FC2ブログ

目次一覧はこちら

僕らの関係 触れてみたい

触れてみたい

 放課後、幸太は一人窓の外を眺めていた。
 学園祭も終り、実行委員という責務から解放されると、学校生活が急に物足りなくなる。
 彼自身、進んで行ったわけでもないが、それでも開催につれてクラスが一丸となる雰囲気は悪くなかった。
 放課後になると、それを昔のことのように懐かしく思えてしまう自分が滑稽だ。
 本当はただ、別の刺激が同時期に重なり、ビタースイーツな記憶で上書きされただけ。
「幸太ちゃん、おまたせ」
 由香はいつも帰るふりをしてから教室に戻ってくる。
 前に二人が残っているところを恵にからかわれてから、特にそうするようになった。
「うん、ちょっとね……それよりさ、由香ちゃん。今日もダメ?」
「えっと、アレの日だから……ゴメンね。その代わり口でしてあげる。幸太ちゃん、好きでしょ?」
 アレの日の意味は最近知った。
「そっか。女の子は大変だよね。でも、僕も由香ちゃんのこと好きすぎて大変になってるんだよ? 責任取ってくれないの?」
 幸太は彼女の手を取ると、ズボンの異様なふくらみへと導く。
「もう、こんなにおっきくなって……」
 はにかむように視線を伏せる由香だが、嫌がる様子もなく、いきり立つものを撫でまわす。むず痒さが沸き起こり、徐々に身体が熱くなる。
「ねえ、今日は何処でする?」
「んと、僕の家は?」
「え……だって、それは……でも、今日はエッチできないし」
「大丈夫だよ。するのはいつもと同じことだけだし。それとも僕のこと信用できない?」
「そういうわけじゃないけど……うん、わかった。今日は幸太ちゃんの部屋でしてあげる」
「ほんと? ありがとう由香ちゃん!」
 幸太はパッと表情を輝かせると、取るものもそこそこに彼女の手を引いて教室を出る。


 由香は幸太の家によく訪れる。彼の両親がいないときなどには四人集まって夕食をともにするからだ。ただ、彼の部屋に入る事はほとんどない。
 彼の部屋は簡素だ。青いカバーが敷かれたベッドの枕元には、「簡単レシピ百選」と題された雑誌が無造作に置かれている。冷たいフローリングの床は短めの髪の毛が落ちている程度で、だいたい掃除はされている。机にはノートと辞書が数冊あり、いつもここで勉強と、別のことをしているのだろうか。
 去年の冬は勉強合宿の合間にささやかなクリスマスパーティをした。ただ、里奈があまりにも豪勢なケーキを買ってしまったため、七面鳥の予算が足りなくなり、安かった鱈で鍋を囲むことになった。そのあとは受験シーズンにもかかわらず、トランプをしていた。
 ムードの無いクリスマス会だったが、友達の域を出ない自分達にはそれで充分だった。
 ――今年は幸太ちゃんと二人きりで……。
 ふっと吹けば消えてしまいそうな、キャンドルライトの明かりの下、幸太の優しい瞳が自分にだけ向けられる。ケーキのような甘いものは必要ない。彼には身体を差し出し、代わりに特別を受けるのだから。
「由香ちゃん? どうしたの」
 妄想に酔いしれる彼女を幸太のとぼけた声が現実に戻す。
「なんでもないの……それより、幸太ちゃん、どうしてほしい?」
 不埒な想像を誤魔化そうと、由香はベッドに座る幸太の前に跪き、膝の皿を指でなぞる。
「えっとさ、僕が寝て、由香ちゃんに上に乗ってほしい」
「なんだ、そんなので良かったの……」
 彼の希望は思ったよりもささやかだ。
 幸太の部屋という二人きりの空間。誘われたとはいえ、それについてきたのは自分であり、強制されたわけでもない。
 ――もし強引に求められたらどうしよう?
 そんな不安を持っていたが、よく考えてみれば彼は幸太。気の弱い幼馴染でしかない彼に、一回り大きな自分を押し倒すことなんか出来るはずが無い。
「ね、いいでしょ?」
「うん、いいよ。それじゃあ、横になって、楽にして……」
 幸太は横になり、ベルトだけ外す。由香は彼のすねの辺りに跨ると、通気性の良さそうなボクサーパンツの膨らみに手をかける。
 先端が少し滲んでおり、これから始まる恍惚の時間への期待感をうかがわせる。
「もう、幸太ちゃんは節操が無いわね……」
「だって、由香が最近焦らしてばっかりなんだもん」
 ――由香?
 気の弱い彼が自分を呼び捨てにしていることに違和感を覚える。
 ――焦らしすぎたから怒ってるの?
