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私の咎_11

 助手席に乗せられたのは久しぶり。
 普段夫の車に乗るときはいつも秋雄が前に乗りたがり、譲っていたから。
 本当は助手席に乗るのが好き。
 普段は子供っぽい英明が真剣な横顔を見せてくれるのが好きだから。
 そして、車を出すときにすっと身体を近づけられるのが、どきどきするから。

「失礼しますね……」

 それは博も同じ。
 普段は熟練パートに言いように言いくるめられている彼の幼い顔立ちが真剣になり、胸元の開いたシャツがセクシーだった。
 夫以外とも付き合ったことはある。
 短大の頃に合コンで知り合ったいまどきの格好をした大学生。最初は新鮮な気持ちになれたが、彼の浮気でその恋も終わり。
 そのせいか、英明のような自分だけに首ったけな男になびくことができた。
 ただ、正直なところ、少し不満もある。
 夫婦、特に秋雄が出来てからは夜の営みの回数も減ったこと。少し前のキスもじらされるだけで、本当はもっと熱烈なものが欲しかった。

 ――なんか不倫みたい……。

 普段なら想像すらしないことなのだが、今は酔いも回っているせいか、思考もおぼつかない。

 ――え? でも店長も……飲んでたんじゃ……。

 彼は自分と同じものを飲んでいた。つまりは飲酒運転になるわけだ。

「あの、店長、お酒……」
「あぁ、すみません、検問があるみたいなんで、別の道行きますね……」
「は、はい……」

 奈津美は免許を持っていないが、社会通念として飲酒運転の是非など考えるまでもなくいけないことと知っている。
 けれど、走り出した車が別の道にそれると、それを言い出すきっかけもなくなってしまう。



 雑木林の並ぶ公園の近く、灰色の車がハザードランプもつけずに停まっていた。
 車内には二人。男女。男は運転席の席を倒して腕で枕を作っていたが、女は困ったようにバッグを抱いている。

「まずったな……、飲酒運転がばれたら免停くらっちゃうよ……」

 博は人気のない公園の近くに止め、ぶちぶちとつぶやく。

「困りましたね……」

 すぐにでも帰りたい奈津美だったが、検問を避け続けた結果にたどりついたこの景色を奈津美は知らない。

「どうするつもりですか?」
「そうですね、別の道で帰りますよ……、ただ、その前に少し休んでいいですか?」
「え、でも出来るだけ早くにお願いしますね……」
「はい……」

 携帯を取り出し、夫にメールをしようとする奈津美。けれど、この妙な状況を説明できる言葉が見つからない。

 店長と一緒に車にいます。休憩してから帰ります。

 のんびり屋な英明でも誤解しかねない内容に苦笑してしまう。

 ――どうしよう? パートのみんなと打ち上げをしているとかでいいかな? まあ、大丈夫よね。たまにしてるみたいだし、うん、これでいこう……。

「奈津美さん……」

「は、はい? あ、はい……、もう出られますか?」

 ものの数分程度の休憩なら取らなくとも同じではと思いつつ、これぐらいなら言い訳の必要も無いと安堵する奈津美。

「奈津美さん……」

 けれど、膝に添えられた手は、徐々に内側へと……、

「ちょっと店長……困ります……」
「奈津美さんの肌、すべすべしてますね……」

 暗がりで博の顔は見えない。けれど、荒い鼻息が、右腕をさするその行為の本質を見せる。

「小学生の子供を持つなんて信じられない……、それほどまでに貴女は美しい」
「いやですわ。こんなおばさん捕まえて美しいなんて……、ね、店長さんまだ酔っているみたいですし、私はタクシーで帰りますから……」

 いよいよ雲行きが怪しくなり始めた頃、奈津美は車を降りようとする。
 ロックを外してドアを開ける。後は駆け出すだけ。スニーカーだから問題ない。
 けれど、身体が動かない。
 半分パニックになる彼女だが、落ち着いて考えればシートベルトを外していないだけと気付く。
 しかし、それは博の横暴を許すのに十分な時間。

「いや、やめ……て……」

 開かれていたドアがバタンと閉まり、窓からかろうじて見えていた二人の姿が消え、シートがゆっくりと倒された……。

続く

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