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私の咎_07

 家から自転車で十分程度にあるスーパー、ACマート。
 日々の買い物のおり、掲示板でパート募集の記事を見たときから、なぜか気持ちが落ち着かなかった。
 結婚と同時に仕事を辞めた奈津美だが、家に押し込められる生活は窮屈なもの。
 秋雄が小さい頃は彼の世話を理由に自分を家に縛り付けていたが、学校の友達と遊ぶことが楽しくなってきた息子は、ランドセルを投げると「ただいま」と「いってきます」を続けて言うようになっていた。

 ――まったくもう、元気良いんだから。でも、私も少しは子離れしないと。

 子供の成長を頼もしく思う一方で募るさびしい気持ち。
 家に一人でいる時間が増え、掃除も洗濯も毎日の食事もルーティンワークと化した頃、その募集を見た。

 もう一度働きたい。
 少しでもいい、社会とのつながりが持ちたい。

 健全な成人女性の当然の欲求。
 そこに息子の塾を口実にするのは気がひけたが……。



 張り切って臨んだ面接は、スーパーの事務所で店長の渡辺博と二人きりで行われた。

「えと、島本さん、息子さんはいいの?」

 自己紹介、志望動機もそこそこに、博は家族欄を指差す。

「スーパーってさ、祝祭日が忙しくて平日は暇なんですよ。意外と。で、お子さんが小さいと急に熱が出たとかで休まれたりすると困るんですよね」
「はあ、そうですか」
「ほら、まだ島本さん若いし、子供も小さいんじゃないですか?」

 若いといわれると悪い気もしない。けれど、目の前の男は彼女よりおそらく年下。いかつい眼鏡を掛けているが、肌に張りがあり、どこか幼い顔立ちをしている。

「いえ、もう小学校五年生ですし、自分ひとりで病院にいくぐらいは……」
「へえ、大きいんですね。あ、ホントだ」

 何をみて納得したのかは敢えて聞かない。
 ただ、気になったのが、その後の面接のときに感じた視線。
 しゃべり方や表情を見ているというよりも、別の何かを品定めしているようにも見える。

「それで、息子の進学費用の足しにと思いまして……」
「そうですか、ちなみに平日をご希望ですか?」
「え、まあ、そのほうが家庭もありますし」
「はい、わかりました……」

 胸元、脚、腰周り。
 痛いというほどでもないが、視線が刺さった気がした。

 ――そんな馬鹿なこと。もっと若い子いるのに、何気にしてるの? 私。

「それじゃ、今日は以上です。結果はそのうちに連絡いたします」
「はい、よろしくお願いします」

 奈津美は丁寧にお辞儀をしたあと、事務所を出ようとする……が、

「奈津美さん、こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 ぽんと両肩を叩く博の手。
 触れた後も少し、体温を感じた。

「は、はい」

 違和感を覚えるも、期待できる言葉と好意的に解釈し、奈津美は出口に向かった。

続く

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