背中をトンと叩かれた。それだけで外れるものだろうか?
清美はそれを考えている場合じゃないとブラを拾い、起き上がろうとする。
「まだこっちを向かないで下さいね。触診が済んでいませんから」
「は、はい……」
先ほど忘れかけた不安が鮮明になって舞い戻ってくるも、背中越しに医者の表情は見られず、ただ身を強張らせるだけに留まる。
「いい身体していますね……、とても健康的だ……」
果たしてそれはどちらが本音だろうか?
わき腹に這い寄る手つきは手の平ではなく指先。それが揉むように動きだす。
「ん、あぅ……」
彼女は背をそらし、頭を揺すり、切ない声を上げる。
「大丈夫ですか? 何か内蔵疾患でもあるかもしれませんね……」
「いえ、結構です……」
「精密検査が必要かもしれません……」
もう片方の手が、緩く締められたパンツの隙間に入りこみ、尻の割れ目の汗ばんだ箇所をなぞる。
「や、そこは……ダメ……」
「感度が良いみたいですね……、ここはどうですか?」
男の手がわき腹から急上昇し、下乳を揉み始める。それは明らかに触診の範囲を逸脱しており、肩口に当たる荒い息には熱さと雄雄しさが感じられる。
「あ、あなた一体なんのつもりなの?」
「私は医者ですよ。何も怖がる必要は無い……」
柔らかな唇が音を立てて吸いつくと、急激に寒気がした。
しかし、ショーツの隙間に指が潜り込むと急に熱を帯び、憤る気持ちをそがれ、代わりに女が疼き始める。
最近は仕事を理由に夜を拒まれてばかり。しかし、本当の理由は庶務の嫁き遅れとの火遊びが原因と見抜いている。それでも一緒にいるのは、最後は自分のところに戻ってくるという自信があるから。
ただ、彼女の火照りが疼くと強引に迫ってしまい、それが返って夫婦の距離を開くことになる。
「はぁ……やめてください……」
手にした赤いブラを握り締めて、力なく呟く清美。
医者を名乗る男はその手を下乳からやがて乳頭に向かわせる。
まだ子供のいない彼女の大きな乳首は、彼女もあまり好きではない。しかし、感度がすこぶるよく、初夜の日に夫に触られただけで乱れてしまい、処女であることを疑われたほどだ。
「ん、いや、乳首触られと私……乱れるの……」
「不整脈ですか? それはいけませんね……」
「ちがくて、ああん……」
男が両の乳首を同時に摘むと、彼女の身体に甘い電撃が走り、白い喉を逸らし、頭を大きく揺らす。それは拒む気持ちというよりも、煽る、誘う仕草に見えた。
「動悸が激しいですね……何か既往症でもありますか?」
「いえ……その……」
「お子さんは?」
「いません」
「まさか不妊症ですか?」
――夫が抱いてくれないから。
原因はわかりきっているものの、夫の目が他人に向いている今は難しいだろう。下手に求めても盛りのついた牝猫と追い返されるのがオチなのだし。
「いけませんね、何か婦人病を誘発しかねませんし、今日は精密検査をしてみませんか?」
「でも……」
――あなたは医者じゃないでしょ?
「女性特有の病気、例えばレスとか……」
レスという言葉に、清美の肩がピクリと震える。
「女性でも男性でも、性的な興奮を溜め込むとストレスに繋がります。それで体調を崩す人、最近多いんです」
ちょっとした動作を目ざとく突く男に、彼女は羞恥に顔がカッと熱くなる。
「いいかげんに……」
怒気をあらわにするも、ざらりとした舌がうなじを這ったとき、彼女の中で何かが崩れた。
「いかがいたします?」
「お、お願いします……」
~~
診察台にシーツを敷かれ、その上に寝そべるよう促される。
清美は上半身に何も羽織らず、唯一腕で豊満な乳房を隠すだけ。ブラウンのショートパンツは少し小さめで、細身の彼女でもちょっぴりお肉が余る。けれどそれはわざと。いわゆる人妻の色気というものを演出しようと、ぽっちゃりと見せている。
「楽にしてくださいね……」
両肩をさすりながら、宥めるように手首まで来ると、その手首で止まる。今更脈を取るつもりだろうか、既にニセ医者であるとわかっているのに。
「あの、何か病気だったら……」
「そうですね、セックスレスによる欲求不満で子宮内膜症、閉経が早まったり、膣内部が荒れてしまうなどがあります」
どうせ思いついたことを並べているのだろうと、話半分に聞き流すも、それなりのリアクションは必要と、彼の手に指を絡める。
「怖いわ」
「リラックスしてください。膣内部も見てみましょうか」
産婦人科の看板すらない日野輪クリニックに専用の器具は無い。清美はちゃちな演技に笑いそうになりながらも、ショーツごとパンツを脱ぐと、脚をエムの字に開く。
――脱がせてあげたほうが興奮したかしら?
「それでは中を見てみますね」
男は指を舐めると、ねっとりとした唾液を絡め、指を割れ目に突き入れる。
「んあ……あ、痛い」
久しぶりの異物の挿入に清美は低く呻く。人差し指が膣襞をなぞると、最近まで枯れていたハズの膣がジュンと湿るのがわかる。
――まだ終わってないのよね。当たり前か、私まだ若いし。
まだ三十路にすらたどり着いていない彼女だが、セックスレスのせいか、妙に弱気になっているのも事実。このヤブ医者の言う「ストレスになる」は、あながち嘘でもないのかもしれない。
続く
「まだこっちを向かないで下さいね。触診が済んでいませんから」
「は、はい……」
先ほど忘れかけた不安が鮮明になって舞い戻ってくるも、背中越しに医者の表情は見られず、ただ身を強張らせるだけに留まる。
「いい身体していますね……、とても健康的だ……」
果たしてそれはどちらが本音だろうか?
