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08_後編

 何も言われない。
 それに味を占めた私はもう少し節約させてもらうことにした。
 幸い取引先と私の関係はよく、仕事も十分にまわしてもらっている。
 たまに冷や汗をかくこともあるが、大丈夫。あと少しの辛抱だ。

 ……。

 最近仕事の本を家に持ち帰ることが多くなったのだが、置く場所に困る。
 すぐ使いたいから二階に置くわけにもいかず困ってしまう。
 今まではあまり感じていなかったが、慣れると狭く感じてしまうのだろうか?
 私はいっそのこと二階を書斎にすればいいと思い直し、一人引越しを始める。

 おかしい、机がドアを通らない。
 こんなはずがない。
 どうやって入れたというのだ?

 妙だ。
 最近……。

~~

 先月のことだった。

 私は彼女にプロポーズしたんだ。

 日々の節約のかいあってダイアの指輪を彼女に送ることができた。
 彼女はそれを嬉しそうに眺めていたが、私の求婚を受けてくれなかった。

 彼女には求婚していた男がいたらしく、すんでのところで掠め取られた。

 私は失意にくれて一週間休暇をとった。
 あからさま過ぎて自分でも笑いたくなったが、手元にある指輪を見ていると、胸が痛くなるのだからしょうがないだろう?

 ただ、困ったことになった。

 家から出られないのだ。

 たしかに失恋はショックだ。
 けれど、毎日の食事は取っているし、今日明日に死のうと思うほどじゃない。

 というか、むしろ出社したい。
 しかし、出られないのだ。

 ドアが通れないんだ。

 どうしてだ?

 太ったわけじゃない。
 最近はむしろ痩せているぐらいなんだ。

 ならどうしてだろう?
 家が小さくなっているから?

 馬鹿な、そんなことあるはずがない!
 だが、現実に、天井は迫ってきており、私は屈んでいるしかできない。
 いや、最近ではもう寝そべるほかない。

 苦しい。

 息ができない。
 荷物が迫ってくる。
 しかし、逃げられない。

 ……。

 一足遅かった。もう壊そうと振りかぶることもできない姿勢なんだ。

 いったい、どうして……、

 どうしてこうナッタンダ?

 ドウシテコウ、ナッタンダ?

 ドウシテコウ、ナッタンダ?

 ドウシテコウ、ナッタンダ?

 ドウシテ……

 ギュム。


狭い部屋 完

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