自分が先生に怒られているところ、
母にお使いを頼まれたこと、
期末試験の答案、
その日の夕飯……。
あげだしたらキリがない。
とにかく、俺には見えるんだ。
未来ってヤツがさ。
信じてないみたいだから、俺が見た未来の一例ってのを教えてやる。
アレは小学生の頃のこと……。
――
「ねえ、なんで傘なんてもってんの? 今日雨降るっけ?」
「わかんない。けど、なんか落ち着かなくて……」
その日の天気予報は晴れのち曇り。
西の空にはいくつか雲が見えるも、下校時間まではもつだろう。そんなあやふやな天気。
もちろん、俺以外にも傘を持っていたやつはいたと思う。帰りに何人かは傘をさしていたし。
でも、そういうやつらは皆、折りたたみ傘や、置き傘。俺のような傘を持っていたのは多分いなかったんじゃないかな。
給食を終えた頃から天気がガラッと変わったんだ。
そうだな、まあ、最初はぽつぽつだったんじゃねーの? それが五時間目が終わるころにはザーザーに変わったんだ。
皆大慌て……て程じゃない。まあ、置き傘や折りたたみ傘を用意してんだろうな。
んでも、今朝の子だけは言ってくれたぜ?
『すごい、よくわかったね』
ってさ……。
――
……まあ、なんだ。
聞きたいコト、あるよな?
あるだろ?
なあ、おい!
普通さ、聞かねーか?
なんで分かったんですかってさ。
あーあ、やめやめ、答える気なくしたわ。
お前、もう帰れよ。
飽きたわ……。
……やっぱり聞きたい?
そうだろ、そうだろ。最初から素直にそう言えばいんだよ。
ふふん、じゃあ教えてやろう。
俺がどうして雨が降ると分かったか。
ソレはだな。
予知能力があるからだ。
……おい、なんだよ、そのつれない態度。
もっとこう、ほら、お前、あるだろ?
わーすごいですね。とか、明日の株価は? 日本経済の行く末は? なんて感じでさ。
……まあいいや。
俺がさ、まあ、予知能力っていうの?
未来の出来事を知るのってさ、夢でなんだよ、夢。
夜寝るだろ? そうしてすーっとしてるとさ、なんか薄ぼんやりとした、現実にしちゃつくりがちゃちいのに、そこにいる俺は現実だ! って思い込んでる世界に迷い込むわけさ。
んで、そこで見ちゃうんだよ。
俺がさ『あるとき』にどうなるか? を。
『あるとき』ってなんだって?
まあ、予知夢つっても万能じゃない。
俺が見たい時を見れるわけじゃねーし、何時なのかも分からない。
たまにごく最近ってのも見れるんだけど、その稀な例ってのがさっきのさ。
便利かどうかって?
まあ、半々だな。
例えばテストの答案を見たとするわけだ。
んでも、問題用紙を見れないんなら、意味がねー。
答えから推測するにも×がついてりゃ暗記する必要がない。
そもそも数学じゃお手上げだろ?
かといって傘の兼が役に立つかといえば、これまた意味がない。
大半は、その日が前に見た夢の内容なのか、判別がつかねーからさ。
……。
でもさ、じつはな。
やっぱり役に立つこともあるんだよ。
例えばだぞ?
最近物騒になったと思わないか?
通り魔……。
困ったね。
昼だろうが夜だろうが、老若男女問わずだもん。
俺もいつ刺されっかわかんねーし、外もおちおち出歩けない。
まあ、あんたみたいにがっしりしてるヤツは平気だろうけどさ。
それでさ、俺見たんだよ。
そいつのこと……。
続く
母にお使いを頼まれたこと、
期末試験の答案、
その日の夕飯……。
あげだしたらキリがない。
とにかく、俺には見えるんだ。
未来ってヤツがさ。
信じてないみたいだから、俺が見た未来の一例ってのを教えてやる。
アレは小学生の頃のこと……。
――
「ねえ、なんで傘なんてもってんの? 今日雨降るっけ?」
「わかんない。けど、なんか落ち着かなくて……」
その日の天気予報は晴れのち曇り。
西の空にはいくつか雲が見えるも、下校時間まではもつだろう。そんなあやふやな天気。
もちろん、俺以外にも傘を持っていたやつはいたと思う。帰りに何人かは傘をさしていたし。
でも、そういうやつらは皆、折りたたみ傘や、置き傘。俺のような傘を持っていたのは多分いなかったんじゃないかな。
給食を終えた頃から天気がガラッと変わったんだ。
そうだな、まあ、最初はぽつぽつだったんじゃねーの? それが五時間目が終わるころにはザーザーに変わったんだ。
皆大慌て……て程じゃない。まあ、置き傘や折りたたみ傘を用意してんだろうな。
んでも、今朝の子だけは言ってくれたぜ?
『すごい、よくわかったね』
ってさ……。
――
……まあ、なんだ。
聞きたいコト、あるよな?
あるだろ?
なあ、おい!
普通さ、聞かねーか?
なんで分かったんですかってさ。
あーあ、やめやめ、答える気なくしたわ。
お前、もう帰れよ。
飽きたわ……。
……やっぱり聞きたい?
そうだろ、そうだろ。最初から素直にそう言えばいんだよ。
ふふん、じゃあ教えてやろう。
俺がどうして雨が降ると分かったか。
ソレはだな。
予知能力があるからだ。
……おい、なんだよ、そのつれない態度。
もっとこう、ほら、お前、あるだろ?
わーすごいですね。とか、明日の株価は? 日本経済の行く末は? なんて感じでさ。
……まあいいや。
俺がさ、まあ、予知能力っていうの?
未来の出来事を知るのってさ、夢でなんだよ、夢。
夜寝るだろ? そうしてすーっとしてるとさ、なんか薄ぼんやりとした、現実にしちゃつくりがちゃちいのに、そこにいる俺は現実だ! って思い込んでる世界に迷い込むわけさ。
んで、そこで見ちゃうんだよ。
俺がさ『あるとき』にどうなるか? を。
『あるとき』ってなんだって?
まあ、予知夢つっても万能じゃない。
俺が見たい時を見れるわけじゃねーし、何時なのかも分からない。
たまにごく最近ってのも見れるんだけど、その稀な例ってのがさっきのさ。
便利かどうかって?
まあ、半々だな。
例えばテストの答案を見たとするわけだ。
んでも、問題用紙を見れないんなら、意味がねー。
答えから推測するにも×がついてりゃ暗記する必要がない。
そもそも数学じゃお手上げだろ?
かといって傘の兼が役に立つかといえば、これまた意味がない。
大半は、その日が前に見た夢の内容なのか、判別がつかねーからさ。
……。
でもさ、じつはな。
やっぱり役に立つこともあるんだよ。
例えばだぞ?
最近物騒になったと思わないか?
通り魔……。
困ったね。
昼だろうが夜だろうが、老若男女問わずだもん。
俺もいつ刺されっかわかんねーし、外もおちおち出歩けない。
まあ、あんたみたいにがっしりしてるヤツは平気だろうけどさ。
それでさ、俺見たんだよ。
そいつのこと……。
続く