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私の咎_23

『はい、どういたしました?』
 無人カウンターに設置されていたインターホンを押すと、若作りしたおばさんの声が聞こえてきた。

「あの、忘れ物がなかったか……」
『はい、何号室ですか?』
「えっと……、七〇五号室です」
『少々お待ちください……。えっと、忘れ物忘れ物……、ね、この前のさ』

 しばらく音声が乱れたあと、音の割れたメロディが流れる。

「そんなの、買ってあげるよ……、だからさ……」

 焦る気持ちの強い奈津美と、それに付け入ろうと囁く博。
 二人でいるときは、車を出る前に必ず香水をつける。
 石鹸のような香りが最初にする。そして、甘くなく、ミントのような鼻にすぅっと入ってくる香り。

「卑怯です。そんなこと……」
「だって、さ……。これが最後なんだもん……」

 ――え!?

 寂しげに呟く博のそれは、これまでの騙す素振りが感じられなかったが……?



「本当に……、これで最後にしてくれるんですか?」

 いつもの部屋、いつものヤリトリ。
 けれど、この日は違っていた。

「うん。奈津美さん、全然堕ちないんだもん。なんか張り合いがなくってさ」

 博はそういいながらネクタイを外し、ワイシャツを脱ぐ。ズボンのベルトはいつも奈津美に外してもらっている彼だが、今日は何か急いでいるようで、カチャカチャと外す。

「ね、最後なんだから、思い切りしてもいいでしょ……。さ、奈津美さんも脱いで脱いで」
「え……、あ……、はい」

 言われるままに春色のタートルネックのセーターを脱ぐ。
 最近買ったばかりの薄緑のブラはショーツとセットで買ったもの。

 ――これが最後なら……、最後なんだからいいはずよ。だって……、そうよ、最後なんだから……。

 最後。
 何度となく望んでいていながら、いざそれを耳にして訪れる不可思議な気持ち。

 ――なんか、博さん、急いでる?

 その原因は博の浮ついた素振りを訝しんでのことと言い聞かせて。

続く

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