「離れたくない……」
耳元で囁かれると、そのままでいたくもなる。
しかし、膀胱が緩くなり始めたのを悟った彼女は、自身も名残惜しいと思いつつ、背を捩じらせ、体を離し、便座カバーを開けて腰を下ろす。
「おいおい、栄子君?」
「や、見ないで……」
股の間から見えるちょろちょろ滴る黄色い水に混じり、白い濁った液がこぼれ落ちた……。
~~
ファーストフード店で二人はメニューを眺めていた。
「えっと、ハンバーガー、ダブルのセットとぉ、あとアップルパイも。ねえ良いでしょ? おじ様……」
「ああ、良いよ」
腕に絡みつく栄子にせがまれた男性は、うんうんと頷く。その腕からは既に黄色の腕章が取り外されており、二人は仲の良い親子にも見える。
「ね、それとぉ、お願いあるの……いい?」
「ああ、なんでもいってくれたまえ」
「あたしね、今月携帯使いすぎちゃって、払えないの」
「なんだそんなことくらい。貸したまえ……」
栄子は親をも驚かせる請求書を恐る恐る手渡すが、男性はふんと鼻で笑うと、財布から諭吉を三人取り出し、彼女に手渡す。
「え、こんなに必要ないよ」
「君はほっておくとパチンコで儲けようとするからね。そのうち返してくれたらいいよ」
「はーい……」
しおらしく頷くも、彼が目を離した隙にちょろっと赤い舌を出す。もっとも、彼が財布の紐を緩めてくれる限り、その必要もない。
運ばれてきたトレイを片手に、栄子は人の少ないボックスの席に行く。
彼が対面の席に促すも、彼女は腕を離そうとせず、そのまま隣に腰をかける。
「おいおい、こんなところ見られたら……」
「平気だよ、パパ!」
「パパ……か」
おじ様からパパに代わると、さらにおかしな気持ちになる。しかし、彼女の可愛らくも、どこか狡さを秘めた笑顔を見ると、そのまま墜ちていくのも悪くないと思えた。
「ねえ、もう一つ、んーん、二つお願いあるの」
「欲張りだな、栄子は」
だんだん大胆になる彼女に、少し驚くも、彼は優しく頷く。
「あのね、携帯番号、メール交換しよ」
「ああ、お安い御用だ」
これから先も彼女の財布になるだろうと予想しつつ、常連のバーへの行く回数を減らせばお釣りがくると、彼は鷹揚に頷く。
「それとね?」
「うん?」
しかし、彼女の望みは別にある。
ポテトを摘む手と逆の手が先ほど役目を終えたばかりのモノに触れ、硬さを懐かしむようにさすってくる。
「栄子……」
彼女は彼の呼び声に答えず、細長いポテトを咥えると、その可愛らしい唇を突き出して、目を瞑る。
男性は周囲を一瞥したあと、スモークガラスに隠れ、その反対側からスイーツを目指し、かじりついた……。
私のアレ長おじ様 完