 だとしても、それは彼が自分に恋焦がれている証拠。そう解釈すれば、彼のちょっとしたいきがる素振りも許せる。
「あ……由香ちゃん、ごめんね、無理ばっかり言って……。女の子じゃないから、そういう大変さがわからないんだよね」
「うん? うん……そうだけど……、幸太ちゃん?」
「ゴメンネ、由香ちゃん」
 暖かい手が触れると喉元に絡みつくような疑念も薄れてしまう。
「じゃあ、するね……はむちゅ……んむ、ふむ」
 今日は久しぶりに口でしてあげたくなった。本当は酸っぱさと尿のイヤラシイ臭いの混ざるものを咥えるのは苦手だ。今日は彼の家なのだし、シャワーで洗い流してからでも良いはずだ。
 ただ、青臭い男の臭いを嗅ぐと、口での奉仕をしたくなる自分が居た。
 ――パブロフの犬? 牝犬ね。
 彼女が好きなのは濃厚なバラの香り。母親のお古の香水ぐらいしか種類を知らないが、たまに隠れて使ってみたりする。ただ、そんなときに限って雨が降ったり、体育の授業が重なったりと、あまりその恩恵に与れたことも無い。それに肝心の幸太は気付かず、代わりに生徒指導の先生に顔をしかめられる程度。
 そんな彼女だからだろうか、青臭さをためた彼のモノを愛おしいと思えるようになっていた。
「う、うう、由香ちゃん……」
 幸太はいつものように低い声で喘ぐ。しかし、陰茎はいつものような固さが無い。それに汁のでも悪い。さっきから卑猥な音を立てているのは、自分の唾液と空気の摩擦だけ。
 ――きっと勘違いよ。よくないよね、考えすぎるのってさ。
 由香の中で違和感が大きくなる。それがどういうものなのかほんのり臭うものの、残り香を辿るには情報が少なすぎる。
 舌を操り、彼を煽る。雁首をなぞり、尿道を舌先でさする。キャンディを舐めるようなしぐさと、アイスを掬う仕草を交互に行い、たまに韻嚢を弄る。
「んふぅ、きもちいい? 幸太ちゃん」
「うん……、すごくいいよ」
「嬉しいな……」
 果たしてそうだろうか?
 最近、彼は射精までに時間がかかるようになった。慣れだろうか? ただ、自分も最初と比べて積極的になっているし、舌のスキルもそれなり上手になっていると信じている。
 思慮深いのは彼女の長所であり短所。また、その根底が直感によるものでしかないと本人も自覚している。ただ、残念なことに、予感というものは悪いほうにだけよく当たる。
「んー……んはぁ」
 亀頭を舐っていた唇を離し、そのサオを軽く扱く。
「どうしたの? なんでやめちゃうの、僕まだ……」
「顎、疲れちゃった……」
 本当はまだいける。あの青臭い白い濁り汁を吐き出す彼を見たいのになぜだろう、どうしても続ける気が起きない。
「そう……」
 幸太の寂しげな言葉を聴くとやるせなくなる。代わりに手の動きを早めるものの、ぶよぶよした彼のものは、あまりレスポンスを返してくれない。
「そうだ、いいこと思いついた」
「なに?」
「あのね、この前調べたんだけどね、セックスしなくても二人が気持ちよくなる方法ってあるみたいだよ」
 調べるというのは何をもって調べるのだろうか? 携帯のアダルトサイトでものぞいているのだろうか、それとも男性情報誌か。
「幸太ちゃんのエッチ」
「だって、僕だってしたいもん」
「でも、どうするの?」
「んとね……、由香ちゃんのアソコと僕のを擦り合わせるだけ」
「本当? そのまま入れちゃうつもりじゃないの?」
「そんなことしないよ。なんなら由香ちゃんはパンツ穿いたままでいいよ」
 いつもの彼ならきっと真っ赤になる。しかし、今の彼は由香を気遣う余裕すらあり、不適な笑顔で彼女の肩を掴む。
「ん、うん……でも」
「怖かったら途中でやめれば良いよ」
「そう? それじゃあ私が上でいい?」
 彼を疑うつもりは無い。ただ、布越しとはいえ初めて性器で男を感じよういうのだ、それなりに慎重になる。
「いいよ、由香ちゃんの好きなように動いて」
 幸太は寝そべったまま由香のスカートを捲り、白い太腿を撫でまわす。
「ん、それと、一応ゴムつけていいかな?」
「え、必要かなあ? まあいいけど……」
 そういうと幸太は枕元からお菓子の箱のようなものを取り、中から飴の袋のような包みを出す。彼はそれを破ると、薄透明な円いものを自らのモノにあてがい、慣れた手つきでつける。
「幸太ちゃん、持ってたんだ」
「え、だって、由香ちゃんともいつかするつもりだもん」
「そうだね、大切だよね」
 何故だろう、妙な不安が沸き起こる。
「もう大丈夫でしょ? ほら、早く」
「うん」
 幸太に急かされるまま、由香は彼の陰茎をショーツの窪みに当てる。
