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おはよう、けどおやすみ_01

 チチチ……

    チチチ……

 小鳥のさえずる五月の朝。少し前に芽吹き始めた若葉は陽気な日差しに青さを増していく。
 新聞配達の音がする頃には空も朝の準備を終えて青一色の快晴をなす。
 世間はゴールデンウィーク真っ最中で、いつもなら通りを急ぐ背広の姿も少ない。
 代わりにリュックを背負った親子がおり、はしゃぎまわる子を嗜めていた。

「……zzz」

 そんななか、佐藤康平は布団と戯れていた。
 桜蘭高校二年、男子。好きな科目は英語と古典。背が高く、中学まではバスケット部にいたが、手足の長さを見初められて高校からはハンドボールに転向した。
 運動神経が良いというほどでもないが、持ち前の体躯と競技人口の少なさから二年のエースとされるほどに成長している。

 昭和の日から続く連休中は部活も無し。かといって出かける予定もなく、せっかくの休日を自堕落に過ごそうとしていたのだが……、

「ほぉらぁ、起きてよぉ……」

 同じく桜蘭高校二年の如月若葉。耳を隠すくらいのショートカットと百五十二センチの小柄な体躯のせいで、いまだに中学生と間違われる彼女だが、れっきとした高校生。
 少し低い鼻と控えめな唇。笑うとえくぼができる柔らかそうな頬は、気持ちを隠すことが苦手で赤くなったり青くなったりと忙しい。
 そんな彼女がどうして康平の部屋にいるのか?
 彼の両親が田舎の親戚の結婚式に出席するために家を空けることになった。その際、隣近所に住む若葉に冗談めかしに「おばさん達家を空けるけど、その間康平のことお願いね」と言付けしたのが原因だ。
 もともと素直で冗談を真に受ける彼女はすっかりその気になり、「はい、任せてください」と胸を張ったらしい。

 その経過で今に至るわけだ。

「もう、コウ君ってばおきてぇ……、ご飯冷めちゃうよ……」

 開いたドアからは階下からの味噌汁の臭いが漂い、空腹になった彼の胃を呼び起こす。

「ん~」

 しかし、眠気と怠惰がそれを凌駕し、康平は寝返りをうって布団を頭まで被る。

「もう……」

 その態度に困り果てた若葉は眉間に可愛らしく皺をよせてベッドに座る。

「ねぇ~えぇ……、コウくぅん……、お・き・て」

 布団の隙間から見える彼の頭をちょんちょん突きながら楽しそうにつぶやく彼女。

「うるさいなぁ……、なんで若葉がいるんだよ……」
「それはだって、おばさまに頼まれたもん」
「まったく、母さんも余計なこと……」

 突かれることに耐えられなくなった康平は顔と手を出し、抵抗を始める。

「お、お? やるの? なら起きて勝負したまえ」
「アホか。まったく、人が気持ちよく寝てるのに……」
「だってぇ、せっかくのいい天気だよ? 寝てるのもったいないよ……」

 ひとまずベッドから降りてカーテンをあける。
 さんさんと輝く太陽が室内を照らすと、康平はモグラのごとく布団の隙間にもぐり、丸まりだす。

「あっはは、おっかしいんだぁ……」

 若葉は面白そうに指差したあと、彼の頭があると思しき場所をつんつんと突く。

「もう、やめてくれよ。もう少し寝かせてくれよ……」
「いぃーやぁ」
 若葉は彼にかまわず布団をはがそうと必死になる。

「もう止めろよ!」

 我慢の限界にきた康平はばっと立ち上がると、驚く彼女を布団の中に引きずり込み……、

「わ、きゃぁ! 何? 何する気ぃ!」

 虚をつかれた若葉は抵抗することもできずに暗闇の中へと引きずり込まれる。

「なにするもなにも、決まってるだろ。若葉にも布団の良さを知ってもらうんだ!」
「なにが布団のよさよ……、うぅ、コウ君臭い~」
「コウ君臭いって……地味に傷つくな……」

 鼻をひくつかせるが、自分の臭いだと気がつかないのか、特に気にならない。

「んぅ、なんか、温かい……」
「だろう? 春眠暁を覚えずだ。身をもって知るがいい」

 布団の中で若葉を押さえつける格好になる康平。当然、身体の一部が密着するわけで……、

続く

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