「はい?」
「直前まで電話していた相手ってわかりますか?」
「はあ、それぐらいならお調べできますが……、身分証をお願いできますか?」
さすがにおいそれと渡すわけには行かない。
だって、もしかしたら他人の携帯かもしれないし。
「えっと、これでいいですか?」
そういって彼が取り出したのは社員証。けっこう名の知れた会社みたいだけど、一番驚いたのは、私よりも三歳年上だったこと。
「ありがとうございます。それではお調べしますね」
あまりしない作業のせいでちょっと手間取ってしまった私だけど、目の前の彼は呆然とした様子でこっちをみてる。
大切な用なんだろうけど、でもそんなに見られると恥ずかしいし、やりにくい。できれば向こうを向いていてほしいのに。
「はい、わかりました、えと090-…………です。メモいたしますね」
「あ、ありがとうございます。けど、電話が……」
「あ、そうですね」
抜けたところのある人みたい。
私もだけど。
「よろしかったら、お貸ししますか?」
「いや、悪いです。ここら辺に公衆電話は……」
そんなものがあったら商売上がったり。
「一キロ先のタバコ屋にならあるかもしれませんが……」
「そうですか」
「どうぞ、お遣いください」
しょぼくれている彼を見ていると、なぜだかとても可愛そうになり、番号をかけてから手渡す。
「あ、まずいですよ」
「お客様の大切な電話なのでしょう? それに今の状況を説明しないと先方様も困ると思います」
確かにまずい。だって後ろでお局様がにらんでるんですもの。
「すいません」
お客さんは私の携帯を借りると、いったん店を出てしきりに謝っていた。
「早川さん。ちょっといいかしら?」
「はい、主任」
そしてこっちでも多分、平謝りをしないといけないんだろうな……。
続く
「はあ、それぐらいならお調べできますが……、身分証をお願いできますか?」
さすがにおいそれと渡すわけには行かない。
だって、もしかしたら他人の携帯かもしれないし。
「えっと、これでいいですか?」
そういって彼が取り出したのは社員証。けっこう名の知れた会社みたいだけど、一番驚いたのは、私よりも三歳年上だったこと。
「ありがとうございます。それではお調べしますね」
あまりしない作業のせいでちょっと手間取ってしまった私だけど、目の前の彼は呆然とした様子でこっちをみてる。
大切な用なんだろうけど、でもそんなに見られると恥ずかしいし、やりにくい。できれば向こうを向いていてほしいのに。
「はい、わかりました、えと090-…………です。メモいたしますね」
「あ、ありがとうございます。けど、電話が……」
「あ、そうですね」
抜けたところのある人みたい。
私もだけど。
「よろしかったら、お貸ししますか?」
「いや、悪いです。ここら辺に公衆電話は……」
そんなものがあったら商売上がったり。
「一キロ先のタバコ屋にならあるかもしれませんが……」
「そうですか」
「どうぞ、お遣いください」
しょぼくれている彼を見ていると、なぜだかとても可愛そうになり、番号をかけてから手渡す。
「あ、まずいですよ」
「お客様の大切な電話なのでしょう? それに今の状況を説明しないと先方様も困ると思います」
確かにまずい。だって後ろでお局様がにらんでるんですもの。
「すいません」
お客さんは私の携帯を借りると、いったん店を出てしきりに謝っていた。
「早川さん。ちょっといいかしら?」
「はい、主任」
そしてこっちでも多分、平謝りをしないといけないんだろうな……。
続く