 今日のショーツは純白の飾りっ気のないモノ。体育の無い日にまで無理して可愛いものを穿く必要も無いと思っていたが、幸太に見せるのなら、もっと気合を入れればよかったと今更後悔する。
「ん、くぅ……」
 股間で亀頭を感じると、体が自然と熱くなる。布とゴム越しに触れているというのに、彼の亀頭の持つ卑猥な熱気と肉質が、彼女に性を意識させる。
「由香ちゃん、感じてる?」
「ん、わかんない……けど、なんか変な感じ」
「オナニーしたことないの?」
「あるわよ。幸太ちゃんのこと考えて何度もイッタもん。ただ、幸太ちゃんのオチ○チンでされると、変な感じが強いの」
 どうでもよいはずの嘘なのに、ばれるかもしれないと内心ドキドキしてしまう。
「僕も由香ちゃんのに触ってると、変になりそうだな」
 変になるといっても所詮、精を吐き出すだけ。五分ばかりの辛抱なのだと、由香も下半身に疼くものを我慢する。
「ん、ねぇ、これでいいの?」
 幸太の股間に跨り腰を振る。自分でも排尿の時以外、めったに触らない部分で男に触れる。口で彼のを咥えるのも最初は火が出るほど恥ずかしかったが、それも数日で慣れたのを思うと、きっとこれもなれるのであろうか?
 ――私、エッチもしらないのに、どんどん卑猥なことを覚えてくのか……、なんかやだな。
 擦れる度に水音が激しくなる。シュッシュという衣擦れの音にくちゅ、くちゅ……という粘着質な音が加わり、腰の動きも滑らかになる。
「由香ちゃん、濡れてきたね」
「幸太ちゃんだよ」
「僕、ゴムしてるもん」
「破れたんじゃない?」
「確かめてみる?」
「……いい」
 確かめなくてもわかる。下半身を取り巻く快感に紛れて、ショーツを濡らす不快感がある。
「だって、もしかしたら赤ちゃんできちゃうかもよ?」
「大丈夫よ。これくらい」
 ――もともと今日は危険日じゃないし。それに入れてないんだし、平気でしょ?
 疼くものが体中に広がり始めると、身体は正直に快感を覚えるものの、自慰の経験の無い由香は意思に反して浮ついてしまう四肢に不安を感じる。
「ん、くう……なんか……変……」
「どうして? オナニーしたことあるんでしょ?」
「そうだけど、でも、こんな風になるなんて、初めてだから……」
 幸太のシャツを掴み、浮いてしまう気持ちを抑える。下唇を噛んでいても、端から甘い声が漏れてしまう。
 女子は男子と違って何かを出すことは無いはず。性のマニュアル本で読んだ知識では、体質によって潮吹きとされることが起こるらしい。妖しげな統計を参考にすると一〇人に一人の割合と書かれていたが、自分がその一人でないとも言い切れないし、あまりの快感で括約筋が緩み、粗相をしてしまうこともあるとか。
 ――トイレにいったっけ? そうだ、六間目終わってから行こうと思ったのに、忘れてたっけ。
 しかも幸太の家に招かれるという不測の事態に緊張したのか、先ほどまで催していたことも忘れていた。このままでは恥ずかしい姿を晒してしまいそうで怖い。
 ――せめて快感を抑え目に出来れば……。
 幸太の生理現象の観察結果によると、刺激が少ないほど、絶頂の余韻、射精の量も少なくなる。それが自分にも当てはまるかは不明だが、今の自分にはそれしかない。
 由香は腰の速度を緩め、それを悟られないように彼に倒れこみ、頬を摺り寄せる。
「私、もう立ってられないかも……。気持ちよすぎて……」
 上擦った声は演技ではない。
「そう? それじゃあ僕がしてあげる」
「へ?」
 幸太はいきなり由香の背に手を回すと、「よいしょ」の掛け声一つで体勢を入れ替える。そして彼女の両足を大きく開かせると、膝裏に腕を回し、身動きを封じる。
「ちょっと、幸太ちゃん?」
「いくよ……」
 幸太は勢いよく陰茎を擦り付ける。
「や、くう!」
 歪な形状をした祈祷とまだらに血管が浮き出るサオが乱暴に擦り付けられると、先ほどまでの自分の行為が子供の遊びに思えてしまう。
「由香ちゃん、由香ちゃん……、僕、すごく気持ちいいよ」
 息を荒げて自分に覆いかぶさる幼馴染。子供の頃はよく恵に苛められてピーピー泣いては彼女の胸に鼻水をつけながらしがみ付いてきた。その時は今よりもっとしつこかったし、甲高い泣き声が耳障りだった。まだ声変わりすらしていないと思われる彼のボーイソプラノが必死に重低音を出そうとするが、風邪でしわがれた声にしか聴こえない。
「そうなの? だけど、私……やぁ……だめぇ……私、なんか出ちゃいそう……」
 体の力が抜けていくのを感じる。自分のものでありながら、他人に支配されていく。
 ――私は幸太を感じているの!
