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私の咎_05

 ――あの時の貴方、私に電話していいかって聞いてたのよね。突然知らない電話なんてくるから驚いちゃった。

 それから、彼は毎日連絡をしてきた。

 まじめな彼は会話が下手だが、一生懸命だった。
 最初こそ気味悪がった奈津美だが、誕生日近くにくれた色とりどりのバラの花束にくらりときた。
 彼は柄にもないことをするのは照れるといっていたが、やや多いそれに心奪われていたのも事実。
 そのバラごと彼に抱きついたとき、彼の頬に引掻き傷を作ったのはいい思い出。そして、その直後に起こしたちょっとした喧嘩も。

 ――私、そんなにおばさんじゃないのに、失礼な人よね。

 当時の英明は将来性のある業種のサラリーマン。
 奈津美はというと、そこそこ奇麗な容姿と丁寧な性格のおかげで携帯ショップの店員をしていた。ただ、子供っぽさが抜けず、真っ白なウエディングドレスを着ての結婚式を夢見ていた。
 だから、一年の交際期間で結婚に踏み切った。

 真っ白なウエディングドレスとがちがちに固まった夫と、幸せで涙がこぼれそうになる奈津美。
 皆に祝福され、世界で一番自分が幸せなのだと感じていた。

 そして待望の男の子が生まれることで、それはさらに深まった。
 気難しい奈津美の父もこのときだけは涙をこぼして喜んでくれた。

 島本秋雄。

 産声勇ましくこの世に生れ落ちたのは秋のころ。
 だから秋雄。
 夫と相談して両親達には内緒で決めた。
 そのあと一週間、父は孫には優しかったけれど、奈津美にはどこか睨むような視線を向けていた。

 ――あの子、いじめられてないかな。大丈夫よね、貴方の子だもの。

 写真で笑う息子。
 小学生なのに中学生のガールフレンドがいるとかで、頼もしくもどこか将来が不安な息子。

 ――浮気なんかしたら、いけないよ? じゃないと、お母さんみたいに大切な人が離れていってしまうから……。


 写真立てにまた一つ――、




 雫が落ちた。

続く

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