立つ恵美。

「あれ? どこに行くの? もっと自慢させてよ……」
「知るかっつの」
「んふふ……恵美、ありがとね。探すの手伝ってくれたんでしょ?」
「え? あ、あぁ、そうね。まあ、よかったわね。それと死んで」

 苦虫を噛み潰したような顔を少しほころばせると、恵美は智也たちのいるボックスの席に行き、トランプに混ざる。

 今、健一は隣の車両にいる。
 理由は昨日の夜遊びの責任を取ってのこと。
 タバコを吸いに戻った教頭に見つかるも、彼が囮になって他の面々を逃がしたのだ。
 その結果、彼は教頭にお説教をされ、四百字詰の原稿用紙に反省文を書かされている最中。

 じゃらじゃらじゃら……

 手に持ち直してみる。
 何度見ても飽きない貝殻のネックレス。
 残念なことに見せびらかせる相手が居らず、ボックスの席は加奈子一人。
 だがそれも都合が良い……。

 ――終わったら隣に来てよ。わたしもプレゼントあるから……。

 秘密のプレゼントは見せびらかすものでもないのだから……。

 扉の向こうに人影。明峰の制服姿が来るたびにわくわくする加奈子は、通路に乗り出していた。

「なんだ、涼君か……」
「どうしたの? 加奈子ちゃん」
「なんでもないよ」

 やってきたのは涼だった。

 昨日の夜遊び、抜け目のない彼はいつの間にかいなくなっており、部屋に戻るとすでに布団の中にいた。
 それを問いただすと、「俺だけ一人もんだし」と拗ねられ、それ以上は何もいえなかったのが昨日のこと。

「健一、まだ怒られてるんだ」

 涼は加奈子の隣に座るので、彼女は窓際に押しのけられる。

「なんで逃げるの?」
「逃げてなんか……」

 距離を詰められ、立ち上がろうとすると手を握られる。

「加奈子ちゃん、俺……」
「やだ、涼君ってば冗談が過ぎるってば……。ね、ほら、みんなとトランプしに行こう? せっかくだしみんなで楽しく過ごそうよ」

 逆に彼の手を引き、立ち上がらせる。

「俺は加奈子ちゃんと楽しく過ごしたいな……」
「だめだよ、ほら、みんな待ってるし……」

 渋る彼の手を引き、トランプに興じるボックスの席を目指す。
 本当は健一を待ちたいのだが、それもまだかかりそう。
 なら、できるだけ大勢でいたほうがよい。
 人の目があるところなら涼もおかしなことができないだろうし……。

続く

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