 恍惚の時を共有できる幸せに浸りながら、由香は不自由になる身体に満足していた。
「由香、いいでしょ? すごいいいでしょ? もっと気持ちよくなろう? 一緒に……ね? ね? ね?」
 ――また違和感。何時からこの子は私を呼び捨てにするようになったのだろう? 今日が初めてのはずなのに、すごく慣れているような。
 ショーツに手が触れる。最初は亀頭が引っかかって捲れただけだと思ったが、こそこそと動き回るそれは幸太の指だ。
「あ、そこは……!」
 自らの愛液に濡れ、快感に痺れていた大陰唇は捲られていたことに気付かなかった。小陰唇に触れられ、膣口に触れられ、初めて気付いた。
「ちょ、やだ、幸太ちゃん。今日はダメだよ? 女の子の辛い日なんだから?」
「……はぁはぁ……由香……」
 無理に微笑んでみせたものの、幸太は手のイタズラをやめようとしない。それどころか、さらに凶悪さをまし、一旦恥丘を駆け上がると、今度は包皮に隠れたものを暴こうとしだす。
「ダメだってば、そんなこと!」
 脚をばたつかせるものの、膝の裏に回された腕に阻まれる。手首を掴まれると、変に捩れた格好のため力が入らない。ブラウス越しに胸を揉まれると、さらに身体が動かなくなる。
 それを了解と取ったのか、鼻息を荒げたまま、幸太は顔を近づけ、首筋に舌を這わせる。
 キスもしたことが無い彼女は、そのザラリとした感触に愛撫と知るにはまだ経験が足りない。
「由香の、いい匂い……」
 汗ばむ彼のくび周りはすえた臭いだけ。いわゆる柑橘類の匂いなどとおく、干したスイカの皮の臭いしかしない。
「あ、あっ……んぁ……や、ふぁあ」
 なのに股間は相変わらず甘すぎる刺激を送っており、既に苦くすら思えるほどだ。
 ――幸太ちゃん……が、私の幸太ちゃんじゃない? 私の描いていた理想の恋はどうなるの?
 陰茎を扱き、咥え、精を受ける。身体は許していないものの、それも時間の問題。腕力ではまだ勝るものの、彼の放つ熱気に中てられたのか、もういう事を聞いてくれそうに無い。
「やだ、幸太ちゃん、怖い……ってば。こんなの嫌……」
 いつの間にか涙が零れていた。それが耳朶を求める彼の頬にも触れると、乱暴だった彼の腰つきも勢いが無くなる。
「僕とエッチするの……や?」
「そんなことない。けど、今日は危ない日だし……」
「僕の赤ちゃん、嫌?」
 ――ああそうだ。セックスって子供作るための行為でもあるんだっけ。もし出来たらどうしよう。責任とってもらえるのかな?
「嫌って……そういう問題じゃないわよ。私達、まだ子供だもん。それなのに、子供作るの?」
「由香になら産んで欲しいな」
「だって、そんなこと……言われても」
「僕学校辞めて働くよ。そして由香と結婚するんだ」
 ――私は大学に行って、バイトとかサークルとかして、色々したい。けど、幸太ちゃんと一緒になるの?
