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私の咎_最終話

「脅されたんじゃないの?」
「え?」
 緑色のペンライトのようなもの。自分を縛り、陥れたもの。
 差し出されたそれを受け取り、イヤホンをあてて再生。

『あんあんあん、いい、いいの、いく、いくのぉ!』

 はしたない声ではしゃぐ自分に赤面しつつも、なぜこれが英明を押しとどめていたのかは疑問。
 「わかったかい?」と言いたげな表情の英明に正直困ってしまう。ようやく気付いた英明は「あ、わわ、ごめん、そこじゃないんだ」と操作する。

『もう、これっきりにしてください。私には夫も子供もいるんですから……』

 行為の終わったあとの、いつもの台詞。
 あのときの気持ちを冷静に見つめなおせば、これほどうすら寒い台詞もない。

「君は脅されていた。そうでしょ?」
「あなた……」
「なあ、そういってくれ……、僕らまだ、やり直せないか? なあ……」

 起き上がった彼は一週間ほどの休養のせいか衰えを見せるも、彼女の腕をとり、すがるように言う。

「ごめんなさい……、わたしは……私にそんな資格ない」
「どうして? 僕はまだ君を愛してるし、そりゃたしかにすぐに忘れたり、受け入れることなんてできないと思う。けど、君が……、君を失うなんて……そんな残酷なこと……、どうして君は僕を、さらに……傷つけるのさ……」

 堪えられず泣き出す彼を抱きしめ、そのまま頭を撫でてあげる。

 おそらくは、きっとこの気持ちを抱いたから。

 だからこそ、自分を赦せないでいた……。



 ――さて、明日も早いんだし、もう寝ないと……。

 時計が十一時を迎えた頃、奈津美は写真たてをちゃぶ台から本棚にもどした。
 レトルトのスパゲティを食べ終えたら片付けもそこそこにシャワーを浴びる。
 本当は湯船にしっかり浸かりたいのだが、気持ちの上でそれもできない。

 ストイックに生活したところで償いになるはずもない。
 けれど、たとえ些細なことでも幸せを感じることを咎める気持ちが強い。

 せめて息子と夫の幸せを想うぐらい。
 それぐらいの欺瞞は赦して欲しいと願いつつ……、

 奈津美は目を閉じた……。

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