わき腹に這い寄る手つきは手の平ではなく指先。それが揉むように動きだす。
「ん、あぅ……」
彼女は背をそらし、頭を揺すり、切ない声を上げる。
「大丈夫ですか? 何か内蔵疾患でもあるかもしれませんね……」
「いえ、結構です……」
「精密検査が必要かもしれません……」
もう片方の手が、緩く締められたパンツの隙間に入りこみ、尻の割れ目の汗ばんだ箇所をなぞる。
「や、そこは……ダメ……」
「感度が良いみたいですね……、ここはどうですか?」
男の手がわき腹から急上昇し、下乳を揉み始める。それは明らかに触診の範囲を逸脱しており、肩口に当たる荒い息には熱さと雄雄しさが感じられる。
「あ、あなた一体なんのつもりなの?」
「私は医者ですよ。何も怖がる必要は無い……」
柔らかな唇が音を立てて吸いつくと、急激に寒気がした。
しかし、ショーツの隙間に指が潜り込むと急に熱を帯び、憤る気持ちをそがれ、代わりに女が疼き始める。
最近は仕事を理由に夜を拒まれてばかり。しかし、本当の理由は庶務の嫁き遅れとの火遊びが原因と見抜いている。それでも一緒にいるのは、最後は自分のところに戻ってくるという自信があるから。
ただ、彼女の火照りが疼くと強引に迫ってしまい、それが返って夫婦の距離を開くことになる。
「はぁ……やめてください……」
手にした赤いブラを握り締めて、力なく呟く清美。
医者を名乗る男はその手を下乳からやがて乳頭に向かわせる。
まだ子供のいない彼女の大きな乳首は、彼女もあまり好きではない。しかし、感度がすこぶるよく、初夜の日に夫に触られただけで乱れてしまい、処女であることを疑われたほどだ。
「ん、いや、乳首触られと私……乱れるの……」
「不整脈ですか? それはいけませんね……」
「ちがくて、ああん……」
男が両の乳首を同時に摘むと、彼女の身体に甘い電撃が走り、白い喉を逸らし、頭を大きく揺らす。それは拒む気持ちというよりも、煽る、誘う仕草に見えた。
「動悸が激しいですね……何か既往症でもありますか?」
「いえ……その……」
「お子さんは?」
「いません」
「まさか不妊症ですか?」
――夫が抱いてくれないから。
原因はわかりきっているものの、夫の目が他人に向いている今は難しいだろう。下手に求めても盛りのついた牝猫と追い返されるのがオチなのだし。
「いけませんね、何か婦人病を誘発しかねませんし、今日は精密検査をしてみませんか?」
「でも……」
――あなたは医者じゃないでしょ?
「女性特有の病気、例えばレスとか……」
レスという言葉に、清美の肩がピクリと震える。
「女性でも男性でも、性的な興奮を溜め込むとストレスに繋がります。それで体調を崩す人、最近多いんです」
ちょっとした動作を目ざとく突く男に、彼女は羞恥に顔がカッと熱くなる。
「いいかげんに……」
怒気をあらわにするも、ざらりとした舌がうなじを這ったとき、彼女の中で何かが崩れた。
「いかがいたします?」
「お、お願いします……」
~~
診察台にシーツを敷かれ、その上に寝そべるよう促される。
清美は上半身に何も羽織らず、唯一腕で豊満な乳房を隠すだけ。ブラウンのショートパンツは少し小さめで、細身の彼女でもちょっぴりお肉が余る。けれどそれはわざと。いわゆる人妻の色気というものを演出しようと、ぽっちゃりと見せている。
「楽にしてくださいね……」
両肩をさすりながら、宥めるように手首まで来ると、その手首で止まる。今更脈を取るつもりだろうか、既にニセ医者であるとわかっているのに。
「あの、何か病気だったら……」
「そうですね、セックスレスによる欲求不満で子宮内膜症、閉経が早まったり、膣内部が荒れてしまうなどがあります」
どうせ思いついたことを並べているのだろうと、話半分に聞き流すも、それなりのリアクションは必要と、彼の手に指を絡める。
「怖いわ」
「リラックスしてください。膣内部も見てみましょうか」
産婦人科の看板すらない日野輪クリニックに専用の器具は無い。清美はちゃちな演技に笑いそうになりながらも、ショーツごとパンツを脱ぐと、脚をエムの字に開く。
――脱がせてあげたほうが興奮したかしら?
「それでは中を見てみますね」
男は指を舐めると、ねっとりとした唾液を絡め、指を割れ目に突き入れる。
「んあ……あ、痛い」
久しぶりの異物の挿入に清美は低く呻く。人差し指が膣襞をなぞると、最近まで枯れていたハズの膣がジュンと湿るのがわかる。
――まだ終わってないのよね。当たり前か、私まだ若いし。
まだ三十路にすらたどり着いていない彼女だが、セックスレスのせいか、妙に弱気になっているのも事実。このヤブ医者の言う「ストレスになる」は、あながち嘘でもないのかもしれない。
続く