「嫌?」
 二人で町を歩く。その間に小さな子が一人。目は彼に似て鼻は自分に似ていたらいい。一人っ子だと寂しいからもう一人欲しいな。でも中卒の彼にそこまでの甲斐性があるのだろうか? 想像の中ですら幸せを想像できない性格がいやらしい。
「困らせちゃった? ゴメンネ、由香ちゃん。えへへ、ちょっと言ってみただけ……」
 幸太は照れ笑いを浮かべると、頭をぽりぽりと掻き、身体を離す。
「ダメ……。やめちゃ……」
「でも……」
「だって、私幸太ちゃんの赤ちゃん欲しいもん」
「由香ちゃん」
「だけどセックスはダメ。高校ぐらいは出てもらいたいし、ちゃんと仕事とか見つけてもらわないとヤダ。……でもね、セックスの練習はしときたい。だから、続けて……」
「うん!」
 ハキハキと返事と一緒に彼が戻ってくる。まるでママゴトのような会話だ。それでも、由香は単純に嬉しかった。心の隙間を無理矢理埋められた、荒業、裏技、ズルをされた気分だ。
 幸太は勢いの衰えないモノを彼女の縦筋に押し当て何度も往復する。ベッドがきしみ、キィキィと音を立てる。間抜けな反復運動は見かけによらず、どんどん快楽を積み上げていく。
 シーツを這い回る手が強い力で握られ、酷く痛む。小声で「強い」というと、彼はその手を離し、代わりに顎に触り、唇を求めてくる。
 ――まだキスしてないんだよね……。
 星空の下で見詰め合う。そんなオトメチックな夢を見ていた頃もあったが、彼の唇より先に下のモノを咥えた自分が見るものでもない。それでも、彼が子供を欲しいといってくれたのなら、それなりの愛はあるはず……。
 潤いのある唇は塩辛い。白桃みたいな頬をしている彼なら甘いのではないかと期待していた分、落胆してしまう。
 先ほど首筋を這い回ったナメクジのようなものが、唇を割ってもぐりこんでくる。ぬるりとした唾液が口腔内に注がれる。陰茎を咥えるときよりも刺激は軽いはずなのに、受動的であることが、心の余裕を奪う。
 キスは思ったほど快感をくれない。それどころか不快感を煽る行為だ。
 性急に結論を急ぐ由香は幸太の唇から逃れようと顔を振る。だが、幸太もそれに追いすがり、そして、舌先が触れる。
「ん……あ、あれ……んちゅ……」
 いつの間にか目を瞑っていた。
 キスをするときに何故目を瞑るのか?
 その理由が少し分かった気がする。
 唇に意識を集中したいからだ。
「やむ、んゆう……ふぁう……んふぅ……」
 幸太の後頭部に手を回し、強引に求めてしまう。
 高い鼻は意外とデメリットだ。キスをするときに邪魔になるし、鼻息が当たってこそばゆい。それに汗の匂いがしてせっかくの唇の快感が薄れてしまう。
「怖いな。……あ、幸太ちゃんじゃなくてエッチなことがだよ? 他の人にされるの、初めてだしね……。でも、好きにして……」
 力ない手で必死に幸太の手を握り返す。
「由香ちゃん……いい? 大丈夫? きもちいい?」
 リズミカルに前後する腰着きが着実に二人を追い込む。
 愛液を一人分泌するのは恥ずかしいが、ゴムの内側では彼も涎を垂らしているのだろう。
 もう少しで女に触れられるのに、今だお預けをさせる自分は酷い女と思いつつ、調子に乗った幸太にはよい薬と、一人納得してしまう。
「あ、ああ、もうダメ……私……」
「うん、イコ、僕と一緒に……ね?」
「あ、すごい……幸太に私……いかされひゃうううん!」
 彼の最後のストロークは行ったまま戻ってくることは無い。自分の上でしゃちほこ張る彼は射精するときに何度も見ている。腰をしばらく蠕動させたあと、ぐったり力を失う。
 だが、それは自分も同じ。身体中を走り回る快感は反射に近い痙攣を促し、火照った身体を乱暴に突き動かす。
 普段から運動不足気味の由香は息が上手くできず、「ひっひっ」と短い呼吸を繰り返す。喘息の症状に似ている呼吸が過呼吸を引き起こしたようで、目眩が襲う。
 視界と嗅覚、それに全身が異常を訴えるのに、弛緩した身体はのん気に喘いでいるだけ。
 突然重いものが覆いかぶさってくる。胸元に触れるそれはドクンドクンと早い鼓動を伝え、徐々に熱を与えてくれる。
 幸太の重みが由香を現実に戻してくれる。もっとも彼が導いた場所でもあることを考えると、つまりは引っ張りまわされたわけかもしれない。
 ――なんだかトランプの塔みたい。
 初めて訪れる性の快感はこれまでの葛藤を綺麗に洗い流してしまう。
 必死に積み上げて、一つの刺激で崩壊してしまう。快楽というオマケつきで。
 力なく腰を動かす彼を押しのけるのは物理的にたやすいこと。ただ、もう少しトランプを並べていたいと思う由香だった……。

続き

戻る


↑クリックしていただけると、FC2ブログランキングのポイントが加算されます。
プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析