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私の咎_02

 スーパーのパートが終わったら、次はファミリーレストランでの仕事が待っている。
 年金、社会保険、住民税、家賃、電気、ガス、水道、電話……。
 そして、養育費に慰謝料。
 三十を回った女。特にめだった職歴もなく、資格もない奈津美がそれらをまかなうには、朝から晩まで働く以外になかった。

 ――はぁ、今日も遅くなっちゃった。

 家に帰るのはいつも日付が変わる直前。
 一日の稼ぎは計算機を何度叩いても一万五百円。
 毎日働けるのであればまだしも、シフトの都合上、週に四日程度。
 最近になり預貯金ができるようになったものの、それらは愛しい我が子のためにと、指定の口座に振り込んでしまう。

 ――秋雄……、元気でいるかしら?

 最愛の我が子と気さくに笑う男性。

 ――ふふ、貴方ったらどこか子供っぽいよね。

 出会ったころは年上にも関わらず、同い年にすら見えた夫。

 当時のことは今でもしっかりと覚えている。

―*―

 土砂降りの雨。こんな日に好き好んで携帯電話を買いに来るお客さんなんていない。
 買ったばかりの携帯に泥がつくなんてありえない。
 そう思うのが普通。
 だから、雨が降ると暇なんだ。

 けど、

「すみません!」

 ずぶ濡れのスーツと傘も折りたたみの傘も畳まずにやってきたのは、就職活動中の大学生。
 まじめそうな真ん中分けの髪とインテリチックな眼鏡がちょっとダサいけど、心証は悪くない。あとは紙の上の項目と話し方かな。
 とりあえず、入店したことはわかったし、出だしは良しとしておいてあげる。

「あの、携帯が水に浸かってしまって、電話できないんです! 修理とかできますか? これがないと連絡ができなくて困るんです」

 周りのお客さんをよけながら私の居るブースにやってきて、早口でまくし立てる彼。

「いらっしゃいませ、それでは携帯電話をお預かりします。少々お待ちください」

 いつもどおりの営業スマイル。

「あ、はい。お願いします」

 彼は急におとなしくなったあと、とすんって椅子に座ってた。

 携帯電話の修理なんてお店では無理。けど、何もしないで機種変更を勧めるのもNG。とりあえずバックルームに隠れて動かせるかチェックする。

 ……動く、けど、消える。
 無理っぽい。
 電池パックを明けると、シートが真っ赤。これは水没したという完全な証拠。
 なら、カードは?
 ひとまず抜き取って、生きているかをチェック。
 エラーメッセージが出ておしまい。
 ……こっちも無理みたい。 

「大変申し訳ございませんが、こちらの携帯電話はもう……」
「そうですか……」

 頷く彼は心ここにあらずといった様子。
 さて、どうしたものかしら?

続く

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