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私の咎_21

 いつものように夫と子供を送り出し、パートに向かう。
 断るべき。
 自分には愛する夫と子供がいる。
 それを裏切ることなどできない。

 そう強く意識して職場へ向う。


 けれど……、

『ぁ、ぁ、だめぇ……、わたしぃ、ぃ……っちゃ……ぃます……』

 にやけた顔で緑のレコーダーを操作する博。
 涼しい風の吹くホテルの一室、カラフルな照明を背に受ける彼は淫猥な悪魔に見えた。

「あ……あ……」

 安いソープの香りを漂わせるバスローブ姿の奈津美は、迫り来る脅迫を装う誘惑に身じろぐことをしなかった。



「あぁん! お願いです、もうこんなことぉ……、あっあっあっ、いぃ、いぃのぉ……」
「奈津美ママ、嫌がりながらもすっごい感じてるね、僕の咥えて離したがらないじゃない」

 丸いベッドの上で四つんばいになる奈津美と、それに後ろからしがみつき腰を突き立てる博。
 断るつもりで話を切り出しても例のレコーダーには一回前の記録が残っている。
 そもそも削除しているかも疑問だというのに、なぜ求めに応じてしまうのか?

 奈津美自身、うすうす気付いているが、思考をそこには向かわせないことにしている。
 もし、自分すら偽ることが出来なくなれば?

「いぃいいい! いく、いく、いく、いくぅううううう!」

 博の腰の動きが早くなったところで、女のほうが堕ちた。



「お願いします、もうこれっきりにしてください……」
「奈津美さん、強情だね……」

 寄り添って寝そべる二人は、布団を纏うものの全裸。男は腕で女に枕をしてあげており、女は視線を逸らしつつもそれを拒んではいなかった。

「だって、私には主人も子供も……」
「そう……、考えておくよ……」



「来週からしばらく出張で名古屋なんだ……」
「え?」

 食事の後片付けをしている奈津美の背に、秀明のため息交じりの声が聞こえた。

 ガチャン……。

 後を振り向いたとき泡で手が滑り、皿が落ちて割れる。

「あ、いけない…………イタッ……」

 奈津美は濡れた手でそれをかき集めるが、破片で人差し指を切る。
 赤い筋が通ると水滴に誘われ、ぽたぽたと床に落ちた。

「大丈夫? あーあ、血がでちゃって……」

 秀明は奈津美の手を取るとちゅっと口付けし、絆創膏を巻いてくれた。

「あ、ありがと……」
「あれ? 指輪は?」
「あ、うん。パートのときにしてると傷つきそうで外してるの……」
「そう……。っていうか、奈津美さん、熱ない?」
「だ、大丈夫よ……」

 英明はそれを無視して奈津美のおでこに手を当てると、自分のおでこと熱を比べていた。

「なんか目も赤いし、風邪?」
「んーん、ちょっとたまねぎ切っててね……、だからなんでもないの」
「そう? でも奈津美、最近疲れてそうでさ……、仕事大変なんじゃないの?」
「うん。けど、貴方はもっと忙しいし、大変でしょ?」

 食器を片付けるフリをして英明から逃れる。

「だけどさ、君が倒れたら困っちゃうよ。奈津美が家を守っていてくれるから僕も安心して働けるんだし、お金だって……」

 けれど英明もグラスを棚にもどそうとやってきて逃げることも出来ない。

「お金も大事だけど、やっぱり社会とも接点もっておきたいし、だから、気にしないで……」
「君がそういうなら……」

 しぶしぶ納得する英明だが、まだ何かいい足りないらしく、奈津美のことを静かに見つめている。

「どうしたの、あなた。もしかして貴方も疲れてるとか?」
「ん……、ただ……ちょっと……」

 そしてゆっくりと近づく彼の顔……。

 英明は言葉に詰まるとキスをしてくる。

「ゴメンナサイ、ちょっと虫歯あるみたいで……」
「そう? 残念」

 顔を背け、キスを拒む。
 残念そうに言う彼に罪悪感を抱くも、それを打ち明けることも出来ず、ただうつむき、うなだれるだけ……。

 指輪をなくした場所。
 それを思い出せずに……。

続く

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