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小春十三の短篇_5_2

 力任せに押し切ってくる健介は文字通り小手先で翻弄する。
 慎重な祐に対しては踏み込み、胴をはらう。

 二人は開始数分と持たずに一本を取られてしまうが、息を荒げる様子なく向かってくる。

 高校生の体力はバカにできない。
 技量では数段上を行く美鈴でも、休む時間もなしに切りかかられては、返す刀のキレも鈍る。

「めーん!」

 健介の頭上を軽くいなし、中央に戻るも、続く祐の間合いの遠い攻めには無駄なすり足を踏まされ、地味に体力を削られてしまう。

 午前中からほとんど立ちっぱなしの彼女の足は徐々に限界を迎えつつあった。

「突きーっ!」

 突きは美鈴にとって奥の手だ。すでに疲弊しきった彼女は負けん気だけで立ち、本来なら格下、特に指導中はけしてしないはずの突きまで放ってしまう。

「はぁはぁ……終りにしましょう……、二人とも……」

 時計は見えない。手ぬぐいも既にびっしょり濡れており、眉が重い。

「まだまだ!」

 健介は上段に構えると、遠慮なく打ちかかってくる。
 師範代としての意地もとうに疲弊に押されている彼女は、退くさいに袴の裾を踏んでしまい、そのまま転倒してしまう。

「きゃっ!」
「めーん!」

 尻餅をつく彼女に、健介の竹刀が振り下ろされる。
 が、寸前で頭をそらし、肩で受け一本を回避。
 しかし、屈辱ではある。
 そもそも、胴衣の裾で転倒するなどと、常日頃から服装の乱れは心の乱れと指導する立場にあってありえない失態。

「師範代、大丈夫ですか?」
「平気」

 差し出された手を彼女は掴まず、何とか自力で立つ。が、一度着いた膝は笑い転げ、踏ん張ってくれない。
 ひとまず正座して、面を取る。

 むわっとした熱気から開放されると、道場の空気ですら涼しげに感じられる。
 彼女はこの一瞬の清涼感が好きだった。

「師範代、無理言ってすみませんでした……」

 祐と健介も面をとり、並んで正座している。二人とも額から汗をたらし、息を荒げている。

「いいのよ。これぐらい。それより健介君、最後までしっかり狙わないとダメよ。あと少しで一本とれたのにね。それじゃあ、黙想……」

 本来なら軽い整理運動をするべきだが、立つこともままならない美鈴は目を瞑り、息を整え始める。

 ……が、

 すすっという衣擦れの音がしたあと、膝に違和感を覚える。
 それは徐々に強くなり、さらには内側へともぐりこんでくる。

「や……、何をするの、二人とも!」

 黙想を破ると、目の前では健介がはぁはぁと熱っぽい息を吐きながら迫っている。
 祐はというと、背後にまわって、すねの辺りをふぅふぅいいながら撫で回している。

「師範代、疲れてるみたいだし、マッサージしてあげようと……」
「日頃からお世話になっていますし……」
「なに言ってるの貴方達、やめなさい! 怒るわよ!」
「ただのマッサージですよ……」

 迫る健介から逃れようと彼女は後ずさる。しかし、膝は笑い上戸なのか、言う事をきいてくれない。細腕が懸命にタタミを這うも、投げ出された足を祐に取られ、身動きが出来なくなる。

 そして、祐の手が袴に侵入し、ふくらはぎに触れた。

「ひっ!」

 冷たくかさかさした手で弄られるとこそばゆく、背筋に寒いものが走る。

「師範代、感じてるの?」

 見当違いの感想を浮かべる祐をキッと睨みつけるが、続く健介の手が胴着越しに下腹部をさすると、気の抜けた声が漏れてしまう。

「んふぅん……あ、あ……」
「気持ちいいんですか? いいんですね? 師範代、体張ってるから……」

 美鈴の返答を待たず、祐が袴の帯の結び目を解き、強引に引き摺り下ろしてくる。
 あらわになるのは黒の下着。正面が黒く網目状になっており、通気性が抜群で気に入っているものだ。ただ、色合い、見た目が官能的であり、齢二十五にして恥じらいを持つ彼女は、その様式美を嫌っていた。

「うわ、エロイ下着……。いつもこんなの穿いて稽古してたんですか?」
「いや、言わないで!」
「もしかして勝負パンツ? 師範代って彼氏いましたっけ」

 彼氏はいた。大学生の頃、付き合いで参加していた旅行サークルの先輩に言い寄られ、一夜をともにしたこともある。
 処女を捧げたのを理由に一時期は結婚を前提に付き合いもしたが、就職活動をしない彼に三行半をつきつけ別れた。
 それ以降、誰かを愛することも無く、その記憶を若気のいたりと、後悔していた。

「いないわ! そんなの」

 古傷を抉られるような気持ちになった彼女は、強い口調で叫んでしまう。
 すると二人はそれを何と勘違いしたのか、耳下に口を近づけ、ふうっと息をふきかけてくる。

「あ、やん……」
「師範代、身体……疼きませんか?」
「俺たちでよかったら、慰めてあげますよ……」
「や、やめてぇ……」

 押しのける力は無いが、それでもその意志をしめそうと、彼等の胴着につめを立てる。

「だってあそこ、濡れまくりですよ?」

 祐の手がショーツの網状の部分に触れると、んちゅりと音がした。

続く

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