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小春十三の短篇_3_2

 次の時間、その次の時間も、彼はまどかの視線を感じていた。
 席順を確認したところ、彼女の席からは偲の席は見えず、他の頭の良い生徒の席も見えない。その事実が彼女を黒だと決める根拠。

 ――そうだ……!

 寛はある細工をした。それは答えを微妙にずらすこと。
 本来ならトップを目指すべきところだが、それよりも思いついたイタズラをしてみたくなり、行った。

「そこまで。皆手を止めて。はい、そこまで」

 担任は集められた答案用紙の枚数を確認し、封筒に詰める。
 テスト最終日はホームルーム、教室の掃除もなく、そのまま解散となる。
 生徒の大半がアライグマのような顔をしている以上、ありがたい訓示も子守唄の代わりにしかならないから……。

~~

「遊びイコー」

 試験が終わると同時にまどかは友人の一人に明るい声をかける。

「ごめんまどか、ちょっち無理」

 対し友人は頭を抱えて暗い声を返す。
 それもそのはず、彼女もまた留年の危機に瀕しているのだから。

「あたし、留年かも……」
「大丈夫。学年が変わっても、あたし達友達だよ」
「そん時は道連れにしてやるんだから!」
「へへーん、今回はだいじょうーびだもん」
「なにその自信、ムカつくー」

 妙にテンションの高い劣等生仲間に、友人は首を捻るばかり。

「そうかな……」

 彼女ともう一人理由を知る寛が冷静な独り言を言うと、まどかは少し驚いたように目を開く。
 彼はその様子を背後に感じながら、教室を出ようと荷物を整理する。
 すると答え合わせをしていた男子二人が彼の前に来て、問題容姿片手に聞いてくる。

「なあ石崎、さっきの数学の最後の問題、あれ十三だよな?」
「いや、二十六だよ。Y軸に対称だから、二倍する必要があるんだ」

 彼はすらすらと説明すると、二人は「あー、なるほど」と頷き「さんきゅ」と言い残し、去っていく。

「嘘?」

 背後ではさっきまでのテンションが嘘のように下がったまどかの声がした。

~~

 せっかく遊びに行こうとなった友人を振りきり、「さっきと言ってることちがーう」と不平を言われながらも、まどかは教室に残っていた。

 理由は当然、寛が残っていたから。

「何か用?」
「あんた、わざと?」
「いや、別に。僕だって間違えることはあるし、だからいつも平井さんに負けているんだよね」

 平静を装うも見事に釣り上げられた獲物を前に、寛は笑いを堪えるのに必死になる。

「ていうか、美咲さんには関係ないと思うけど? 僕が間違えてもさ」
「わかってるんだろ? あたしが、アンタの答案……」

 キッと睨んでくる彼女のつり目は意外と可愛らしい。
 頭に栄養が行かないわりに身体にいったらしく、胸はパットなしのDカップ。
 どんなに寒くとも第一ボタンははずしているせいか、ブラウスからその肌が覗けてしまい、たまに教師は妙な目線で彼女を指導する。
 膝上十五センチを越えるといわれるスカートの下は普段スパッツをはいているものの、今日のような風の穏やかな日は余計なものを穿いていないおかげで、ムッチリとした太腿が見える。

「今見た?」
「何を?」

 一瞬だけ見た。

 イタズラな春一番がグレーのプリーツスカートを翻すと、勉強一筋といわれる彼も前のめりになってしまう。

「へー、石崎も女に興味あるんだ……」
「いや、別に……」

 あるとしても、それは偲のような知性的でおしとやかな女性に向けられるもの。
 もちろんスタイルが良く、ファッション雑誌のモデルを意識したメイクで整えた彼女を綺麗だと意識する気持ちもあるわけで、その証拠に風のイタズラをまんまと引っかかってしまったわけだ。

「嘘つかなくてもいいよ。オチンチン立ってるし」
「あ、いや、これは……」
「あはは、嘘だよ」

 彼女は余裕の笑みを浮かべながら寛の隣に歩み寄り、窓辺に腰を下ろす。
 右ひざを折り、爪先を窓枠に立てると、少しの風でも裾が翻えってしまいそうで、寛は視線をしばられてしまう。

「ねぇ、エッチしたことある?」
「ないよ……そんなの」
「でも、したいよね」
「そりゃ……」
「させたげよっか?」
「え?」
「カンニングばれると困るんだよね。留年したくないしぃ」
「それは、でも、別にいうつもりは無いよ」
「そ? 信じらんないな」

 悪事を働いたはずの彼女が責める格好になる状況に寛は困惑を覚えるも、エッチをさせてくれるという突飛な取引に、思考がこんがらがる。

「知っててわざと答えを間違えるとか、陰険だよね」
「な、もとはといえば君がそんなことするから……」

 あまりに身勝手な物言いをする彼女に温厚な寛もかっとなる。しかし、春のイタズラが二人の間を駆け抜けると、黄色を基調として黒の縁取りをされたショーツに目が行ってしまい、言葉も間抜けな形で途切れてしまう。

「可愛いでしょ。あたしの勝負パンツ」
「……」

 寛はゴクリと息を飲む。あの薄布の下には淫らな花園がある。普段から遊び歩いていると噂される彼女なら、きっと処女ではないだろう。
 もしかしたらやらせてもらえるかもしれない。そんな期待的妄想を抱く。

「あたしさ、そういうインテリって結構弱いんだよね。ちょっぴり濡れちゃった。だからさ……ね、シヨ……」

 シヨ。

 それは性知識の浅い彼にとって魔法の言葉。
 薄く塗られたピンクのルージュは意外と品がよく、彼はそれが近づいてきたとして、なんら警戒をしなかった。

続く

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