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06_前編

 神楽陽光。
 道明寺の住職にして霊能力者である彼は、神道を独自に解釈して新たな宗派を設立した。
 その名を陽光陰影。
 独特な剣とお経をもってして先祖供養、鎮魂を行っていた。

 それがあるときテレビ局の目に留まり、奇抜なパフォーマンスと快調なテーブルトークで大ヒット。
 最初はゲスト出演程度の陽光だったが、いつのまにかコメンテーターになり、相談コーナーを持ち、最後は看板番組を持つほどとなった。

 彼がヒットすると他のテレビ局も同じく霊能力者を見つけてきて似たような番組を作る。
 二匹目のドジョウに旨みを吸われ、一方で超常現象の反動で沸き起こる科学番組の台頭に下火の予感を先取りし、陽光は頃合を見計らって番組を降りた。

 もともと地域に根ざす寺であったことから、それほど金に困ることもない彼だが、一度覚えた大金のうまみはそうそう忘れることもできず、日々檀家の数と帳簿を見てはため息を着いていた。

 そんなおり、道明寺の前にワゴン車が停まる。
 陽光が久しぶりの客かと自らで向かえると、助手席から降りてきた男は気付いたらしく一礼してきた。

「どうもご無沙汰してます」
「なんだ、金坂さんじゃないか。どうしました?」

 ジーパンにチェックのシャツ。小太りで無精ひげのこの金坂という男は、陽光をテレビ番組に呼び込み、もっというと金に魅力を教えた張本人だ。

「ええ、ちょっとお願いがありまして」
「すまないが、もうテレビ局はこりごりで……」
「何がこりごりっすか、陽光さん、美味しいとこどりだったくせに」

 彼が去ったあとの霊能力者達の悪役ぶりは酷いものだった。
 相談の仕方や除霊方法などの科学的検証、討論番組が行われ、そのインチキが暴かれる展開ばかりで、陽光が逃げたのは丁度よい時期だったのかもしれない。

「それより、今日はテレビじゃなくてさ……、ちょと除霊してほしいのよ」
「除霊? あんたまたあんないん……じゃない、テレビのネタ探しかい?」
「いやいや、今日はさ、そういうんじゃなくて、本気で除霊なのよ。まあ見てよ」

 金坂はにやけながら何度も「五分だけ、五分だけね」と陽光に頼み込む。
 陽光は渋るふりをしながらも待つことにした。というのも、この金坂という男が除霊を頼みにきたなどと思ってはおらず、どうせ金になる話だとめぼしをつけていたから。

「ね、見てよ、この子」

 ワゴンからADに手を引かれて女の子が降りてくる。その子は猫背で妙に肩を竦め、陰気そうな顔をしており、陽光が見るとすっと視線を逸らした。

「この子、変な霊に憑かれてんのよ。だからさ、陽光先生の陽光陰影でなんとかしてよ」
「いや、だってこの子は……」

 この子と似たような症状の子を番組で何度か見たことがある。
 あのときは適当に「先祖の霊が~」とかで誤魔化していたが、後の検証番組では骨格異常や、対人関係からくる一種のヒステリーと診断していた。
 その子らは今心療内科に通い回復に向っているというのだから、いかに自分のしてきたことが……。

「ねえねえ陽光さん。いいかい? ……そりゃ確かにこの子はなんかに憑かれてるわけじゃないよ? そこはさ、ほら、俺も陽光さんも大人だしね? んでもさ、親御さんがどうしてもってきかないのよ。ね? だからさ、ちょちょいってやってあげてくんないかな? ほら、これお礼なんだけどさ、局通してないから俺らで山分けなわけ。どう?」

 包みには例の束が一つ。面を見ると、自分を入れて三人。

「除霊には少し時間がかかるかもしれないですぞ?」
「さっすが陽光さん、話が分かる!」

 かくして陽光の除霊ビジネスが再開されたのだった。

~~

 四畳半の部屋の真ん中に患者を座らせ、紫に塗った鏡を北に置く。部屋の四隅に盛り塩をして、南にお神酒と柊の枝で編んだわっかを置く。
 注連縄で部屋を封じ、自分は外で焔を前に剣を振るい、適当な言葉を叫ぶ。

 患者の関係者は熱心に祈り、少しも疑っているように見えなかった。

 一回、六十分で除霊終了。
 相手の懐ぐあいを見て二回三回とふっかけるが、その場合は値段を多少都合することも忘れない。
 テレビ番組に出ていたころに出来た根強いファンは多く、今でもたまに金坂のところに手紙来るらしく、それを金蔓と見出したわけだ。

~~

 今日の依頼者、中西勝俊は酷く疲れた様子で道明寺を訪れた。

「どうぞ、おあがんなさい」
「失礼します」

 彼を部屋に通したとき、一瞬視界が暗くなるような錯覚があった。
 昨日の酒が残っているのかと思うも、それは一瞬のこととあまり気に留めないことにする。

「あのですね、私、生まれつきついてないんですよ」
「はあ、そんな気がします」
「そうでしょ? やっぱり憑物があるんだ」

 陽光が相槌を打ったのは、彼のいかにも不幸そうな面持ちからであり、特に何か見えたわけではない。
 というのも、陽光はこの男を「何が起こっても霊のせい」としているだけと判断していたから。

「それでですね、是非陽光先生に御祓いをお願いしたいのです。どうか、どうかお願いします」

 勝俊はばっと後ろに下がるとひれ伏して「なにとぞ」と言う。

「まぁまぁ、そんな畏まらずに。そうですね。一つ見てみましょうか……」

 心底信用しているような輩の場合は、最初から金額はふっかけず、何回かに分けてせしめるようにしている。
 それに、もともと用意するものもなく、元出のかからない商売なのだ。うまみは長く吸えるに越したことはない。

続く

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